事故物件に泊まろう!2
「和室はあんまり怖くないかも。なんか、居間より埃少ないし。ここで寝ようかな」
和室に入ってすぐ、ほのかは寝転がって言った。あまりの呑気さに視聴者も呆れているが、彼女は寝転がったまま、ぼんやりと天井を眺めていた。天井のシミが顔に見えないかなー。と再び馬鹿な思考を巡らせる。
和室には遺影が壁に掛かっているが、それ以外に気になるところが無かったらしく、こうして無防備に大の字に寝転がっている。あまりの自由さに、視聴者も頭を悩ませていた。
「あ、写真!」
写真のことを思い出すと、さっきまでの退屈そうな顔とは打って変わって、活き活きした表情になった。しかし、写真を撮り終えるとまた暇そうにコメント欄を眺め始めた。
「二階に行く前にさ、何かしたいよね。いつものやる?」
ほのかがそう言うと、コメント欄は盛り上がった。ほのかは、ただ事故物件に泊まるだけでは無かったのだ。
ほのかはリュックサックから折りたたみの三脚を取り出すと、それを開いてスマホに取り付ける。それから『怪談』と書かれた本を畳に置き、彼女は正座になってその本を開いた。
「じゃあ読むよ」
先程までの元気な声ではなく、ほのかの声は落ち着いていた。背筋が凍るような内容を、ほのかは淡々と読み上げていく。これはほのかの配信の醍醐味だった。視聴者は震えながらも、ほのかの話に聞き入っていた。
話を読み終えて数秒、ほのかは突然立ち上がった。
「二階行ってみる?」
ほのかの提案に、視聴者は頷く。ほのかはスマホを手に持つと、階段の方へと歩き出した。
「この階段、登りづらそう」
そんな呑気なことを言って階段に足をかけると、不思議なことに、ほのかは足を滑らせて尻もちをついた。なかなか霊障が起こらないからなのか、ほのかはぼーっとしていたのだ。
視聴者が心配する中、ほのかは何事も無かったように足を踏み入れる。一歩、一歩と登っていくと、そこには市松人形が大量に並べられていた。
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