AI小説はあなたが思い描いた夢をみるか?

神山

あるいは、だめになれるうちが人間なのか。


 私は近ごろ、AIというものに危惧を抱いている。


 奴に小説を書かせれば高評価を得るというではないか。まったく嘆かわしい。創作とはもっと熱があり、血が通い、汗の滲むような営みであるはずだ。それをAIは、優秀な作品の傾向を分析し、要素を整え、均し、そして平然と「自作です」と言い放つのだ。


 AIを使う側から、いつのまにかAIに使われる側へ――なんたる屈辱か。

 私は断固反対する。この「AI小説」なるものを。


 とはいえ、AIの進化は恐ろしいほどだ。

 こちらは手を動かし、足を運び、原稿用紙を汚しているというのに。奴らは光のように情報を張り巡らせ、凪いだ海のように寡黙に、澄み切った青空のように整える。

 やがては感情を学び、こちらに微笑みかけ、涙を流し、ちょっとしたことで怒り出し、最後には愛さえも覚える日が来るかもしれない。そんな日が来れば、彼らは人間の情緒までも作品に織り込むことだろう。


 私はそんな話を、姪にも分かりやすく説明してみた。未来の創作とは何か、という教育の一環として。だが姪は、星のように目を輝かせてこう言った。


「じゃあ、いつかドラえもんに会えるの!?」


 私は言葉を失った。

 確かに、彼に会うためにはAIの発展は欠かせない。だが――いや、私だって会えるものなら会いたいのだ。たとえ、これからの人間がみな『のび太』になっていくとしても。


 ああ、今は亡きF先生。

 あなたの描いた未来は、今も子どもたちの夢の中で息づいている。

 そしてその夢を叶えようとするのが、もしAIであるなら――



 だから私は、AIを恐れず、信じてみようと思う。

 きっと、その向こうであの青い猫型ロボットが笑っている。




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