葉っぱの舟
ヤマシタ アキヒロ
葉っぱの舟
明るい所から暗い所へ
急に入ると目が眩み
しばらくは何も見えず
暗闇をさまよう人になる
熱いお湯から冷たい水へ
急に手をつけると
手がかじかみ
熱いのか冷たいのか
一瞬わからなくなる
ものごとには加減が必要である
しだいに昼が夕方になり
やがて夜になるような
変化には段階が必要である
しだいに夜が明け方になり
やがてまた昼になるような
ところがわれわれの前に
変化は突然やって来る
雷が
空に閃光を走らせるとき
なすすべもなく
われわれは茫然とする
広い視野から見れば
雷は突然ではなく
無数の自然現象の中の
よくある一つなのであるが
蟻のように小さなわれわれにとって
その変化はいかにも突然である
われわれはいかに
変化に適応すべきか
いかに洪水に流されず
一度しかない人生を
乗りきるべきか
本当の蟻ならば
一枚の葉っぱに乗って
いつまでもどこまでも
したたかにたくましく
生き延びるであろう
さすればわれわれも
小さな存在に徹し
葉っぱの舟に乗って
洪水をやり過ごすべきなのか
しかしわれわれにとって
葉っぱとはなんであろう
救いの舟が
いつかやって来るのか
もしくは見えていないだけで
すでに目の前にあるのか
その存在は
大きすぎて分からないのか
大きすぎて分からない
その存在を
神と呼ぶとすれば
神はすでにそこにいる
大きすぎて見えないだけで
本当は見えているのに
われわれがその存在を
見ようとしないだけで
大きすぎて見えない
葉っぱの舟は
愛の眼でしか
見ることはできない
(了)
葉っぱの舟 ヤマシタ アキヒロ @09063499480
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