ゆめのとポルカの午後

「ねえポルカ、しゅくだいってさぁ……やらなきゃだめ?」


 ソファに寝転んだ少女──ゆめのが、鉛筆をぷらぷら振りながらつぶやく。

 十二歳の割に幼い話し方なのは、体の弱いおばあちゃん一人に育てられたからだろう。あまり言葉を教えてもらっていないのだ。

 薄紫のツインテールがふわふわ揺れて、飼い猫──のポルカのしっぽにちょんと当たった。


「にゃー(やれよ)」

「うぅ、やっぱり〜? ポルカせんせぇ、きびし〜のです」

「にゃ(当然だろ)」


 ゆめのはノートを開くけれど、すぐにお菓子の袋をガサガサ。


「ポルカもたべる? ……あっ、にゃんにゃんはチョコだめだった!」

「にゃー!(怒)」

「ごめんごめぇん! えぇと、かわりにカリカリどぅぞ!」


 ポルカはぷいっと顔をそむけて、それでも尻尾だけはゆらゆらご機嫌。

 ゆめのが笑って、頭をなでる。


「ポルカ、やさし〜ね」


 窓の外では風が吹いて、カーテンがふわり。

 二人の髪と毛が同じように揺れた。


「ねぇ、ポルカ。しゅくだい終わったらおひるねしよ?」

「にゃー(もうしてる)」


 見ると、ポルカはすでに丸まって寝ていた。


「はやっ! ずるいよ〜!」


 仕方なく、ゆめのもペンを置いた。

 宿題は、まぁ……風が止んだら、きっとやる。

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