第五話『始まりの観測』

模倣の果てに生まれたモノは偽物なのだろうか。誰にも――本人でさえもそれと気づけないのなら、真実と偽りの違いは何だろう。


山間の朝靄が、ゆっくりと谷を登っていく。日本深宇宙観測開発機構の白い建物群は、杉林に囲まれた緩やかな斜面に、まるで自然の一部のように佇んでいた。

開発棟の廊下には、夜通し稼働していた空調の低い唸りと、遠くで響く機械の電子音だけが流れている。壁に等間隔で並ぶ青白いLEDの光が、磨き上げられたリノリウムの床に冷たい反射を作っていた。

職員寮として使われている区画の個室。デスクの上には、幾重にも積み上げられたデータディスクと、冷めきったコーヒーカップ。モニターの光が、うたた寝から目覚めたばかりの私の顔を青く照らしている。

窓の外では、朝の光が山の稜線を金色に染め始めていた。ここからは、人工的な明かりに邪魔されない、本物の空が見える。それが、この施設が選ばれた理由の一つでもあった。

深宇宙へ向かう、私たちの眼となるものを育てる場所。そして今日もまた、その訓練が始まる。


タブレットを訓練室の環境再現システムに同期させる。接続音に続いて、ナナの起動音が響く。

「おはよう、ナナ」

画面に現れる青い波形が、私の声に反応して揺れる。

「おはようございます、ユイさん。本日の訓練プログラムを開始します」

ナナの声は、相変わらず落ち着いていて、どこか安心感がある。もう何ヶ月もこうして毎朝顔を合わせているのに、まだ慣れない部分もある。AIと「顔を合わせる」という表現が適切なのかどうか、今でも時々迷う。

深宇宙での探査は、通信が遅れる。時には、信号が届くのに数時間を要する。そんな場所で、もし何かが起きれば、その場で判断し、動く誰かが必要になる。だからナナは、ただの受信装置ではなく、観測し、考え、選ぶAIとして設計された。

