第12話
あんな事を書いた手前、小っ恥ずかしく思うが、さりとて備忘録の機能を別にしてしまうと情報が散逸してしまうので続ける事にする。この決心に時間は掛かったが。
この間、僕は普通に仕事し、休日を過ごしていた。その生活の中で書いておこうと思う事があったので書き留めよう。
仕事柄回線屋とそれなりの付き合いがあるわけで、その回線屋から聞いた話だ。
長距離の回線敷設では、まず仮線を一時的に敷設を行う。その仮線を用いて速度などの性能や線の長さを確認し、その後仮線の回収と本線の敷設を行う。その仮線の回収時に、如何に手早くかつ綺麗にそして絡まずに再利用できるようまとめられるかどうかで回線屋の技量が分かるという。
そんな事がと思うが、聞くに絶対ではないがそれでも有効な指標の1つと言う。早く丁寧な仕事が求められている人ほどそうなるらしい。回収が早ければ次へ早く移動できる。絡まなければ手間取る事なく開始できる。それが徹底されている会社ほど、仕事がある。或いはそうならなければならないほど仕事があると言う事だ。もちろん仕事の多寡が質とイコールでは無いだろうが、指標の一つにはなるそう。
で、その仮線回収だが。早さと綺麗さを競う選手権があるらしい。50メートルと200メートルで出場すると言っていた。展示会の余興とのことだが、かなり興味をそそられた。優勝しても特にメリットがないと言うが、誰それが優勝したらしいから頼もう、なんてことは企業間ではほぼ無いわけで、それは確かにそうだろう。
展示場の一角で行われるプロ同士の熱い戦い。日の目を見る事はないだろうが、しかし遊びではなく仕事なのだから真剣に向き合っている事だろう。展示会はまだ少し先とのことだが、機会を見つけてお邪魔しようと思う。
それと。
少々コツを教えてもらったので、後で試そうと思う。まだ使う事があるやもと残していた30メートル線が、埃を被りながら僕を見ている。
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