知識を問う時の流れを君に

 俺の名前は高竹光立たかたけひかる。あだ名はタケミツ。


 想い人、野々宮夜昼ののみやよるさん、ヨルさんから「あんた気持ち悪いのよ」と言われた高校二年生だ。


 今は彼女に相応しい男になるべく日々努力しているんだ。


 時間というのは概念であって、物質や現象の変化を総称したものだ。


 よって時間という現象が存在するわけではない。


 現代社会は時間に支配されているとはいうけども支配されているのは人間の精神であって、と、なんでこんな話をしているかというと今俺には時間がないからだ。


 どういうことかと言うと学校に着いて着席したときに気がついた。


 今日は期末試験日だと。


 俺は難問に挑み鉛筆を転がし赤点を取った。


 全教科赤点を取った俺は補習授業を受けることになった。


 彼女とはそこで出会った。


 同じく補修を受けるシュウコ。


 彼女も同じく全教科赤点で、「あ、そこに名前書くんだ」という言葉が印象的だった。


 俺は彼女と共に勉強し文字の教え一緒に東大を目指そうとしたところで本来の目的を思い出し補修試験を受けた。


 二人とも全教科合格。


 感極まったシュウコが俺に抱きついてこう言った。


「あたしら付き合っちゃう?」


 俺はその誘いを断った。


 すまない、俺には心に決めた人がいるんだ。


 だが君と過ごしたこの時間は悪くなかったぜ。


 君の今の実力なら中学受験くらいなら行けるはずさ。


 でも試験の問題が固定だからって回答を丸暗記して受けるのはやめたほうがいいと思うぜ。


 俺は待っていてくれた鏡子と一緒に帰宅した。




 テストで赤点を取って気がついた。


 ちゃんと勉強するべきだと。


 俺は教科書を読み教師に習い家庭教師として勉強を教えた。


 双子中学生のヤマト君とタケル君の授業をしているときに本来の目的を思い出して俺の悩みを打ち明けた。


「先生はさ、焦り過ぎだよ」

「そうそう、悠々閑々ゆうゆうかんかんだよ」


 なるほど、焦りすぎか


 すまない、俺はまだまだ未熟なようだ。君たちに物を教える立場には無いな。


「先生は極端だよね」

「そうそう、過不及かふきゅうだよ」


 タケル君は難しい言葉を知っているな。俺なんかよりも教師に向いているぜ。


「タケルは知った言葉を使いたいだけだよ」

「そうそう驕慢方言きょうまんほうげんだよ」

「違くない?」


 息の合った兄弟に別れを告げ、白い羽の君と野良ディベーダーが連れてきた首が9つあるヘビを退治してから帰宅した。




 タケル君に己の無学さを痛感させられたところで気がついた。


 家庭教師に相応しい知識を身につけるべきだと。


 俺は勉強に励み家庭教師たちをなぎ倒し最強の家庭教師に挑戦した。


 激しいバトルの末お互いが最後の一撃を繰り出したところで本来の目的を思い出して俺が勝った。


 最強の称号を得た俺だがなんだか寂しかった。


 すまない、こんな肩書に何の意味があるというんだ?


「ふっ……、それが勝者の孤独さ」


 地に伏す元最強の家庭教師のつぶやきを聞きながら俺は歩き始めた。


 そうさ、こんな所に留まっている訳にはいかない。


 俺はまた次の中間試験に向けて走り始めたばかりだ。


 元最強の家庭教師が家庭教師ディベーダーとして俺の前に立ちはだかるのはまだ先の話だ。




 赤点を取り家庭教師になり最強の家庭教師になった俺はヨルさんに会いに行くことにした。


 補習授業で会えない時間が長かったから久しぶりだ。


 一週間くらいかな。


 永遠みたいな時間だ。


 俺の顔を忘れてなければいいんだけど。


 自慢じゃないが俺はヨルさんの顔なら目をつぶっていても絵が描けるほど記憶している。


 褒めて。


 彼女のことならいくら勉強しても足りないくらいさ。


 そんなことを考えていたら待ち合わせ場所に着いた。


 ヨルさんは見えない。


 俺はそのまま待つことにした。


 すると横から声がかかった。


「あんた何してんの?」


 あ、目をつぶったままだった。


「ごめん、君のことを思い出していたらつい」


「気持ち悪い」


 ヨルさんは去ってしまった。


 よかった。ちゃんと顔を覚えていてくれたようだ。


 目をつぶっていてもわかるなんてスマホの認証よりも凄いじゃないか。


 やっぱりヨルさんは凄い。


 僕の初恋は最高だぜ!

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