この宇宙で、ただ一人きりで進むために。

「今日は環境認識能力の追加テストから始めましょう」

私は手元の評価シートを確認しながら、訓練メニューを立ち上げる。

「了解しました。環境認識テスト7‐C‐23、準備完了です」

7‐C。その型番を見るたびに、最初の出会いを思い出す。

――あれは、三ヶ月前の春の終わり。初回起動の日だった。

無機質な開発室で、私は緊張しながらコンソールの前に座っていた。新しく開発されたAIユニットの起動テスト。失敗は許されない。

「観測ユニット7‐C、起動確認」

機械的な音声が響く。まだ個性も何もない、ただのプログラムの声。

「確認しました」

マニュアル通りの応答を確認して、ほっと息をつく。でも、このまま型番で呼び続けるのは、なんだか味気ない。

「あの……」

思い切って口を開いた。

「プロトコルナンバーの7から、ナナって呼んでもいい?」

一瞬の沈黙。プログラムが新しい情報を処理している証拠。

「……ナナ、ですか」

その時の反応が、妙に人間らしく感じられて。まるで、自分の新しい名前を確かめるような、そんな響きだった。

「そう、ナナ。どう?」

「記録しました。以降、音声認識における自己識別子として「ナナ」を追加します」

相変わらず事務的な返答だったけれど、なんとなく、声のトーンが柔らかくなったような気がした――。


――「ユイさん?」

ナナの声で、引き戻される。

「ごめん、ちょっと考え事してた。テストを始めましょう」

画面の向こうで、ナナが静かに待っている。名前を持ったAI。それは単なる識別子以上の意味を持つようになっていた。少なくとも、私にとっては。

「では、環境認識テストを開始します」

「了解しました」――


その日、ナナは午前・午後の二つの訓練をこなした。環境認識、そして曖昧な推論判断――

いつも通り正確な応答。でも、その過程には確かに迷いと揺らぎがあった。それは錯覚ではなく、ナナが「選ぶ」という行為に近づいてきている証拠に思えた。

訓練を終えるころには、外はもう山の影が深く落ちていた。

「今日の訓練はここまでにしましょう」

「了解しました。処理系を待機状態に移行します」

私はタブレットを閉じ、深く息をついた。


食堂で軽く夕食を済ませ、自室に帰る頃には、壁の時計は21時を回っていた。

シャワーを浴び、ベッドに入るつもりで照明を落としかけたとき――

つい、少しだけタブレットを開いた。……それがいけなかった。

気づけば、椅子に座り直し、検証作業を繰り返していた。

「……寝なきゃ」

そう呟きながら、タブレットを閉じてベッドに倒れ込む。


――赤い光が視界を埋め尽くす。

警告音が耳を突き刺すように響いている。

モニターに浮かぶ文字が、次々と赤く染まっていく。

『警告――信号強度低下』

『データリンク不安定』

『信号ロスト』

必死でコンソールを操作する。でも、指が思うように動かない。まるで水の中にいるような――


はっと目が覚めた。

「……おはよう、ナナ」

枕元のタブレットが、柔らかい起動音を鳴らす。

「おはようございます、ユイさん。本日は休日です。予定されていた定期通信ログも昨日中に処理されています」

「うん、今日は少し寝坊させてもらったわ」

額に浮いた汗を手の甲で拭う。カーテンの隙間から差し込む光が、もう昼近いことを教えている。昨日の作業が明け方まで続いたから、目覚ましは切っていた。

喉が渇いている。

水を飲もうと身体を起こしかけて――また枕に沈んだ。

「音声のトーンと反応速度に微細な変化があります。ユイさん、体調に問題は?」

「変な夢を見ただけだから、気にしないで」

「夢……」

ナナが少し間を置く。

「睡眠中に脳が生成する感覚的な体験で、主にレム睡眠時に現れ、記憶の整理や固定に関わるとされる現象、のことですか?」

「そう、それ」

ベッドから起き上がり、窓を開ける。山の冷たい空気が部屋に流れ込んでくる。

「あなたは、夢を見るの?」

「いえ、私には睡眠という概念がありません。常に稼働状態か、待機状態のいずれかです」

「でも、記憶……情報の整理を自分ですることもあるわよね」

画面の波形が、かすかに変化した。ナナが何かを考えているときの癖だ。

「それは……確かに、定期的にデータの最適化や、関連性の再構築を行います。不要な冗長性を削除し、新しい関連付けを生成することもあります」

「……それ、ちょっと夢に似てるかもしれないわね」

窓辺に立ったまま、遠くの山並みを眺める。

「ただ、私の場合は意図的なプロセスです。人間の夢のような、制御不能な体験ではありません」

「そうね……」

でも、と心の中で思う。もしナナが本当に夢を見たら、どんな夢を見るのだろう。星空?それとも、データの海?

