カラスの目

野崎渚

カラス

 おかしな話だと思うかもしれないが、私は彼が好きなのだ。彼というのは、人ではなくて、日常に交じっている生物、カラスだ。

 カラスはこの世の生物の中で、特に魅惑的な生き物だ。神話にも登場したカラスは、今やどこにでもいる。その揺れる黒の羽根一つ一つは、私の目には星のように輝かしく映っている。煌めいているその丸い瞳には、全てを見つめているかのように都会の景色が映っている。田舎のカラスには、きっと緑が映っているのだろう。美しい外見とは違い、声はしゃがれている。そこがまた美しく、心地良いのだ。

 魅力はそこだけではない。羽根一つ一つ、繊細な作りになっているのだ。大きさも形も全て違って、どれも芸術品のように美しい。

 それから私は彼らの羽根を収集しているのだが、その様子をカラスたちに見られてしまうと、しばらく姿を表さなくなってしまう。これはきっと、一種の会話なのだろうと思う。空を見上げれば黒い彼らが今日も存在している。その現実が、私にとって日々の幸福である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カラスの目 野崎渚 @nozaki_nagisa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る