第7話:デバッガーの覚醒と、絶体絶命の指示
1.危機的状況と、ブレインの焦燥
俺たちがいる屋上からも、歪んだ空間と、咲耶とひかりが倒れ込んだ廃ビルの屋上が見える。
「咲耶!ひかり!大丈夫か!?」
インカム越しに叫ぶが、二人の返答は苦しげな呼吸音だけだった。
「まずいわ、佐倉君!あの衝撃波は、私たちの能力そのものに干渉する**『対異能者(アンチ・フィクサー)能力』**よ!」
隣にいる凛が、青ざめた顔で解析データを叩く。
「このままでは、彼女たちは能力を封じられ、空間の歪みに巻き込まれてしまう!零、援護は!?」
零は、遠くの敵に向かって**『幻惑』**を仕掛けていたが、その表情は険しい。
「…ダメ。敵の異能者は、私より階級(ランク)が上だ。私の**『幻惑』**が、奴らに届いてない。奴らは私たちの存在を察知して、わざと罠を張ったのよ…!」
孤立無援。俺たちデバッガー、キャンセラー、イリュージョンの三人は、能力が戦闘向きではない。頼みの綱の**『フリーズ』と『ブースト』**は、敵の反撃で沈黙した。
俺の視界の警告ウィンドウが、狂ったように点滅する。
【CRITICAL ALERT: Spatial Distortion - Core Collapse Imminent】
【敵性異能者:能力再チャージ中 - 5秒後、次波攻撃開始】
あと5秒。咲耶とひかりが、完全に戦闘不能になる。
「くそっ…!どうすれば…!」
俺は、頭の中で必死にシミュレーションを回す。
咲耶とひかりは、廃ビルの屋上から動けない。凛の**『無効化』も、この広範囲の対異能者能力に対しては、効果が薄い。零の『幻惑』**も通用しない。
「デバッガー!指示を出して!このままじゃ、本当に世界が終わっちゃうよ!」ひかりの震える声が、インカムから聞こえた。
<h4>2.「バグの法則」の発見と、悠斗の覚醒</h4>
「落ち着け、俺!俺はデバッガーだ。この世界の**『不具合』**を見つける能力者だ!」
俺は、表示されている膨大な数の警告コードとデータを、食い入るように見つめた。
このバグ…空間の歪み。そして、敵の反撃。
二つのエラーコードが、俺の頭の中で、突然**「結合」**した。
【World System Error 004】と、【Enemy Anti-Fixer Ability】。
俺は、何かに気づいた。この二つの現象には、**『共通の法則(ルール)』**がある。
「凛!教えてくれ!敵の能力は、何に反応して発動した!?」
「…分からない!能力の波長を解析できないうちに、弾き飛ばされたわ!」
「違う!物理的な波長じゃない!…俺が見てるのは、**『世界のシステムログ』**だ!」
俺は、目を閉じた。視界のウィンドウが、目の裏に焼き付いている。
敵の能力は、咲耶の『フリーズ』と、ひかりの『ブースト』が、「特定の値(閾値)」を超えた瞬間に、システムによって自動的に『相殺(カウンター)』として発動されている!
まるで、ゲームのチート対策プログラムのようだ!
「分かった!敵の能力は、『修正者』の能力使用時に発動する、世界のシステムの『セキュリティバグ』**だ!」
凛が驚愕の声を上げた。「セキュリティバグ…!?そんなの、ありえるの!?」
「関係ない!バグには法則がある!咲耶!ひかり!」
俺は、インカムに渾身の力を込めて叫んだ。
「能力を**『最大出力の70%』**に抑えろ!能力の閾値(リミッター)を越えるな!70%以下なら、敵のカウンターは発動しないはずだ!」
<h4>3.絶体絶命の逆転劇</h4>
俺の、根拠のない、しかし**「デバッガー」**としての直感に基づく指示。
咲耶は、一瞬の沈黙の後、信頼を込めた声で応じた。
「…佐倉悠斗。あなたの指示を信じるわ」
咲耶は、身体を震わせながら立ち上がり、再び**『フリーズ』を発動する。今度は、周囲の空気は、前ほど極端には冷え込まない。だが、歪みの周辺が、緩やかに『安定』**し始めた。
ひかりも、立ち上がった。
「70%!このくらいなら、まだ動けるよ!」
ひかりは、**『ブースト』を発動。しかし、その加速は前回の爆発的なスピードではなく、人間がギリギリ追えるほどの『最適化された速度』**だった。
案の定、敵の異能者は、再び青い光を放った。
しかし、その光は、咲耶とひかりの身体の直前で、霧散した。カウンターが発動しなかったのだ!
「な…に…!?」敵の異能者が動揺する声が、風に乗って聞こえた。
「今よ、ひかり!」
「うん!」
ひかりは、最適化された速度で敵のビルへと突撃。その拳は、70%の出力とは思えないほど、正確かつ鋭利だった。
ドォン!
二人の敵性異能者は、何の抵抗もできず、ひかりの拳で一瞬にして戦闘不能に陥った。
【Enemy Anti-Fixer Ability: Deactivated】
俺の視界の警告ウィンドウが、全ての危険を解除したことを告げた。空間の歪みも、咲耶の安定化のおかげで、徐々に収束に向かっている。
「…成功よ」
咲耶が、静かに、しかし力強くインカムで告げた。
俺の身体から、全身の力が抜けていく。初めての、命の危機に晒された絶体絶命のミッション。
だが、俺は、美少女たちを救い、世界を守った。**『デバッガー』**としての俺の真価が、初めて発揮された瞬間だった。
凛は、興奮した面持ちで俺を振り返る。
「佐倉君…あなたは本当に**『デバッガー』なのね。この世界の『隠されたルール(裏コード)』**を、一瞬で読み取った…」
俺は、その言葉を聞きながら、一つの確信を得た。
俺の『デバッガー』としての能力は、ただの**「バグの検知」**ではない。
この世界のシステムそのものに隠された、『法則』を読み解く能力なのだ。
—―第7話 完—―
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