第41話 #好きって言ってないのに

 ――気づけば、空が春の色に変わっていた。

 入学当初の喧騒も、誤解ばかりの騒ぎも、今では笑って話せる思い出になっている。


 StarChatのトレンドに、今日もタグがひとつ上がった。


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StarChat #好きって言ってないのに

【校内ウォッチ】

「真嶋&七瀬、放課後の星見坂でついに相思相愛!?」

コメント:

・「#長かった誤解物語」

・「#青春の証明」

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「……ほんと、何でもバレるよな」

 苦笑しながらスマホをポケットに戻す。

 でも、もう恥ずかしさよりも、温かさのほうが勝っていた。


 放課後。

 夕日が差し込む教室に、ひよりが現れた。

 窓辺で光を背に受けたその姿は、初めて“誤解”が起きたあの日と重なる。


「蒼汰くん」

「おう」

「これ、覚えてますか?」

 ひよりが差し出したのは、あの“また話そうライト”だった。

 少し黄ばんで、ところどころに細かな傷。

 でも光をつけると、まだちゃんと灯る。


「ちゃんと光りますね」

「お前が作ったもんだからな」

「ふふっ。じゃあ、これでおしまいです」

「え?」

「“また話そうライト”は、“また話そう”って言い続けたから完成なんです。

 もう、“また”を待たなくてもいいですから」


 ひよりがそっとスイッチを切った。

 光が消えて、教室の空気がやさしい夕暮れ色に戻る。


「なあ、ひより」

「はい」

「俺たち、いろいろあったな」

「ありましたね」

「誤解も、炎上も、先生のポエムも」

「ふふ。全部、青春ですね」

「でもさ、俺……もう誤解されても構わないわ」

「どうしてですか?」

「お前のこと、好きなのは本当だから」


 ひよりの目が一瞬、揺れて、

 次の瞬間、やわらかく笑った。


「……私も、です」

「言葉にすると、あっけないな」

「でも、言葉にしないと伝わらないですよ?」

「たしかに」


 二人の笑い声が、夕日の中で小さく混ざる。


 その夜。

 StarChatを開くと、新しい投稿が流れていた。


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StarChat #好きって言ってないのに

【七瀬ひより@2-B】

「“誤解”は、言葉が足りない証拠。

 でも、足りなかった分だけ、心で補えた気がします。」

コメント:

・「#告白完結」

・「#誤解から始まる恋の証明」

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 続いて、俺も投稿する。


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StarChat #好きって言ってないのに

【真嶋蒼汰@2-B】

「好きって言ってないのに、

 なんでバレたか、やっとわかった。

 ――ちゃんと、伝わってたからだ。」

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 画面の光を見ながら、心の底で思う。

 “誤解”から始まった俺たちの物語は、

 ようやく“理解”に変わったんだ。


 もう、隠すことなんて何もない。

 だからこそ――笑える。

 誤解も、全部、愛しい。


 そして、校内ウォッチが最後に投稿した。


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StarChat #好きって言ってないのに

【校内ウォッチ・最終報】

「結論:誤解は恋のはじまり。

 StarChat史上、もっとも“いいね”された物語。」

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 窓の外、春の星が一つ瞬いた。

 小さな光が、まるで“また話そうライト”の続きのように見えた。


 ――俺たちの物語は、

 “好きって言ってないのに”から始まって、

 ちゃんと“好きだ”で終わったんだ。


(完)

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好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。 東野あさひ @asahigasino

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