私という存在の遺書

 小日向こひなたのようなあの人に恋してた。

 優しくて、ずっと寄り添ってくれて。

 目を見て、私を見て、愛してくれた。

「私」を見てくれた。


 私はきっと「愛してた」

 よりも、依存してた。頼ってた。独占してた。


 あれはきっと、愛じゃなかったんだ。

 今ならそう思える。

 どころを無理やり我儘わがままで埋めていただけ。


 きっと「愛」じゃなかった。「恋」だった」

 でも、きっとあなたは「愛」だった。

 だからきっと苦しめた。

 何度言ったってもう伝わらない、今更遅い「ごめんなさい」

 何十回、何百回目のごめんなさい。

 いつもすぐ謝って、叱られて。

 でも本当に謝るべきときにはもう遅かったんだよね。

 ごめんね。


 私は視野が狭いから、多くのことができないから、全部あなたに教えてもらった。


 優しさも、包容感も、歌も、遊戯ゆうぎも、クセも、方言さえも。

 知らない土地で、知らない趣味で。

 出会えなければ多くのことに盲目もうもくだったままなのだろう、と思う。


 たくさん世界を広げてくれた。

 たくさん選択肢を増やしてくれた。


 でも私は。私のせいで。

 一生の傷と後悔を植え付けた。


 私のせいで苦しむことになる。

 傍にいるべきなのはじゃないんだろうね。


 私じゃない誰かをあなたは選んだのだから。

 きっともう私の役目は終わった。


 私の幻影で苦しめることが申し訳なくて、

 でも、少し嬉しい。ずっと永遠に私の影を背負って生きていってほしい。


 あなたが一緒に幸せになるべき人と、幸せになって。

 でも、もしその席が…。


 八月六日

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