第14話
久々に線を作った。芯を剥いてコネクタを圧着する程度だが、丁度仕事場に器具を持っているのが僕だけだったから、僕がやった。器具を渡して若手にやらせるのも考えたが、ストリッパーも圧着工具もテスターも扱った事ないそうで、ストリッパーで芯を切り落としかねんし、今後やる事もなさそうだしで引き受けた次第だ。ちなみに16芯の丸型コネクタだった。
一応本来は電気屋に頼むものだが、社内テスト用のため手前で実施して問題ない事は確認済み、と付記しておく。後で読み返して、何してるんだとなっても困る。
しかし、仕事で何年かぶりにやったが案外覚えているもので、図面もピンアサインもすぐに理解できた。また、最近はコネクタ側も努力していて実に作りやすくなっている。剥いて差し込んで、あとはワンタッチで圧着。いい時代になったものだ。今も開発に残っていたら、喜んでいた事だろう。僕が工具を持っているのはその名残だ。
先輩がホイホイとこなして行く様を憧れの混じった眼差しで見ていた事を思い出し、僕もそう見られたら良いと思う。この世界は線が基本中の基本だ、作れるようにとは言わないが今後はその基本の手配を忘れないように、と放った小言は寄る年波のせいだろう。
世の中に線はごまんとあれど、目的にあった物は案外少なく、また見つかりにくい物だ。経験した中では15メートル、直角コネクタでネジ付き、高屈曲のUSB-C、なんて物を探し回った挙句輸入することになった事もある。確かUSBの仕様の限界スレスレだったような記憶がある。今更仕様を調べることはしないが。発注するまでも時間がかかり、発注してからも船便で1月待たされた。
そんな経験があるから、線は基本中の基本だと言えるのだ。
ただ、手配漏れがあったのは僕の監督不行であったので、そこは僕も反省するところだ。
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