第9話

 千秋の同棲相手の男が仕事に出かけ、一人になった千秋は部屋と風呂の掃除をした。

 掃除が終わると、タバコをゆっくり吸った。

 タバコを吸いながら、千秋は昨日のことを思い出していた。

 やっと、やっとだ。

 広瀬智衣に、私は近づいた!


 仕事を終えた千秋は、あずさがバイトをしているコンビニの側に行き、バイトを終えるあずさを待った。

 しばらくすると、コンビニの裏口からあずさが出てきた。

「久しぶり」

 言いながら、千秋はあずさに近づいた。

 あずさは驚きもせず、冷たい目で千秋を見た。

「そっか、広瀬君私のことをあずさに言ったんだ」

 千秋の顔を見るだけでも嫌なのに、千秋が「広瀬君」と馴れ馴れしく言ったので、更に不快な気分になった。

 あずさは、足早に歩いて千秋に言った。

「何か用?」

 千秋は、あずさの後を歩きながら言った。

「あずさに写真を送ったんだけど、あの写真どうした?」

「写真を送ったのは、やっぱり千秋だったのね。捨てたわ」

「捨てた?もったいない!ねぇ、写真に写っていた女の子あずさは知っている?」

「知らないわ」

「やっぱりね。あずさの同居人のこと、知りたくない?」

「興味ないわ」

「あずさの同居人、あいつやばいわよ」

 意味ありげに言う千秋に、あずさはピシャリと言った。

「二度と私の前に、現れないで!迷惑よ!」

 あずさは、思いっきり走り出した。

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