②お子様探偵ソランちゃんのじけんぼ
第1話
プロンプト:
以下の1〜4話のミステリの出題編を読んで、その解決編の5話を書いて。
――――――――――――――――――――
XX県の郊外。ショッピングセンター内の百円ショップ――
「……
「……死体が発見された直後、偶然近くを
「……店内監視カメラには、死体発見直前に被害者が倒れていた店内通路から出てくる、不審な人物の映像が残っていました。店の商品の帽子とサングラスで変装していましたが、確保した客の中に背格好が一致する人物が……」
図書館のように、碁盤の目状に縦横に並べられた無数の棚。ただでさえ狭いそんな店内が、大量の無骨な制服姿の警官たちが入っていることによって、今はさらに窮屈になっていた。
「……現在、その容疑者も含めた関係者全員の身体検査と店内の調査を同時に進めています。いまだに凶器は見つかっていませんが、それも時間の問題かと……」
「ふむふむ。なるほどー……」
そんなふうに、事件現場を一通り調べ終えた鑑識や警官たちからの報告を聞いているのは、捜査一課の叩き上げ刑事……ではなく。
自身も所轄署の巡査――つまり下っ端のお巡りさん――に過ぎない、若手女性警察官の
彼女は実は、現場を管理する県警本部の警部から別の「特殊任務」を与えられていたのだが……そんな「小さな仕事」よりも目の前の殺人事件の捜査の方に興味があったので、本当の刑事に報告されている捜査情報を盗み聞きしていたのだった。
(被害者は刺殺……。凶器は見つかっていない……。まさか、まだ犯人が持っているとは思えないから、きっと店内のどこかに隠したんだよね……。でも、どこに……?)
「……ねえ」
(お客もいる平日昼間の百均の店内で殺人なんて、普通は絶対にしない……。でもだからこそ……。あえてお客が少ない時間帯を狙っているらしいことや、監視カメラの位置も把握してるっぽいことを考えると、これはきっと計画的な犯行……。犯人は、捕まらないように何らかの偽装工作をしているかもしれない……。だとしたら、そう簡単に凶器が見つかるとは……)
「……ねえ」
(きっとこの事件は、「消えた凶器の行方」が鍵になる……。まずは、今行われている店内の商品の調査結果を聞いて、それで……)
「ねえってば!」
「う……」
調子良く頭の中で推理を進めていたアヤカは、そこで思考を邪魔される。声のした方をみると、彼女の警察制服の紺のズボンを引っ張っている少女に気づいた。いや……少女というより、幼女と言ったほうが正確かもしれない。
「え、えーっとぉ……
言音ソラン。
近所の幼稚園に通っているという、五歳の幼女。
まだ警察学校を卒業して間もない、二十代前半のアヤカの子供ではない。親戚の子でもない。
この百円ショップで起きた殺人事件。そのときに、不幸にもそこに居合わせてしまっただけの、無関係な一般人だった。
「たしか……今日はここで、パパを待ってたんだよね? パパ、まだ来ないのかなー?」
「……お菓子、買って」
「五歳だから、幼稚園の年長さんだよねー? いま、幼稚園って何が流行ってるのー? アイカツ?」
「……買って。お菓子」
「う……」
アヤカは、子供が苦手だった。
理屈が通用しなくて、話が出来ない。何を考えているのか理解出来ない。それが、恐ろしいとさえ思っていた。
そんな、自分にとって怪物のような存在である子供を、女性というだけで「親が来るまで世話をしておけ」と言われた。それが、今アヤカに与えられていた「特殊任務」だった。
「お、お菓子? え、えーっと……でも、今、みんなで商品の棚卸し……数とかを調べてるところだから……。ただのお菓子でも、勝手に取っちゃうと怒られちゃうから……」
「……う、うう」
「あ、ちょ、な、泣かないで⁉」
「……う、ううぅぅ」
「あ、あとで、買ってあげるから! みんなが調べ終わったら、このお店のお菓子、どれでも買ってあげるからー!」
「なら、いい」
「はぁっ⁉」
演技かよ⁉
あああ、可愛くない! やっぱり私、子供苦手だー!
改めて、そんな気持ちを再確認してしまう、アヤカだった。
それから、約一時間後。
いまだに現れないソランの保護者に殺意すら持ち始めていたアヤカは、店内の調査が終了したという報告とともに、こんな新情報を盗み聞くことになった。
「……店内の商品や関係者の持ち物はもちろん、バックヤード、店舗周辺まで全て調べましたが……凶器として使われた形跡のあるものは、一切見つかりませんでした。凶器の刃物が、忽然と消えてしまったのです……」
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