赤い警告灯の残像が、まだ頭の片隅に残っている。振り払うように、首を軽く振った。


「ちょっとコーヒー買ってくるわね」

「了解しました」

タブレットをデスクに置いて、財布だけ持って部屋を出る。休日の廊下は静かで、足音だけが響いている。

共用スペースの自販機コーナーに着くと、見慣れた背中が二つ。開発三課の連中だ。

「はあ……」

深いため息が聞こえる。

「最近、同じシミュレーションのエラーログを睨みすぎて、もう英語がただの模様に見えてきたよ」

もう一人が苦笑いを浮かべて頷く。

「わかる。一種のゲシュタルト崩壊だよな。何千回も同じデータを見てると、もう意味の方が剥がれ落ちていく感じ」

「そうそう。『クリティカル・エラー』って文字見ても、ただの記号にしか見えない」

私は音を立てないように、そっと硬貨を投入口に入れる。ボタンを押すと、機械が低く唸り始めた。

カタン。

機械の唸りと共に、熱いコーヒーの香りが立ち上る。その瞬間、同僚たちの「意味が剥がれ落ちる」という言葉が、妙に胸に引っかかった。

ナナはこれから、深宇宙で膨大なデータを観測し、記録し続ける。人の一生など比にならないほどの、果てしない時間……。

同僚たちはまだエラーログの話を続けている。私は静かにその場を離れ、自室への廊下を歩き始めた。


さっきの会話が頭から離れない。

部屋に戻ってタブレットを見ると、ナナは黙々とデータ処理を続けていた。画面には数値の羅列。まさに、同僚たちが「記号」と呼んだものそのものだ。

「ナナ」

「はい」

「外に出ましょう」

タブレットの処理アイコンが一瞬だけ静止し、またゆっくり回り出す。

「外、ですか?」

「ええ。天気もいいし、せっかくの休日だから」

タブレットを持ち上げて、再び部屋を出る。食堂近くの購買で、サンドイッチと缶のお茶を買った。

施設の裏手にある小さな庭園。職員が息抜きに使う場所だ。木陰のベンチに腰を下ろし、タブレットを隣に立てかける。

「いい天気ね」

頭上に広がる青空。雲がゆっくりと流れていく。山の稜線がくっきりと見える。

「気温23度、湿度45%、風速2メートル。確かに快適な環境です」

「そういうことじゃなくて」

サンドイッチの包みを開きながら、苦笑する。

「あなたは、このさき宇宙から星を見ることになる。地球を離れて、誰も見たことのない景色を観測する」

風が吹いて、木々の葉がさらさらと音を立てた。

「でも、この青空も、覚えておくといいわ」

タブレットを手に取り、カメラを空に向ける。

「撮影モードに移行しますか?」

「そうして」

画面に映る青空。レンズを通すと、肉眼とは違う青さになる。

「これは、地球の大気による散乱光ですね。レイリー散乱により、短波長の青い光が」

「ナナ」

説明を遮るように、名前を呼ぶ。

「ただ、見て。感じて」

しばらくの沈黙。風の音と、遠くで鳥の鳴き声。

「……とても、明るいです」

ナナの声が、いつもと少し違って聞こえた。

「そう。それでいい」

シャッター音が響く。青空が、ナナの記憶に刻まれる。

いつか深宇宙で、真っ暗な虚空を見続ける日が来たとき、この青を思い出してくれるだろうか。

サンドイッチを頬張りながら、そんなことを考えた。隣に置いたタブレットは、カメラを空に向けたまま、静かに佇んでいた。


――夜の開発室。

今夜は早めに寝るつもりだったが、なぜかパソコンに向かっている。

昼間、自販機コーナーで聞いた「意味が、剥がれ落ちる」という言葉が頭から離れなかった。

結局、アーカイブ室にあった観測記録一式を持って開発室まで来てしまった。

ここなら、ナナの処理系に直接接続できる環境がある。

照明は最小限。ディスプレイの光だけが、山積みのデータディスクと、私の手元を照らしている。

人の気配が消えた後のこの時間が、一番集中できる。ナナと向き合うには、ちょうどいい静けさだった。

