第2話 白タキシードの男

ぱちっ。

目が覚めた、時間は───、朝10時。

「んん・・・、ん?」

ベッドが広い。見ると白タキシードのバディは腰にタオルを巻き最新型のデカいテレビモニターの前に仁王立ちで朝のニュースを観ていた。

「ねぇ、起きた?」

こちらを向かずともベッドの布団をもぞもぞと動いている事で起きたのかと言っている。

俺は、まだ寝ていたかった。

何だか起きたくないのでこのまま二度寝をしようと、そのまま眠る事にした。

「んん・・・、スー・・・」

「起きろ。」

目を開けると俺の顔の真ん前に俺より背の高いソイツの顔が。

「・・・まだ眠い。」

「ニュース、昨日の会場が映っていたぞ。それにしても派手にヘリまで飛んでるよ。」

昨日は夢中で走った、だからだ、眠い。

「ふーん。」

「ふーん。・・・じゃなくて何か感想とかあるだろ?ヘリで中継だぞ。」

「んー。あぁ、何か・・・あれだ。お前の事も聞いてなかったな。何でタキシード着てんの?つーか服着ろ。」

タキシードを着る時なんてあれだ、それ以外なんかで着る事ない。

「流行。」

「流行~?」

「ほら、起きて。俺もそっち行くから、どいたどいた。」

のしのしと俺の寝ている方をハイハイしながら踏んで跨いで『俺もフトン。』と、くるまっている布団を、べっ、と剥がれた。

「ちゃんと起きてくれたら話そう。」

仕方なく起きてキングサイズベッドに男二人座ると、如何せん妙な図だ。

「・・・事後みたいじゃん。」

「ほらガウンがはだけてるよ、」


昨日は何時に寝たっけな。色々と脳ミソの整理に疲れて、タキシードがシャワーして寝ろと言うしシャワーしたらすぐ寝たんだっけ....昼前くらいか?昼過ぎか。

んで朝の10時だろ....。

丸一日寝てる。


事後のような構図で昨日の事を思い返していた。

しかし案外スカッとしているもんだ。

俺は結構ビビりだ。友達は死んだナカバヤシくらい。陰キャ。それであんなのを見たんだ、

でも

ピロートークかのような隣のコイツが、俺の恐怖心をかっ拐った。

ビビりな俺が怖がる瞬間に現れるべくして現れたタキシード。

俺は運が良い。


「自己紹介をしよう。俺は見ての通りイケイケイケメンメンズ、モテモテで身長は君よりも背が高い。普段は白いタキシードを着ている。どうだ?」

得意そうにこちらに問う。

「・・・ウン。」

「名前はそうだな、新郎。」

コイツは本気で言ってるのか。

「タキシード着てるもんね。シンロー。」

俺は『良いんじゃない?』とコイツのプロフィールなど昨日からマンガのようなこの世界で半ばどーでも良くなった。

「俺は新郎、十九歳。お前の名前は?」

「・・・ロッカー。ロッカーに捨てられてたから」

俺のプロフィールも。

まぁ、ロッカーに捨てられていた、

それは本当の事だ。

「ロッカー、この世界ではハンドルネームで充分か。」

妙にしんみりするのやめてくれ。

「うん。」

俺はやる気無さそうに返答した。

「現実で起きそうもない事が起きている者同士共に生きよう。・・・いや、俺達はバディだ。」

「この国、お前の言う二十歳狩りとかホントに現実で起きてんだもんな。ヘリコプター飛んでたんだろニュース・・・起きそうもないよな・・・二十歳だけを狙った猟奇的な。」

頬をつねってみた。

痛かった。


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