クソザコ悪役貴族に転生したので運命に逆らい最強になって破滅フラグを回避してたら、クセつよヒロインたちに溺愛されてしまったのだが?~とかやってたら、無自覚に本編ぶっ壊して最凶なストーリーが始まったッ!?
第19話 才能開花! 無自覚に無敵になっていたッ!?
第19話 才能開花! 無自覚に無敵になっていたッ!?
「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
野生動物、嫌い! シンプルに怖いから!
自然の驚異に、死の危険しか感じねぇッ!
「人生特化型の実践訓練って、こういうことなのっ!?」
「その熊さん、血に飢えてますぅ! 人の味を知っているから、坊ちゃまを食べる気ですよっ!」
「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
現実世界でもこの世界でも、熊は激ヤバ危険生物だ!
体長2メートル、体重200kg! 車のごとき筋肉の塊が、時速60kmで疾走する!
五センチの分厚い爪による打撃は、強烈かつ凶悪な裂傷で獲物を殺す!
「つ、爪がかすっただけで死んじゃうよねェーッ!?」
「は~い、死んじゃいまーすっ! 熊さんの爪が直撃すれば、坊ちゃまは地面に叩きつけられたスイカのように木っ端微塵ですぅ★」
バカがよォッ! かわいいじゃ誤魔化しきれない物騒さじゃねぇかッ!
「でも、やられる前にやっちゃえば何の問題もないでーすっ! 坊ちゃまはその鍛えた体で、人間を喰い殺す危険で有害な熊さんをぶちのめしてください~っ★」
「完璧な作戦だゼ! 不可能だという点を無視すればなァッ!」
「不可能じゃないですよぉっ! 人生で起きるだいたいのことは、知恵と工夫と暴力で乗り切れますからっ★」
無責任かつ物騒なことを言い出すチュチュ君だった。
「乗り切れるわけあるかい! 熊は、剣でも斬れない剛毛の毛皮! 斧すら耐える分厚い脂肪! そのうえ、筋力は人間の10倍はあるんだぞ!」
「それがどうかしましたかぁ~?」
「どうもこうも! そんな化け物を、どうにかできるわけないだろッ!」
言いながらも、ちゃんと逃げる!
「グルァッ!」
棒立ちしてたら、ちゃんと殺されるからッ!
「そもそも、こっちは素手だぞ、手ぶらだぞ!? 熊と戦える状態じゃないッ!」
「あっ! 坊ちゃま、背中を見せてはいけませんよっ! 熊さんは逃げる獲物を追いかけますっ! 逃げないで立ち向かってっ!」
「んなことできるかァァァーッ!」
立ち向かうなど無理!
でも、このまま走って逃げても、俺より足の速い熊に追いつかれる……。
「ならばッ!」
木に登って逃げるッ!
「わあっ! ここで、木登りっ!?」
むッ! 体が軽い!
そうか! 高機動型デブから重い脂肪がなくなれば、それは高機動型人間!
痩せたから身軽になったし、筋トレで筋肉が発達したし、戦闘訓練で技術を習得している!
つまり、無我夢中に努力しているうちに気が付けば、スピードとパワーとテクニックを兼ね備えた無敵の俺になっていたのかーッ!?
「ひゃーははは! 熊畜生風情がッ! この俺を捕まえられるわけないだろッ!」
思いがけず、悪役キャラみたいな事を言ってしまう俺だった。
ゲームの世界の悪役転生とかいう意味わからん非日常を呼び水にして、現実の日常に埋もれた才能を発見した……。
それすなわち――クソ早逃げ足!
「スキルはなくても、クソ早逃げ足があってよかったぁぁぁーッ!」
「わあっ! やっぱり、逃げ足だけは類まれなる才能がありますねぇっ★」
「ちょっと、やめてぇ? 他人に言われると、なんかやな感じするからぁ!」
「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
ワロタ。俺が登った木の根元で、熊畜生がなんか吠えとるわ。
「悔しいか? だが、地を這う四足歩行の貴様では登ってこれまい!」
「坊ちゃま、油断しないでくださ~いっ! 熊さんは、獲物を喰い殺すまでしつこく狙ってきます~っ!」
チュチュ君がなんか物騒な忠告してくるなり――
「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「熊が木を登ってきたァァァーッ!?」
すごい早い! 木が激しく揺れる!
「あと、熊さんは木登り得意系動物で~すっ!」
「それ、先に言ってっ! すごい大事な情報だから!」
「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
熊、怖い! 叫び声も牙を剥き出しの顔も! むっちゃ怖い!
「チュチュ君! 助けて! 熊やっつけてッ!」
「ダメでぇす~っ! これは坊ちゃまの訓練ですよぉ~?」
すげない!
「そうかもだけど! 実戦なのに、仲間がいるのに! 仲間の力を借りて戦わないのは変でしょッ!?」
「グルァッ!」
熊が迫る!
早急に、チュチュ君を説得するしかない!
「人生、だいたいのことは『知恵と工夫と愛の力』乗り切れって言ったでしょ!? 今こそ、愛の力を発揮する時じゃないのかいッ!?」
「ちょっち違いますねぇ~。『知恵と工夫と暴力』ですよぉ」
チュチュ君の妙に気の抜けた態度……。
これって……明らかに、『熊を倒せる』からこその余裕だろ?
ならば、チュチュ君に熊を倒してもらう他ない!
「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
だって、熊なんて自分で倒せないからッ!
「俺は身を挺して熊を引き付けてるんだよッ!? そして、チュチュ君は熊の背後をとってる! つまり、俺が仕掛けた『挟み撃ち』ってワケ! チュチュ君の攻撃によって完成ってワケ! それをやらないのは、訓練への悪質な妨害行為ってワケ!」
「ふ~む。坊ちゃまは、お口が達者ですねぇ~」
ダメだ。なんか乗ってこない!
ここは、直球で行こう!
「ガルアッ!」
「ぎゃあッ! 靴噛まれたァァァッ!」
やべぇーッ! これ以上、グダグダやってる余裕がないッ!
「チュチュ君、たすけてえええええええええええええええええええええええッ!」
この世界に来てから一番デカい声を出した。
だって、ほんとにチュチュ君に助けてほしいからァッ!
「んもう。熊さんぐらいで弱音を吐いちゃってぇ。仕方のない坊ちゃまですねぇ~」
「チュチュ君、たすけてえええええええええええええええええええええええッ!」
「二回も絶叫しないでくださぁい。ちゃんと聞こえてますからぁ」
チュチュ君がため息をついた次の瞬間!
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
俺の足元に迫っていた熊が絶叫を張り上げた!
「チュチュ君、たすけてえええええええええええええええええええええええッ!」
「三回も言わなくて大丈夫ですよぉ~。もうお助けしましたんでぇ~」
チュチュ君が、妙なことを言う。
すると、熊の大きく開いた口から、なぜか尖った木の棒が突き出てきたッ!?
「なに!? ナニ!? 何ッ!? なんで、棒ッ!?」
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