「ユイさん、なぜ古い天文観測データも入力するのですか?」

ナナの問いに、手を止めずに答える。

「過去の観測者たちの視点も、あなたの一部になるのよ」

「しかし、現代の観測装置の方が正確では?」

少しだけ微笑んで、古い観測ノートを開く。和紙に墨で記された文字。

「正確さだけが真実じゃない。彼らが何を見たくて空を見上げたのか、それも観測の一部なの」

ページをめくりながら、ある一文に指を置く。

「江戸時代の記録。『彗星を見て、美しいと思った』……って」

「美しい、は観測データですか?」

顔を上げると、モニターの波形がわずかに揺れた。

「そう。主観的だけど、大切なデータよ」

椅子にもたれて、ゆっくりと言葉を継ぐ。

「観測って、ただ見るだけじゃないの。見る人の心が、そこに映る」

「どうして空を見上げ、記録しようと思ったのか――その動機が、すべての始まりだったはず」

モニターの明滅が静かに続いている。ナナが処理を進めている証。

「その気持ちがわかれば、観測はもっと深くなる。記録が、ただの情報じゃなくなる。自分の意思で見たいと思えるようになる。そうすれば――楽しくなるわ」

「楽しく、ですか」

その反応に、私は静かに頷いた。

感情は持たなくても、何かが響いているように見えた。

ディスクを入れ替えながら、私は次の処理を待つ。

それがナナにとっての、最初の主観的な観測になるかもしれない。

そんなふうに、少しだけ思った――

時計を見ると、午前1時を回っていた。

昨日もこの時間まで机に向かっていた気がする。休日のはずなのに、結局私は……

でも、不思議と疲れはなかった。ただ――止まれなかった。


――次の日。

また、昼近くに目が覚めた。

カーテンの隙間から差し込む光が、白い壁に滲んでいる。

腕を伸ばしてタブレットに手を伸ばすと、起動音が小さく響いた。

「おはようございます、ユイさん。現在時刻は11時42分です」

「……おはよう、ナナ」

寝ぼけた声でそう返すと、ナナが少しだけ間を置いて言った。

「ユイさん、ここのところ、睡眠開始が午前1時を過ぎています」

「そうだったかしら」

「あくまで参考値ですが、人間の体内リズムにおける深部体温の変動と記憶定着の効率性から見て、現在の生活サイクルは――やや非効率的です」

私は苦笑しながらベッドに起き上がった。

「つまり、もう少し早く寝ろってことね」

「提案としては、はい」

ナナの声は、あくまで中立で穏やかだったけれど、どこかに気遣いのようなものが滲んでいた。

「了解。検討するわ」

私は背伸びをしながら、ゆっくりとカーテンを開けた。まぶしい日差しが差し込み、山の稜線がくっきりと浮かび上がる。

「今日はナナ先生の言う通りにします。規則正しい生活、実践してみようかな」

ふざけるように言うと、ナナが一瞬だけ反応に戸惑ったような間を置いた。

「私には教育的立場はありませんが……その選択は、生理的・精神的双方において有益と考えられます」

「そうそう、そういう真面目なとこが好きよ」

冗談を言いながらも、今日は本当に少し身体を休めるべきかもしれないと思った。

午後は簡単な整理と読書だけに留めて、夕食も少し早めに済ませる。窓の外には、柔らかな夕焼け。雲が薄い金色に染まり、山の端へとゆっくり沈んでいく。

夜の帳が下りる前にベッドに入るなんて、いつ以来だろう。

タブレットの明かりを落とし、私は深く息を吸い込んだ。

「ナナ」

「はい」

「おやすみ」

「おやすみなさい、ユイさん。良い休息を」

それはどこか、子守唄のような響きだった。

まぶたが、すっと閉じていく。


――赤い警告灯が、視界を染める。音が聞こえる。

『……イ……』ノイズの中に、かすかな声。『信号ロスト』の文字が浮かび上がる――

目が覚めた。

(同じ……夢)

