前編③

 ところが、やってきた息子さんが美少年だったので、小夏ちゃんはおろか私までも“年甲斐もなく”「きゃあ!♡」と叫んでしまって……気掛かりなど、どこかへ飛んで行ってしまった。


 母一人子一人と言う環境で育ったせいだろうか、息子さん(=コウキくん)は細かい事にもよく気が付き、人に対しては物腰が柔らかな、本当にいい子だった。

 加えて、あの“イケメン”だ!!


 どちらかと言えばヤングミセスが客層だったこのお店は、平日でも午後になれば、必ず若い女の子達の“さえずり”が聞こえる様になってしまった。


 逆にカレの居ない日は日になってしまい……


 商品のPOPを作りながら小夏ちゃんが


「私、と付き合ってしまって、ホント早まったって思うんです!」

 とのたまうので


「どういう事?!」

 って聞き返すと


「ほら! ワタシってこのお店でコウキくんに一番近い立ち位置じゃないですか? なのに“既にカレシ持ち”のせいで、それを生かせないんですよ!! 歯がゆいですよ! これは!!」


「それを言うなら私もになるわよ! 独り身だし……」


 と、チャチャを入れてやると、小夏ちゃんはジトっと私を見た。


「確かに店長はお年の割には随分可愛いですよ~でも、雇用者ですからね! あ・く・ま・で・も!! だからコウキくんにセクハラ、パワハラ的な事はしないでくださいね!!」


 小夏ちゃんのチリッ! としたに半分は吹き出しながらも半分は“毒入り”で返してしまった。


「アハハハ 小夏ちゃんも歯が痒くならないように、カレシくんにしっかりケアしてもらってね! 私はね! いまさらどこも痒くはならないから大丈夫だよ」


 全くもってそうなのだ。


 ゆっくんとの素敵な時間を持てたこと以外は散々だった結婚生活以来、(だからもう10年以上)男の人となんて事は皆無だった。


 さっき、小夏ちゃんが言ってた……多分ディすりだとは思うけど……『お年の割には随分可愛いですよ~』が、もし本当なら、それは私が『精神年齢が二十歳そこそこで止まってしまったお子ちゃま』だからだと思う。


 そして、そんな自分でもまあいいやと……

 その時は思っていた。



              後編へ続く

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