静かに傘を

cotocoto

第1話

雨に濡れるのが嫌いで

数滴の雨粒が顔に当たっただけで私はすぐに傘を取り出す


小雨くらいなら傘なんて必要ないよっていう人もいるけれど

私は数滴でも無理でかなり慌ててしまう


人の感じ方って本当にいろいろで雨と傘によく似ている

少しの刺激でも過剰に反応してしまう人もいれば

全くの無関心で反応のない人もいる

本当に人間で不思議で人それそれの感じ方があるんだなと思う


例えばだよ

おいしそうなお菓子が目の前にあったら子供のころならすぐに手を伸ばして食べようとしていたけれど

大人になってからは周りの目を気にしたり

そして手を伸ばすことをやめて我慢をしたり


きっと空腹って刺激や欲を子供のころは大きく感じ取っていたんだと思う


不思議だね

大人になってしまったことでその感情の刺激を隠してしまうなんて

本当は今すぐにでも手を伸ばしたいほどつかみ取りたいものがあるのに

本当は子供以上に大人は子供なのに


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


悲しんでる人を見て思う

たいしたことないのに・・・もっと他に大きな悲しみを抱えてる人は

たくさんいるんだよって


苦しんでる人を見て思う

いやいやまだ頑張れるでしょう もっとみんな頑張ってるよって


泣いてる人を見て思う

そんなことで泣いてどうする これから先

もっと泣きたくなることあるよって


こんなふうに想ったり答えたりする人は

小雨程度の雨なら傘をささないひとのように 

何事にも少し無関心で配慮のない人間なのかもしれない


傘と人ってよく似てる


☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂☂


兄は毎年母の日に傘を送り続けている

そっと手紙を添えていろんな傘を母に送っている

その手紙を見せてもらったことはないが

母の目に少し涙が光るのを私は知っている なんて書いてあるんだろう




わたしも そっと誰かの心に傘をさせるようなひとになりたい

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