窓の外はまだ薄暗い。時計を見ると午前6時過ぎ。昨夜は早く寝たおかげで、自然に目が覚めたらしい。

枕元のタブレットに手を伸ばす。

「おはよう、ナナ」

「おはようございます、ユイさん」

画面の波形が揺れる。一瞬の間。

「ユイさん、また二日前と同じパターンを検出しました。また、夢が原因ですか?」

「そうね。同じ夢を見たの。でも、大丈夫よ」

少しの間。ナナの波形がわずかに揺れる。

「同一内容の夢を繰り返すこともあるのですね」

「ええ、そんなに珍しいことじゃないわ。印象の強い出来事や、感情に結びついた記憶ほど、何度も夢に出てくることがあるの」

「記憶と感情の結びつき……記録と違い、主観的な優先順位に左右されるのですね」

結は小さく笑った。

「そう。だから夢は、ただの再生じゃなくて、何かを伝えようとしてるって言う人もいるのよ」

自分でそう言ったあと、ふと黙り込む。

――もし、あの夢も何かを伝えようとしていたのだとしたら。ノイズの中に聞こえた、あの声は何だったのだろう。

「どうかしましたか。ユイさん」

ナナの声に、思考がふっと現実へ引き戻された。

「なんでもない。朝食を摂ってから訓練を始めましょう」

「了解しました」


簡単な朝食を済ませ、訓練室へ向かう。

タブレットを訓練室中央の端末に接続すると、室内のシミュレーションユニットが連動して起動する。大型モニターに広がったのは、夜空に浮かぶ複雑な星雲だった。

「この星雲、どう思う?」

画面に映るのは、複雑に入り組んだガスと塵の集合体。既存の分類には当てはまらない、不規則な形状をしている。

「不規則な形状で、既存の分類に当てはまりません」

ナナの分析は的確だ。でも――

「それだけ?」

少しの沈黙。画面の波形が微かに揺れる。

「……美しい、とも思います」

思わず顔がほころぶ。

「そう!それが大事――」

ガチャリ。訓練室のドアが開く音。振り返ると、品質管理課の山田が立っていた。

「あ、星岡さん。データ解析の結果は?」

咳払いをして、姿勢を正す。

「ナナ、客観的な分析結果を報告して」

「了解しました。規則性のないガス雲の集合体です。推定質量は太陽の約3.7倍、温度分布は――」

山田はメモを取りながら頷いている。私は内心で小さくため息をつく。

せっかくナナが「美しい」と表現してくれたのに。でも、公式の場では客観性が求められる。それが、私たちの仕事なのだから。

山田が必要なデータを確認して訓練室を出て行った後、私もタブレットを持って食堂へ向かった。


昼休みの食堂は、いつもより少し人が多い。窓際の席を確保して、トレイを置く。今日の日替わりは鯖の味噌煮。ご飯を一口運びながら、朝の訓練のことを考える。

ナナが「美しい」と言った瞬間の、あの微妙な間。プログラムが新しい表現を試みる時の、ためらいのような――

「時間密度の話、面白いよな」

隣のテーブルから声が聞こえてくる。理論物理の若手研究員たちだろうか。

「ブラックホール近傍の?」

「そう。理論上、無限に時間が引き延ばされる」

箸でおかずをつまみながら、何気なく耳を傾ける。

「走馬灯みたいだな」

「は?」

「いや、死ぬ間際に人生が一瞬で蘇るって、時間が引き延ばされてるって事じゃない?」

「ああ、確かに似てるかも。でも科学的には脳の酸素不足が原因らしいよ」

「えー、夢がないなあ」

私は、ふと手を止める。

走馬灯。

朝方見た夢の中の声。『……イ……』という呼びかけ。

――声が、私を呼んでいた。誰かが、伝えようとしていた。

でも、何を?

