理想を叶える指輪

@Riber-0039

第1話


この世界には理想を叶える指輪がある。いつからかは分からない。いつの間にかこの世界に存在していた。

この指輪はたくさんの者の人生を変えた。ある者は億万長者となり、ある者は絶世の美女となり、ある者は世界を支配した。

だが人間というのは欲深い。皆不幸な死を遂げた。誰もが顔をしかめるような死に方だ。それが指輪のせいなのか、使いこなせなかった持ち主のせいなのか、はたまた両方か、それは分からない。だってみんな不幸な死に方だからね。

しかし指輪を消そうとした者はいない、今もどこかで存在している。


世界のある場所に1人の青年がいた。その青年は世界を嫌っていた。正確には世界に存在する人間を嫌っていた。世の中には善人なんて存在しない、必ず人間は悪人と偽善者に分かれる、そう彼は思っていた。もちろん自身も善人ではないと。当たり前である、人を疑っているのだから。

そんな彼にもチャンスが来た。「指輪」が彼の元に流れ着いたのだ。どうやってそこにたどり着いたのかは分からない。誰かが置いていったのか、指輪が勝手に動いたのか。

まあそんなことはどうでもいい、大切なのはこれからどうなるか。青年はその指輪のことを知っている。無視して嫌いな存在のいる世界を受け入れるか、自分の理想を叶えるか。どうするんだろうか、楽しみだね。


青年はその指輪を保管した、誰の手にも渡らないように。

意外と慎重な性格らしく、自分の理想をできるだけ詳しく考え直しているらしい。


3日がたった。ようやく叶える理想を決めたらしい。さて、どうするのかな。やっぱり人間を消すのかな、それとも慎重な性格だから、あえて自分が悪人になって世界を良くする人間を増やすのかな。


「この指輪を消す」


………なんでだよ……全っっ然面白くない

人間が消えると思ったからお前にあげたのに。楽しみにしてたのに。

人間が自分の理想を叶えてそこから更に欲にまみれて自滅して終わっていくその姿が、惨めで面白かったのに。

でも指輪は消えない、理想を叶えるのは指輪じゃない僕だから。僕が作った指輪だからね、指輪はただの目印。残念だったね。

あぁ、君たち今こう思ってるでしょ、最初の話と違うって。嘘ついたのかって。そうだよ、嘘ついたよ。その方が物語として綺麗だからね。

……綺麗になるはずだったんだよ、これは想定外。今まで指輪を利用しようとした人間しかいなかったから。

とりあえずこいつは邪魔だから消そう。僕の遊びを邪魔するなんて人間がしていいことじゃないしね。


これからもこの指輪は誰かの手にわたる。誰かの理想を叶え、人間を遊び道具として使う「何か」によって人間は弄ばれていく。

これを終わらせるのは「何か」の良心か、この邪悪な遊び心すら飲み込む人間の悪意か。


「結末が楽しみですね。そんなものがあるのか分かりませんが。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

理想を叶える指輪 @Riber-0039

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画