第20話 最終章 前編 そして明日へ
📖 Scene 78 そして明日へ
ノネムを封印したのち、シンたちは祠の外へと歩み出た。
地表の空気は穏やかだったが、誰一人として笑みを浮かべる者はいない。
理由は明白だ――あの男だけが、もうここにはいなかった。
しばしの沈黙。
風が木々を揺らし、灰色の雲の隙間から、一筋の光が差し込む。
その光を背に、活月見が封印の祠の入り口へと歩み寄り、杖を掲げた。
静かな詠唱が響き、光の陣が入口を包み込んでいく。
その時だった。
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「ぉおーーい……!」
一斉に身構える一行。
だが、次に響いた声には聞き覚えがあった。
無骨で、どこか憎めない、荒っぽいあの声――。
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「俺を置いて帰るとは、冷たすぎやしねぇかー?」
祠の奥から、傷だらけのガロウが姿を現した。
血と泥にまみれながらも、いつものように笑っている。
ミサキ
「ガロウ……!」
気づけば、ミサキは駆け出していた。
涙が頬を伝うのも構わず、ただその生還を確かめるように。
シンたちも次々とその後に続く。
活月見
「……まったく、しぶとい男だねぇ。」
口元に微笑を浮かべながらも、瞳には熱いものが滲んでいた。
ミサキは言葉を探すより先に、ガロウの胸に飛び込んだ。
涙でぐしゃぐしゃの顔に、笑みが混じる。
ガロウ
「おいおい、抱きつく相手が違うんじゃねぇか?」
そのいつものイタズラっぽい口調に、仲間たちも思わず笑う。
空気がふっと軽くなり、そこに確かに“生”が戻ってきた。
ミサキ
「……でも、どうして……?」
ガロウ
「あぁ、それがよ――」
彼はソルヴェンをちらりと見やる。
全員の視線が集まる。
ガロウ
「術の発動直後によ……コイツがいきなり俺を蹴っ飛ばしてよ!」
ソルヴェン
「……紙一重のタイミングでした。
生存の確認まではできませんでしたが――何よりです、兄上。」
一瞬、空気が止まる。
一同
「……⁉️」
ガロウ
「んあ?」
ソルヴェンはゆっくりと一礼する。
割れた仮面の隙間から、陽光に照らされた素顔がのぞいた。
ガロウ
「‼️ お、おめぇ……シュナイダーじゃねぇか‼️‼️」
その名を呼んだ瞬間、風が静かに二人を包んだ。
失われたはずの絆が、再びひとつに結び直される。
ガロウ
「マジかよ……今までどこにいやがったんだ……」
少しだけ震える声。
だが、すぐに笑い飛ばすように肩をすくめる。
ガロウ
「ま、いっか。命の恩人に変わりはねぇ。
積もる話は帰ってからゆっくり聞かせてもらうとしようや、シュナイダー!」
シュナイダーは静かに頷いた。
兄弟の間に、言葉を超えた想いが確かに流れていた。
活月見
「ふふ……じゃあ、馬鹿も揃ったところで、さっさと帰ろうじゃないか。」
その一言に、一同は思わず吹き出した。
緊張が解け、笑いが弾ける。
ガロウ
「相変わらず、手厳しい姐御だな……!」
活月見
「誰が姐御だい。口を慎みな、丸焼きにするよ!」
ガロウ
「ひぇっ……やっぱ冗談きかねぇ!」
笑いの輪が広がる。
戦いの傷跡も、涙も、いまだけは遠い。
仲間たちはただ――
生きて、また並び立てた奇跡を噛みしめていた。
⸻
風が静まり、遠くで鳥の声が響く。
灰雲の切れ間から覗く青空は、確かに“明日”を映していた。
その空を見上げながら、活月見はそっと呟く。
活月見
「みんな……よくやったね。
さぁ帰ろうじゃないか。ゼファーリアに。」
穏やかな風が頬を撫で、仲間たちは静かに歩き出した。
光に包まれた道の先――新たな明日が、確かに待っていた。
※本作はAIアシスタントの助言を受けつつ、作者自身の手で執筆しています。(世界観・物語は全て作者オリジナルです)
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