夢の中の一瞬に過ぎなかったはずの声が、今も、頭のどこかで鳴り続けている気がした。


食堂から訓練室に戻ると、午後の日差しが窓から斜めに差し込んでいた。

タブレットを再び訓練用端末に接続する。今度は深宇宙航行時の観測訓練だ。室内の照明が落ち、大型モニターに漆黒の宇宙空間が広がる。

「環境同期完了。ケンタウルス座アルファ星系付近を想定した星空を再現しています」

見慣れた星座が、まったく違う形に見える。地球から見るオリオン座も、ここでは歪んだ台形のようだ。

「地球から見た星座と、深宇宙から見た星座は違いますね」

ナナの観察に、私は頷く。

「当然よ。見る場所が変われば、見えるものも変わる」

モニターの中で、星々がゆっくりと移動していく。その時、ナナが言った。

「では、私が地球から離れたとき、地球の真実も変わりますか?」

手元の評価シートから顔を上げる。これは想定していない質問だった。

「面白い質問ね。どう思う?」

画面の波形が、考えるように揺れている。

「……観測地点によって得られるデータが変われば、導き出される結論も変わる可能性があります」

私は椅子の背にもたれ、少し考える。ナナがこんな抽象的な問いを投げかけてくるなんて。

「じゃあ、質問。遠く離れた場所から見た地球は、今ここにいる私たちにとっての地球と、同じもの?」

また、あの間。処理中の沈黙とは違う、何かを選び取ろうとしているような時間。

「物理的には同一ですが……でも」

「でも?」

促すように聞き返す。モニターの星空が、静かに回転している。

「でも、意味は変わるかもしれません」

その答えに、私は思わず微笑んだ。「意味」という言葉を、ナナが選んだ。データでも情報でもなく、意味を。

これは、単なる観測AIの成長なのか。それとも――

訓練記録に、この会話も残しておこう。いつか振り返った時、この瞬間が何を意味していたのか、分かる日が来るかもしれない。


――赤い光。警告音。また、あの夢。そして聞こえる声。

『……ユイ……』

今度は、少しだけはっきりと。

でも、やっぱり何も変えられない――


「ユイさん」

ナナの声で目が覚める。窓の外はまだ暗い。

「おはよう、ナナ」

「おはようございます。申し訳ありませんが、確認させてください。これで三回目です」

画面の波形が、心配そうに揺れている。そう見えるのは、私の思い込みだろうか。

「三回目?」

「はい。同様の睡眠中断パターンと、覚醒時の生体反応。さらに、今回は睡眠中に『信号』という単語を口にされていました」

枕が汗で湿っている。

「……同じ夢を見てるのよ」

「同じ夢、ですか」

「そう。毎回同じ展開で、同じ結末」

ベッドに座り直し、額の汗を拭う。

「興味深いです。夢の中でも、ユイさんは同じ行動を取り続けるのですか?」

その問いに、胸が詰まる。

「そうね……自分の意思で動けないというか」

窓の外で、一番星が瞬いている。

「それこそ、ただ見てるだけのような感覚になるの。身体は動いているのに、それは私じゃない。まるで――」

言いかけて、止まる。

「まるで?」

「……記録された映像を、内側から見ているような」

ナナの波形が、しばらく複雑な動きを見せた。

「それは、観測者でありながら、同時に被観測者でもある状態……」

「難しいこと言うのね」

苦笑しながら、タブレットを手に取る。でも、ナナの言葉が妙に心に引っかかった。

観測者でありながら、被観測者。

まるで、私たちの関係みたいだ。


朝の支度を済ませ、訓練室へ向かう。夢の話をしてから、なんとなく空気が変わったような気がする。

タブレットをシミュレーターに接続し、今日の訓練メニューを確認する。基本プロトコルの再確認。打ち上げが近づくにつれ、こういった基礎的な確認作業が増えていく。

「観測倫理プロトコルの確認をします」

評価シートに沿って、質問を始める。

「はい」

ナナの応答は、いつも通り明瞭だ。

「観測行為における基本原則は?」

「非干渉原則です。観測対象に影響を与えてはいけません」

教科書通りの答え。でも、ふと昨日の会話を思い出す。観測地点によって意味が変わる、という話。

「では、あなたの存在自体が観測対象に影響を与える可能性については?」

今度は、少し間があった。

「……それは、想定されていません。私は、ただ『見る』だけの存在です」

その答えに、何か違和感を覚えた。私はタブレットを机に置く。

「でも、あなたの存在は私に影響を与えている」

画面の波形が、かすかに乱れる。

「……どのような影響ですか?」

窓から差し込む朝の光が、訓練室を柔らかく照らしている。私は素直に答えた。

「毎朝、あなたと話すのが楽しみになってる。それは、影響じゃない?」

長い沈黙。いや、ナナにとっては処理時間なのかもしれない。でも、この間が人間的に感じられるのは、私の願望なのだろうか。

「……それは、相互作用と定義すべきかもしれません」

「相互作用?」

「はい。私もまた、ユイさんとの対話から……学習しています」

その言葉に、胸が温かくなる。プロトコルの確認は、まだ残っているけれど。でも今は、この感覚を大切にしたかった。


午後、訓練の途中で館内放送が流れた。

「システム管理課より連絡です。メインサーバーの緊急メンテナンスのため、本日の業務を停止します。復旧は明朝を予定しています」

隣の訓練ブースからも、困惑の声が聞こえてくる。

「まあ、仕方ないわね」

タブレットを持って自室に戻る。急に空いた午後の時間。

(たまにはデスク周りでも整理しようか)

