祐介

「どうしよう」


夏休み前の太陽がギラギラと輝いている。

滴る汗が目に入りそうになり、慌ててTシャツの袖で拭う。


140センチにも満たない小さな身体に、負った荷物の重量がのしかかる。


「こんなはずじゃなかった」


バッグの持ち手が手に食い込み、痛みを感じる。


祐介は、己のランドセル以外に、共に下校している三人の荷物も運んでいる。


進む道は、炎天下の陽炎がゆらゆらと揺れ、その先はまだ遠い。


手が痺れ、荷物を落としそうになる。


「祐介ー、ちゃんと運べー!」

三人はさっさと先へと進む。


「ちくしょう、何で‥」

手は真っ赤になり、千切れそうだ。目に涙が滲む。


電信柱の細い影に三人が隠れているのが見える。

あと少し、あと少し。そう小さく呟きながらヨタヨタと進む祐介。


やっと三人に追いつき、「

あーーーー!!!!」と叫びながら全ての荷物を放り投げる。


少しの静寂の後。


「「「「せーの、じゃんけん、ポン!」」」」

「あ、また祐介だ(笑)!!」

「えーーー!!!何でおればっかり!!!」


「次の電信柱はあそこだな!」

尊が道の先の少し斜めになった電信柱を指差し、かけて行く。


また重い荷物を運ぶことになった祐介。

「もう!もう!何でずっとおれ?!」


ぶつぶつ文句を垂れながら再び荷物を手に取り歩き出す。


祐介は、この荷物持ちじゃんけんが始まってから、ずっと、ずーーーっと負け続けている。


‥なんで?負けすぎでしょ。


古今、電信柱は荷物持ちじゃんけんの観測者である。

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