2.5 先輩の苦悩
ガヤガヤと賑わう食堂。
その中を、金髪と青のグラデーションの髪の青年が深いため息を吐きながら通る。
「あ、ダウトじゃん。おかえり〜」
緑の髪の小柄で可愛らしい見た目をした生徒が手を軽く振って迎えるとその青年、ダウトはその生徒に飛びついた。
「あー、もう疲っかれた!あの教官説教長いんだよ。てか何で俺が怒られてんの?悪いのあの赤髪だっつーの」
「ちょ、知らないよ。キモいから離れて」
抱きつきながら頬をスリスリさせて愚痴るダウトに、娘にウザ絡みする親父のようなキモさを覚えてリオンは顎をぐいっと押し返した。
「ひっど。ねえシウー、リオンがひどいー」
今度は、リオンの横に座ってサンドイッチをくわえてる紫色の髪の青年、シウになだれかかった。
「そりゃこの毒舌お姫様が大人しく抱きつかせてくれるわけないだろ?」
「じゃあもうシウでいいや、慰めてー」
「あー、はいはい。いい子でちゅねー」
「なんか違う……」
机に突っ伏すダウトの頭をポンポン撫でるシウ。
リオンはそれを見てオエっとこっそりえずいた。
「で、何で怒られたの?」
「……ほら、あの赤髪、今一応俺らの小隊所属ってことになってるだろ?今日の昼前にあいつがクラウス教官に唾かけて追いかけっこしてた件について隊長の監視不足って怒られた」
「あー、それ僕見た!めちゃくちゃ面白かったよ」
「笑えねぇって……」
「隊長の監視不足ってのはおかしくないか?降格の可能性があるから確定するまで関わるなっていったの教官だろ」
「いや、それ言ったのは……」
「俺だ。余計なこと言ってすまない」
ガチャっとテーブルの上に定食の乗ったトレーを置き、対面の椅子に座ったのは深い紺色の、ガタイのいい生徒。
「お前は関わらない方がいいって忠告してくれただけだし、俺もそれに同意したから別にお前が悪いわけじゃない」
だらしなく机にのせてた上半身を起こしてそう言うダウトは、少し言いにくそうに苦い顔をした。
「じゃあダウトの自業自得だね」
「いやだってさ!降格かかってる身でこんなことやらかすと思わねぇじゃん!?ただでさえうちの今年の一年……」
独特だってのに
そう言いかけるも、言葉にする前に口を閉じた。
ガッシャンッ
「おい、どこ見て歩いてんだクソ野郎!」
皿が大きな音で地面に落ちる音とともに、怒鳴り声が聞こえたからだ。
何事かと一同音がした方へ目をやると、そこには床に尻餅をついている赤髪の生徒とその生徒を見下ろす銀髪の生徒がいた。
「あれってもしかして、ハウルと例の?」
「えー、どっちも第三隊の一年メンバーじゃん」
心配そうに様子をみるシウに、面白そうに笑みを浮かべるリオン。
まずいかもな、とその2人の言葉を聞いてつぶやくヴォルガ。
「どこ見て歩いてるって?ハッ、そりゃこっちのセリフだ。赤髪は性格だけじゃなくて目も悪いんだな、可哀想に」
シウはチラッと横に目をやると、案の定頭を抱えるダウトの姿があった。
「もう、勘弁してくれよ……」
月と太陽〜人類の希望は問題児〜 @nagp
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