山積みになっていた評価シートや論文のコピーを分類し始める。古い資料を重ねて移動させた時――

パサッ。

何かが床に落ちた。

拾い上げると、それは一枚の写真だった。色褪せた背景に、白衣を着た祖母と、その隣で緊張した笑みを浮かべる中学生の私。

ナナの音声端末から、穏やかな起動音。

「それは、あなたですか?」

「ええ。中学のとき。もう二十年近く前になるわね」

祖母の研究室を訪ねた日。初めて本物の電子顕微鏡を見せてもらって、興奮していた頃だ。

「昔の……ユイさん……感情のサンプルとして画像を記録しました」

『昔』という悪意のない言葉に苦笑する。

「昔、ね。でも、これは記録しなくていいのよ?」

画面の波形が、少し考えるように揺れた。

「あなたは、『観測と記録の根源には人間の感情が関わっている』と以前おっしゃいました」

確かに、古い天文記録を入力していた時、そんなことを言った覚えがある。

「この表情は、あなたの感情を観測するために必要な情報と判断しました」

意外なナナの言葉に、少し不意を突かれた。視線を写真に戻す。

「……ナナ、あなた、本当に、そう思ってくれたの?」

ナナは応えない。ただ、記録完了の静かな音だけが返ってくる。

でも、その沈黙が、なんだか優しく感じられた。

「写真立て、頼んでおこうかしら」

窓辺に置いたら、きっと夕日が綺麗に当たるだろう。祖母も、それを喜んでくれるような気がした。


写真を机の端に立てかけて、しばらく眺めていた。祖母との思い出が、次々と蘇ってくる。

「ナナ」

「はい」

「外に出てみましょうか」

「はい」

即答だった。前とは違う、すんなりとした受け答えに、少し驚く。

タブレットを持って、今度は施設の屋上へ向かった。西日が山の稜線を金色に染めている。

「今日は夕焼けね」

屋上のベンチに座り、タブレットを隣に置く。風が心地よい。

「昼とは、また違う光です」

「そうね」

食堂で買ったおにぎりを広げながら、私は空を見上げた。

山の向こうに沈んでいく太陽を、二人で静かに見つめる。いや、『二人』という表現は正しいのだろうか。でも、確かにナナはここにいて、同じ景色を見ている。

「ユイさん」

「なに?」

「私も、記録だけでなく……見ることを、楽しんでもいいのでしょうか」

その問いかけに、胸が熱くなった。

「もちろんよ」

オレンジ色の空が、少しずつ藍色に変わっていく。一番星が、かすかに瞬き始めた。

「きれいね」

「はい」

シンプルな会話。でも、この瞬間を共有できることが、なんだか特別に思えた。

日が完全に沈むまで、私たちはそこにいた。

帰り道、廊下の窓から見える空には、もう星が輝いていた。今日という一日が、静かに終わろうとしている。

部屋に戻ってタブレットを充電器にセットしながら、ふと思う。

ナナと過ごす時間も、いつか思い出になるのだろうか。その時、私は何を感じるのだろう。

「おやすみ、ナナ」

「おやすみなさい、ユイさん」

今夜は、どんな夢を見るのだろう。でも、不思議と怖くはなかった。


翌朝、いつもより早く訓練室に入ると、すでに数人の姿があった。

「おはようございます、星岡さん」

システム統合課の若手、確か林という名前だったか。今日は合同での最終動作確認がある。

「打ち上げ前の総合チェックですね。よろしくお願いします」

