第4話 石田加奈さんに告白しました
今日は夕方から雨だ。
人生はそれなりにいいものかもしれないと思っていたが甘かった。
何もしなければ人生の輪は消える。自分はそれをちゃんと抱えきれずうろうろしていた。
彼女の行く末が気になって仕方ない。
彼女の本当の意見、本当の意思表示を詰め寄って確かめたい。だが聞いたりしたらきっと動揺する。傷つける。プライベートで赤の他人が立ち入ることではない。
オヤジに対する義理、西川さんに対する無礼。職も失うかもしれぬ。
だが迷いの焦りの本質はそこにはないのだ。
伝えないともう仕方ない。
そろそろ水星や木星が姿をあらわすが雨で見えない。無視しようとすればするほどかえって探し始めてる。
週があけたら彼女はいなくなる。
ちゃんと呼び出して話をしないといけない。問題は自分のこの苦しさなのだ。
明け方になってしまった。出勤の時間。彼女が疲れた俺の顔を見て「寝ていないのか」と心配した。
その日の帰り際、「あした、最後に二人で話したい。」と書いたメモ紙を渡した。
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土曜
朝ブーツを取り出してきちんと履き、きちんと歩きだした。
神田学士会館でのちゃんとした春巻きランチの席。他愛ない話。いつもの楽しい話。そして食べ終わって話を切り出す。もう辛くなる。
「よう、石田」
「はい。」
「本当にあの知らない人と結婚するのかい?」
「はい。」
「それでいいの?」
「何がですか?」
「いや、その親、じゃない、親戚とかしがらみの決めた事でさ。」
「いけませんか?」と妙にその時だけは厳しい顔をして言った。
俺は一瞬で悟った。家はやはり血のつながっていない家族なのだ。裏切る事は彼女にはできないのだ。それが一瞬で伝わった。俺にはなんの余地も最初から無かった。
彼女が持ち歩いているズタ袋。彼女の唯一の家財道具。おそらく肉親の形見。
「ああそれを他人に渡してはいけないよ」と言った
「それがそういう星回りだとかってそうすべきじゃない」
自分はもう自分で自分でなにを言ってるかも分からなくなる。
「加奈ちゃんのことが好きだ。こっちでずっと暮らしてほしい」
彼女は突然の事に身を固くした。
だがすぐ首を振った。
「そんな事は聞けません。」
自分は石田を送った。一緒に下宿まで戻る。二人とも無言だった。
「あなたに助けてもらって一緒にいてもらって感謝している。一生の思い出にする。」
と最後に言われた。
自分はそこですべて永遠に断絶されてしまった。また外へ出た。
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