第2話

 勇者一行は顔を見合わせた。

「これは一体⁉」勇者アイクは戸惑いを隠せなかった。


「死んでる……?」エレーナも困惑している。


「魔王を一撃で。見事な腕前だ。ちょっと待てよ。この場合、報奨金はどうなるんだ?」


「そうね、私たちが倒したわけじゃないから、報奨金はなしね」


「そんな。おい、こいつが魔王なのか?」アイクはラースに向かって言った。


 ラースが手配書を確認する。「ええと、魔王デアドロは、と。年齢は、推定10万38歳、身長3メートル前後。特徴は二本の角と悪魔の尻尾(諸説あり)だって」


「情報が雑すぎだろ。なんだよ諸説って」


「一応人相書きもあるよ」


 エレーナが手配書をのぞき込む。


「なんだかありがちな魔王って感じの絵ね。そもそも魔王を見て生き延びた人間なんているのかしら。あ、この絵はイメージ(フリー素材)です、だって」


 アイクは頭を抱え、ネクロムに向かって聞いた。「おい、こいつが魔王なのか?」


「いかにも」


「一体誰がこんなことを? ていうか、おまえ魔王の死体を見ても驚かないんだな」


「当たり前じゃ。そもそもご遺体を見つけたのはわしじゃからな。この部屋から大きな音がしたので、わしと王子が駆けつけたのだが、そのときにはすでに絶命されていたのじゃ。そんな非常時に、空気を読めないおまえらが魔王城にやってきたから、とりあえずわしの秘術、『闇の霧』で覆い隠していたのじゃ」


「あのうっとうしい霧はおまえの仕業だったのか。迷惑な技だぜ」


「失敬な。あの霧は、頭痛、吐き気、めまいなど原因不明の体の不調を招き、果ては五感や思考、記憶の混乱を引き起こすと言われている秘術なるぞ」


「地味にいやな技だぜ」


「それだけではない。人間には、しみやしわなどお肌のトラブルも報告されておる」


「ヤダ、サイアク。さっさと帰ろう」そう言ったのはラース。


 エレーナはいぶかしげに片方の眉をひそめてラースを見たが、すぐに気を取り直してネクロムに向かって言った。

「ちょっと待った。さっき王子がどうとかって……」


 そのとき巨大な玉座の足下から少年がもじもじと顔を出した。


「こんにちは~」頭の小さな角が辛うじて魔族であることを示しているが、それ以外は十六、七歳の、まだあどけなさの残る人間の少年にしか見えなかった。


 









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