第8話:デバッガーへの依存と、美少女たちの信頼

1.勝利の余韻と、深まる絆

空間歪みバグの修正から数日後。俺たち『放課後チート同盟』は、廃ビルでの激戦の疲労を癒しつつ、部室で次の対策を練っていた。

咲耶とひかりは、能力の消耗から完全に回復したわけではないが、その表情には以前よりも強い自信と、俺への明確な信頼が宿っていた。

「佐倉君。あなたがいなければ、私たちは確実に失敗していたわ」

咲耶は、いつもの冷静さの中に、初めて明確な感謝の感情を滲ませた。

「能力の閾値…世界のシステムの**『裏コード』を読む力。あなたの『デバッガー』としての能力は、私たちのチート能力を遥かに凌駕する、真の『チート』**よ」

ひかりは、俺の隣で屈託なく笑う。

「あの時、ゆうくんの声を聞いた瞬間、絶対大丈夫だって思ったよ!だって、ゆうくんの指示は、ゲームの**『必勝コマンド』**みたいだったんだもん!」

俺は照れくさくて、顔を掻いた。

「いや、俺はただ…目の前の情報に必死だっただけで…」

凛は、その様子をデータ分析するように眺め、冷静に結論づけた。

「データで証明されたわ。佐倉君の『裏コード』の解析能力は、戦闘能力よりも遥かに、この世界を救うために必要よ。私たちのチームは、もはや彼の**『指示』なしでは機能しない。これが、新たな『チーム依存度』**よ」

「ふふ、つまり、陰キャ君は、美少女たちに**『依存』**される立場になっちゃったってことだね」零が、からかうように微笑む。

俺は、戸惑いながらも、この状況が嫌ではないと感じていた。初めて、俺という存在が、誰かに心から必要とされている。それが、美しくチートな能力を持つ少女たちだなんて、まるで夢のようだ。

<h4>2.『影の支配者』の目的と、新たな脅威</h4>

ミッション成功の代償として、俺たちは『影の支配者』の存在を、より深く意識するようになった。

凛が、分析結果をモニターに映し出す。

「今回、敵が使用した『対異能者能力』は、私たちの能力の**『原理』**を把握している証拠よ。彼らは、私たちの活動を妨害するだけでなく、私たちの能力の仕組みを探っている」

「つまり、彼らは私たちと同じ**『修正者』側の人間**、あるいはその元締めだった可能性があるわね」咲耶が鋭く指摘する。

「敵の目的は、『世界のバグ』を利用して、特定の利益を得ること。しかし、なぜ彼らは、私たちを排除しようとするのか?」

零が、ポッキーを噛むのをやめ、真剣な表情になった。

「…私が見た幻惑の痕跡から推測するに、『影の支配者』は、この世界を『ゲーム盤』のように考えている。彼らにとって、バグを修正する私たちは、**『迷惑な運営者』**なのよ」

「迷惑な運営者…」俺は、その言葉にゾッとした。

もしこの世界が本当にシミュレーションだとしたら、『影の支配者』は、そのバグを利用して、自分たちに有利なルールで遊びたいのだろう。そして、俺たち『修正者』は、それを許さない。

その時、部室のドアが、**ドンドン!**と叩かれた。

「誰だ!?」咲耶が警戒する。

ドアを開けると、そこには、息を切らしたクラスメイトの男子が立っていた。

「佐倉!お前、まさかこんなところにいたのか!大変だ!…お前が、学年トップの成績だと、貼り出されてるぞ!?」

<h4>3.成績改ざんバグと、デバッガーの焦り</h4>

「…は?」

俺の頭の中が真っ白になった。俺の成績は、中の下。テストの順位は、いつもクラスの真ん中より少し後ろだ。

俺たちは慌てて廊下の掲示板へ急いだ。

そこに貼り出されていたのは、最新の学年順位の発表。そして、その堂々たる一位には、**『佐倉 悠斗』**の名前と、満点に近い点数が記載されていた。

「これ…バグだ!」俺の視界に、即座に警告ウィンドウが表示された。

【ALERT: World System Error 005: Personal Data Manipulation - High School Wide】

【エラー種別:Temporal Value Overwrite - 過去データの遡及的改変】

「成績の改ざん…!しかも、今回のターゲットは、俺のデータだ!」

凛が、驚愕の声を上げる。

「ありえない!前回、職員室のネットワークは完璧に修正したはずよ!どうやって、過去の成績データまで遡って書き換えたの!?」

「これは、『影の支配者』による、明確な警告よ」咲耶が、強い口調で言った。

「佐倉の成績を改ざんし、彼を注目の的(スポットライト)に晒すことで、私たちを混乱させようとしている。彼らは、佐倉の存在が、チームの弱点であると見抜いたのよ!」

学園中の生徒が、掲示板に群がり、俺を指さしている。陰キャだった俺は、一夜にして『天才』として晒し者にされてしまった。

そして、その混乱の最中、俺の視界に、新たな**『侵入』**の警告が表示された。

【Warning: Unauthorized Access Detected - Debugger Targetted】

「咲耶!まずい!このバグは陽動だ!俺のスマホが、外部からハッキングされている!」

俺の個人情報、そして部室の場所、全てが危険に晒されている。

『影の支配者』は、俺を狙ってきた。デバッガーである俺が、最大の弱点にされてしまったのだ。

—―第8話 完—―

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