第8話

 その夜智衣は、量販店で出会った千秋のことを、あずさに話そうか迷っていた。

 あずさがどんな過去を生きてきたのか、興味がない智衣だが、突然目の前に現れた千秋が自分のことを知っていて、恐怖を覚えた。

 智衣が迷っていると、あずさが話しかけてきた。

「今日仕事中、背が高くて身体の大きな男性客がいたの」

「えっ、それってまさか」

「私もそう思って、びっくりした。でも、違った」

「なんだ……」

「後ろ姿は、にてたんだけどな」

「顔、見たのか?」

「レジをやっている時、チラッと」

「どんな顔?」

「……ゴリラ」

 思い出したあずさは吹き出し、智衣は爆笑した。

「後ろ姿を見た時、先生?って思ったけど、違った。先生、よく来てくれたけど、来なくなったね。先生から、ライン来てない?」

「来てないな。教師だからな。忙しいんじゃねえの?」

「そうね。先生元気かな。また、遊びに来てくれないかな」

 智衣とあずさと教師の坂登の三人は、引き寄せられるように出会った。

 坂登は、ストーカーに悩んでいた。

 そのことをを知った智衣は、共犯者になった。

 坂登を思い出した智衣は、あずさに千秋のことを聞くことにした。

「俺と出会う前、友達と暮らしていたって言っていたよな」

「そうだけど」

 あずさは、不機嫌気味に答えた。

「今日、あずさと一緒に暮らしていたと言う女に会った」

「えっ?」

「千秋って、名乗っていたな」

「千秋が、なんで?」

「わからない。俺のことを知っていたから、千秋って女、俺たちのことを嗅ぎ回っているんじゃないのか」

「そんな……でも、あの子ならやりかねない」

「そうなのか?」

「一緒に暮らしてわかったんだけど、凄い嫉妬深くて、男やお金にだらしない子なの。私は、いい金づるだった。それに気が付いて、私は千秋から逃げ出した」

「そうだったのか」

「千秋が、近づいてきたんだ。やだな」

「何かあったら、すぐ俺に言うんだぞ」

「うん」

 智衣と見知らぬ女の二人の写真が送られてきたことを、あずさは思い出していた。

 あずさは写真を握りしめ、ゴミ箱に捨てた。

 その時写真を送ってきたのは、千秋だと思った。

 智衣の話しを聞いて、写真を送った相手はやはり千秋だと確信した。

 千秋はいったい何を考えているのか、あずさにはわからなかった。

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