隣の部屋(怖いの苦手な方はご注意を)

 夜中、アパートの隣の部屋から、笑い声が聞こえた。

 女の人の高い笑い声。

 私が引っ越してきて三ヶ月、隣には誰も住んでいないはずだ。

 最初はテレビの音かと思った。

 でも毎晩、決まって午前二時に始まる。

 耳を塞いでも、恐怖は止まらない。


「アハハハハ……アハハハハ……」


 乾いた笑いが、今日も壁の向こうでずっと続く。

 怖くて眠れない夜が続いた。

 最近は、睡眠不足気味になってきた。

 もう我慢出来ない!


 ある日、意を決して管理人さんに聞いた。


「あの……隣の部屋、誰か住んでますか?」


 管理人さんは怪訝そうに首をかしげた。


「誰もいませんよ。あそこ、去年から空き部屋です」

「……え、嘘ですよね……?」


 ゾッとして部屋に戻る。

 壁に耳を当てると、今日も聞こえる。


「アハハハ……ねぇ、聞こえてる?」


 凍りついた。

 今までは話しかけて来た事なんて無かったのに。

 壁の向こうで、何かがノックした。

 トン、トン、トン。

 勝手に体が動いて、私は壁を三回叩いた。


 ──その瞬間。


「やっと返してくれたね」


 耳元で、誰かが囁いた。

 振り返っても、誰もいない。

 嫌な予感がした。

 寒気がする。


 その時、また笑い声が。

 けれど、壁の向こうからじゃなく。


 今度はで、笑い声が……

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