試験直前の煩悩
Kay.Valentine
第1話
高校2年生二人が、歩道を歩いていました。
右が純一、左が晴彦。
二人は同級生で、しかも家が近いので
朝はいつも二人で歩いて通学しています。
15分ほどです。
今日は、2学期の期末試験。
二人は英単語やイディオムを
一生懸命暗記しています。
純一は、前の方から絶世の美女が
しゃなりしゃなりと歩いてくるのに
気がつきました。
「おい、見ろよ。すごい美人だぜ」
純一は晴彦の肩をたたきますが
晴彦は暗記を続けたまま
振り向きもしません。
「わあっ。近づいてきた」
「うるせえなあ。それどころじゃないだろ」
美人は近くまで来ると
純一の方を見てにっこりとして
ウインクをしました。
純一はすっかり美人のとりこになって
両目はハート形。
「おいおい、今オレ達にウインクしたぜ」
「うっせえなあ。
それがどうしたっていうんだよ」
晴彦はそれどころじゃないという表情で
ノートから目を離しません。
一方、美人が通り過ぎたあとも
純一は夢気分。
魂の抜け殻みたいになってしまいました。
「おい! あと5分で学校に着くぞ」
純一ははっと我に返り
「いけねぇ」と言って暗記を始めましたが
頭は混乱状態。
今まで覚えた単語まで忘れてしまいました。
「これ、何て発音するんだっけ、コンフセ」
「コンヒューズ。
今の美人みたいにオマエを
『混乱させる』
って意味だろ」
「あっ、そうだった。じゃ、これは?
アットラクチベ」
「アトラクティヴ。
『魅力的な』だろ」
「ああ、そうだった。
アトラクティヴな人だったなぁ……」
純一は、はぁ~っとため息をつくと
またぼんやりと夢気分。
「時間がないぞ!
とにかく今まで覚えたところだけでも
ちゃんと覚えなおせよ」
再び現実に戻った純一。
「そうだった、とにかく覚えなくちゃ」
と真っ青になって
英単語の暗記をし始めました。
しかし、時すでに遅く
学校についてしまったのでした。
チャイムも鳴っています。
オシマイ
試験直前の煩悩 Kay.Valentine @Kay_Valentine
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