労働の煌めきを君に

 俺の名前は高竹光立たかたけひかる。あだ名はタケミツ。


 想い人、野々宮夜昼ののみやよるさん、ヨルさんから「あんた気持ち悪いのよ」と言われた高校二年生だ。


 今は彼女に相応しい男になるべく日々努力しているんだ。


 高校生になって少し勉強して気がついたのは、この世界では一人前になって働くのが一般的なようだ。


 学校の先生も、バスの運転手さんも、悪の組織の戦闘員も。


 世のため人のため日夜働いている。


 そう思うと頭が下がるよね。


 ね、いずれ自分もそうなると思うと憂鬱で頭も下がるというものさ。


 少し前の俺もそうだった。だが今は違う。


 ヨルさんに出会ってから俺は考えを改めたんだ。


 彼女のために働けると考えればどんな仕事でも進んでやれる。


 その日のために俺は努力を続けるんだ!


 そんなことを考えているときに気がついた。


 俺はやりたい仕事がないと。


 俺はキッザニアに行き子どもたちと戯れ幼稚園の先生となった。


 園児達のなりたい職業が公務員という言葉に衝撃を受けたときに本来の目的を思い出して夢を語ることにした。


「君たちには無限の可能性がある!」


 そんなとき彼女が声をあげた。


 カキツバタ組のツバキちゃん。


「私を先生のお嫁さんにしてくれる?」


 俺は可愛らしいその夢を叶えてやることができなかった。


 すまない、俺には心に決めた人がいるんだ。


 君にはもっと相応しい相手がいると思うぜ。


 そう……、おっと。これは彼との秘密だった。


 ともかく君のことを思っている人がいるということさ。


 俺を見つめるツバキちゃんを置いてカキツバタ組をあとにする。


 ブナ組の前を通ったときにユウキ君にエールを送っておいた。


 将来の夢が公務員な君ならツバキちゃんに似合うと思うぜ。


 新しい勇者の波動を捉えて幼稚園にやってきた白い羽の君を追い返してから俺は帰宅した。




 園児達の淡い恋を見ていて気がついた。


 俺は恋愛を知らないと。


 俺は恋愛小説を読み鏡子と本屋に行きオススメされたBL本を読んだ。


 相変わらず闇討ちしてきた格闘技のライバルを打ち倒し、胸ぐらを掴んでこう言った。


「これでお前は俺の物だ」


 人気のない路地裏で見つめ合う格闘技のライバルと俺。


 格闘技のライバルが顔を赤めて視線を反らせたとき本来の目的を思い出してその手を離した。


 すまない、これのどこが恋愛なんだ。俺とお前の関係はそんな軽いものじゃないだろう?


 その場にへたり込む格闘技のライバルに俺はこう言った。


「お前の拳が俺に届く日を待っている」


 俺は高らかに拳をあげながら頬を染めて俺達の様子を見ていた鏡子と一緒に帰宅した。


 鏡子、ところでBLってなんの略なんだ?


「バトルラブですよ」


 なるほど。




 新しい恋愛の形を見て気がついた。


 俺はヨルさんにもっと向き合うべきだと。


 俺はヨルさんの友達と友達になり親交を深め彼女の友達とデートに行くことになった。


 ヨルさんの友達のトモヨ。


 トモヨと水族館に行き食事を楽しみ海沿いの公園で夕日を見ているときに本来の目的を思い出して彼女の顔を見た。


「ヨルのことは諦めて私と付き合って」


 俺は目を閉じてその告白を断った。


 すまない、俺はヨルさんが好きなんだ。


 俺みたいに不器用な男と一緒にいちゃいけない。


 俺達は友達でいよう。


 俺は彼女の目から流れた涙をすくい夕日に向かって弾いた。


 夕日を背に彼女との思い出を心に刻んで俺は帰宅した。




 幼稚園の子どもたちと交流しBLバトルラブについての知識を深めヨルさんの友達とも友達になった俺はヨルさんに会いに行くことにした。


 少し遅れてしまった。


 俺は小走りで待ち合わせ場所に向かう。


 緊張するな。


 今日は何の話をしようか。


 ヨルさんはBLバトルラブについて知っているだろうか。


 鏡子にはやめたほうがいいと言われたけど気になるな。


 そんなことを悩みながら走っていると待ち合わせ場所にいるヨルさんが見えた。


 俺は走りながら声をかけた。


「お待たせ! ヨルさんはBLバトルラブって知ってるかな?」


「……何それ?」


「男同士が拳で殴り合って愛を語るジャンルだよ」


「私の趣味じゃないわ。あんたはそういうのが好きなの?」


「俺が好きなのはヨルさんだけだよ」


「気持ち悪い」


 ヨルさんはそう言うと去って行った。


 今日はヨルさんとたくさんお話できたな。


 未知のジャンルにも手を出してみるべきだな。


 俺の新しい道が開けるかもしれない。


 そんなことに気づかせてくれるなんて、やっぱり僕の初恋は最高だ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る