第5話 庁舎、開く

 旧ローゼンタール邸の朝食は、王国とはまるで違っていた。

 主人も使用人も同じ卓につき、ざっくばらんに食事を楽しむのである。


「へぇ、同じ食事なんだ」

 驚くエドワードに、マルタが笑って返す。

「朝食はみんな一緒が一番さ!」


 クラウスは相変わらず石像のような顔で料理を告げ、去り際に「……明日は唐辛子をひとつまみ入れてみるか」などと呟いてアウレリウスを困惑させた。


◇◇◇


 出発の支度を整えると、なぜかマルタもクラウスも口を揃えて念を押す。


「どうか……お気を強く」

「覚悟をしておいた方がよろしい」


 不穏な忠告に首をかしげつつ一行は法務庁舎へ。


◇◇◇


 石造りの巨大な庁舎の前で待ち受けていたのは――骸骨のようにやせ細った男だった。

「……ようこそ、リューネブルク侯国法務庁へ」


 事務次官バルタザール。政務において実質の長である。

 その陰鬱な気配に、マルタやクラウスの忠告の意味をエドワードとアウレリウスは悟った。


「わぁ……こわいひとぉ」

 フランツの呟きが、張りつめた空気をわずかに和ませた。

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