第9話 お互いの名前を知ろう☆の回


「あのねえ、ボクらは芸能人だよ!」


 猫を抱えている赤髪少女が言う。

 首をかしげる僕を見て、青髪少女は赤髪少女に言った。


「おかしいなぁ。私たちそこそこ有名だよね!! ねえ葵!」

「いやボクもそうだと思うけどねえ……ねえ姉さん! もしかして過去の人なの!?」


 赤髪少女も言う。

 必死に言ってるけど、僕は少し眉を下げた。


 うん。必死になってるけど、でも……。


「いや、ごめん……知らない……。」


「………………はあ……まあいいよ。過去の人にこんなこと言っても無駄だしね。」


 的確に急所を突いてくるなこの毒舌赤髪少女……。


・・・


「まあ、改めまして……初めまして、だよね? 光莉ひかり……です。ほら、あおいも、」


 青髪少女が名乗り、隣にいる赤髪少女を『葵』と呼んだので、赤髪少女は葵と名乗るのかな……とも思ったが……案の定予想は大外れ。


「初めまして。光流ひかるです。よろしく。」


 あっ、違った。全く別の名前だった……。


 そして彼女らの赤と青の目が僕とジッと見つめた。

 僕は一瞬怖くなったが、数秒考えて「あ」とつぶやいた。


 そうか、次は僕が名乗る番か。


「えーっと、こちらこそ、よろしくお願いします。西村……陸です。」


 僕が頭を下げると、光流が早口で言った。


「あっ、あと、さっき……過去の人なの!? とか言っちゃって、ごめんなさい。」


 光流がそう言って頭を下げる。

 芸能人なのだったら、自分の評判を下げないためってのもあるだろうな。


「いえ……全然、大丈夫です……。」


「でも……。」


「あの、本当に……大丈夫ですから……………。」


 そう、本当に、大丈夫だから。

 あの、地獄のようないじめの日々に比べたら、全然……。

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