第20話 第一章(続き)

 にゃぁぁぁん❤ 開眼だよん。ティッシュの空き箱がこんなに楽しいなんて。うふん、いいことを知ってしまったにゃ。これは隠しておくのにゃ。ていていていっと、ソファーの下に押し込んでっと。また今度楽しみたいからね。

 さ、気を取り直して探索継続だ。


 ところがにゃのだ。さっきのティッシュボックスが特別好きなのかと思いきや、狭い場所や口の開いた容れ物の類を目にすると、一々反応して飛び込んでしまうにゃ。(ん? いちいち猫語っぽくしなくてもいいのに、つい)猫としたものは、なんともやっかいな性質があるものだ。特に、次男の臭いスポーツバッグと、お菓子の空き箱には萌えまくった。にゃああん♪


 エン〇ルパイの空き箱なんてオレの身体の三分の一ほどのサイズだけどな、真面目な顔して無理くり入った。そして、案の定、腰を落とした瞬間に潰れた……後ろでぽっちゃり坊やのボクちゃんがぷっと吹いているのが聞こえた。しまった、おじさん、ちょっと恥ずかしい。

「猫ったら、そういうのは絶対はずさないよね~」


 おややっぱりが名前なのかなあ? そうかー、何かしゅん。まあいい? やっぱ、そうなのか……気になる。でもさ、本能的に動いちゃったけど、間違った行動じゃなさそうだったよ。ああ、おじさんとしては面目丸つぶれだけど、猫としては普通らしくて安心した。かくして、リビングだけで既に夜も更けて来た。

 おじさん、ちょっと……いや、大分、疲れちゃった。


 本当に、屋内探索、二、三日で終わるのだろうか……ま、猫だしノンビリやってもいいか。明日も日中は無人だろうし。そろそろだにゃ。眠たくなったら寝ていいって滅茶苦茶幸せじゃねーの。オレは、人前も憚らず大欠伸おおあくびをかましつつふらつき始めた。


 ところで、どこで寝りゃいいんだ? このまま香箱を組むのも悪くないが、あちこち居心地を試してみるか。きっとお決まりがあったはずだ。おや、意外にも布製のマガジンラックが中々よい。今までも猫用だったのか雑誌が入ってないのもポイントが高い。狭いしハンモックのようで心地よいではないかぁぁぁ。


 オレはラックの布の上にだらーんと伸びた。

「猫~やっぱそこで寝んだ~」

 つけ回していたボクちゃんがほっとしたように言った。ほーそーかそーか、以前からここはお気に入りだったのな。んにゃむにゃ……



 暗転……というくらい意識不明で爆睡してしまった(汗)

 野生の猫なら天敵に襲われて死んでたかも……



 さて、翌早朝、小鳥の声で目が覚めた。なんとも優雅である。

 目覚まし時計で強制起床じゃないなんて、何て清々しい目覚めだと、一頻しきり感動に浸った。んにゃ❤ まだ外は薄暗いから五時頃だろうか。いやー猫って早起きなのね。本来なら夜は寝ないのかもしれないけど、まあいい。活動開始と張り切ったが、どこもかしこも扉がきっちり決められていて、リビングから出られない。


 にゃんだよ、夜のイタズラを阻止ということか? って、暇だ。

 そうだ、活動開始の前にすることがあった。起き抜けはトイレを済ましておかねば……ところで、トイレはどこだ? まずい、その辺でしちゃったら増々ボケを疑われるじゃにゃいの。捜せ捜せ、便所を捜せ。いや、猫用トイレでいいんですがね。


 台所から行ける場所で、一つだけ扉がちょい開きだ。くんくん、あ、何やら懐かしい砂の臭いがする。間違いない、あそこに猫用トイレがあるな。ドビュン……はーやれやれ間に合った。とりま一安心。して、この後どうすればいいんだっけ? ぱなしでいいのか???


 何も心配することはなかった。ザックザックザック……勝手に前足が砂をかいてかけてやがる。身に染みついて習性というのは、見事なもんだ。人間様だったオレが猫としてなんら不便がないなんて。驚いちゃう。にゃ。



続く

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