#2
「ひーろーむー!おっはよーさんっ!」
「ぬぉわぁ!?!!」
登校時。学園への道すがら。背後から声をかけられて俺は思わずケツを抑えて変な叫び声をあげなかまら全力で振り返った。
振り返るとそこには親友である暮林彩火がキョトンとした表情で立っていた。
「お、おう⋯⋯どうしたの?急に変な声出して⋯⋯」
「お、おおおお俺の、はっ、背後で立つんじゃねぇ!?」
「は?急に何それ」
「あっ、いや、これは、その⋯⋯」
しどろもどろ。
彩火を見るとどうしても昨日見た夢ーー彩火に後ろから攻められて汚ぇオホ声を出しながら情けない表情になっている俺の姿がフラッシュバックしてしまう。
落ち着け俺⋯⋯アレは夢。夢だから⋯⋯。
こうして登校中に彩火と出くわすなんてことはよくあることだ。なんの不思議もない。
毎度毎度、彩火は何故か俺の背後から声をかけてくるが、そこには何の他意もないのだ。
「もしかして啓夢⋯⋯どっか体調悪いの?」
今更ながら自己紹介。
俺の名前は
「あっ、いや、そんなワケじゃないんだけど⋯⋯アレよ!アレ!ちょっと考え事してて急に声かけられたからビックリしただけよ⋯⋯!」
「ふーん⋯⋯そう?」
「そうそう!」
「まあ、それならいっか。でも体調悪いならちゃんといいなよ?啓夢に倒れられたりしたら僕、嫌だからね」
「大丈夫大丈夫!俺、これまで風邪とかひいたことないし!」
「ふふっ。そうだよね。バカは風邪引かないって言うしね!」
「そ、そうそう!俺バカだから風邪引かないって!誰がバカだよコノヤロー!は、はははっ」
とりあえず、いつもの感じのノリで笑って誤魔化す方向。
俺、今、上手く笑えてるかな?
「⋯⋯⋯⋯やっぱり啓夢なんか今日おかしくないかな?」
彩火は何処か訝しんだ様子で俺を見てくる。
ふむ。どうやら俺は上手く笑えてなかったようである。
「そんなことない!そんなことない!ドコモオカシクナイヨー!」
「いや、やっぱり今日の啓夢どこかおかしいね?本当はなんかあったんじゃないの?」
「ソンナコトナイヨ!オカシクナイヨ!」
「いやどう見てもおかしいんだけど?なんかカタコトになってるし」
「そ、ソンナコトヨリ!なんか今日は凄い良い天気ダネ!」
「何処からどう見ても今日は曇りだよね?何がいい天気なの?」
本日、今にも降り出しそうな曇り空。
ふっ⋯⋯話題の振り方を完全にミスったぜ!
諸々、下手くそ過ぎるだろ俺!ポンコツかよ!やかましゃ!誰がポンコツじゃ!
「まさかとは思うけど⋯⋯僕に何か隠し事とかじゃあ、無いよね?」
スっと俺を見つめる彩火の瞳から色が消えた。
それを見て背筋が震える。
「か、隠し事⋯⋯?そ、そそそ、そんなのあるわけないじゃん?俺と彩火は親友だろ?お、お互い隠し事は無しって言ったじゃん?それで隠し事なんてあるわけないよなー!?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯啓夢は分かりやすいね」
「ーーッ!?」
ガシリっと彩火が肩を組んできた。
ビクゥッ!と身体が大きく震えて、ケツがとてもソワソワし始める。
否応無しに思い起こされる夢の記憶。
硬直する身体と無意識に俺はケツ穴に力を込めて引き締める。
「ねえ⋯⋯啓夢」
「ふぁ、ふぁい⋯⋯!?」
肩を組んだ状態からグッと彩火は俺の顔を覗き込んでくる。
彩火の中性的なイケメン美少年フェイスが目前まで迫り来る。
至近距離になって改めて思うが、やっぱりコイツちょっと良い匂いしやがる。
あらぬ想像が脳裏を過ぎるが、それはイクナイ!と必死に振り払った。
「僕達は親友だよね?お互い隠し事は無しって言ったよね?でも、啓夢は何か僕に言えないことがあるーーそうだよね?」
「しょ、しょんなことないでしゅ⋯⋯」
「嘘。今、嘘ついたね。啓夢は今、親友である僕に嘘ついたね?」
「あばばばばば⋯⋯!」
「啓夢⋯⋯今なら。まだ。許してあげるよ。今ならまだ。間に合う。嘘つきました。ごめんなさい。すれば、まだ。許してあげる。今後二度と僕に嘘はつかないって約束したら。今なら。まだ。今なら。許してあげるよ?それでまだ。僕と啓夢は親友のままだ。僕は。これから先。ずっと。死ぬまで一生。啓夢と親友のままで有り続けたいと思ってるよ。啓夢は、どうかな?」
「そ、それは⋯⋯俺も、彩火とは親友で居たいと思って、ます⋯⋯」
「そうだよね?そうだよね?それなら啓夢はどうすればいいか分かるよね?」
「はひっ⋯⋯。今、僕は嘘つきました⋯⋯ごめんなさい⋯⋯」
「ごめんなさい言えて偉いね啓夢。そうだね。そんな素直な啓夢が僕は大好きだよ。それでこそ僕のこの世でたった一人のだけの親友だ」
「うひっ⋯⋯」
「で?それで?啓夢。それで?僕に何を隠そうとしたのかな?それをちゃんと話さないと。そうだよね?いけないよね?親友なんだから。ちゃんと話してね?」
彩火相手にはどうやら隠し事は出来そうにない⋯⋯。
話さなくてならんのか⋯⋯あの、夢のことを。
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