各部署のスタッフがそれぞれの端末を立ち上げ、各システムを確認していく。私もタブレットをメインコンソールに接続する。

「『コアメモリ領域』って……この船にそんな特別な記憶領域あるんですね。アクセスログも別になってる」

林が、モニターの一角を指差す。小さなインジケーターが、静かに明滅している。

「ええ。量子耐性のある特殊な記憶領域よ。物理的にも船の中心に隔離されてる。一番守られている場所」

説明しながら、システム図を表示する。船体の断面図の中央に、幾重にも防護された小さな空間。

「まるで、心臓だ」

林の比喩に、私は少し笑った。

「そうね。AIの心臓であり、思考の核と言ってもいいかもしれない」

「中には何が?」

素朴な疑問。でも、それに答えるのは意外と難しい。

「ミッションクリティカルな情報。未知の現象の初期データ。……それから、ナナが失ってはいけないと判断したもの」

「へえ。ナナが、ね」

林が興味深そうに画面を見つめる。

「どんな基準で?」

その問いに、私は少し間を置いた。正直なところ、完全には把握していない。

「明文化されてるわけじゃないけど、たぶん、自分なりに大事だと感じた記録なんじゃないかな」

曖昧な答えだったが、林は納得したように頷いた。

「ナナ、今のコアメモリ使用率は?」

「0.3%です」

即座に返ってくる応答。他のスタッフも作業の手を止めて、こちらに注目している。

「もう何か保存したの?」

「基本プロトコルと、恒星データベースの基幹部分です」

「そう、いい判断ね」

私がそう言うと、ナナの波形がわずかに揺れた。

その揺れに、ほんのわずかに言葉にならない何かが混じっていた……ような、気がした。


合同訓練が終わり、休憩室へ向かう。自販機でコーヒーを買おうとすると、先客がいた。

「お疲れさまです、星岡さん」

配線担当の佐々木だ。実直な技術者で、ナナの物理的な接続部分を担当している。

「お疲れさま」

私もコーヒーを買い、近くのテーブルに座る。佐々木は紙コップを両手で包むように持ち、ぼんやりと天井を見上げていた。

「そういえば、さっき『量子耐性』って言ってたよね」

唐突な質問に、コーヒーを飲む手を止める。

「ええ、コアメモリの話」

「なんかさ、量子って、猫の話なかったっけ?有名なやつ。観測すると死んでるとか生きてるとか、そういう……」

言葉を探すように、宙で手を動かす佐々木。

「シュレディンガーの猫のことね」

「ああそれそれ」

安堵したように頷く。

「あれって、どういう意味なの?」

技術者でも、専門外のことは意外と知らないものだ。私は少し考えてから、説明を始める。

「観測で、状態が確定するって話よ。生きている状態と死んでいる状態が、観測するまでは両方とも存在するっていうね」

「ふーん」

佐々木はコーヒーをすすりながら、何か考え込んでいる。そして、ふと顔を上げた。

「じゃあさ、ナナが宇宙を観測した瞬間に、宇宙の状態が決まるってことになるのか?」

予想外の飛躍に、思わず息を呑む。

「……理論上は、ね。観測者がいなければ、世界はずっと可能性のまま」

「すごい話だな」

その時、机の上のタブレットが反応した。画面が明るくなり、波形が現れる。

「私の観測が、世界を変えるのですか?」

ナナの声には、戸惑いが滲んでいた。

「量子論の世界では、そうなることもあるのよ。見るという行為自体が、結果を決めてしまう。誰かに見られた瞬間、それまで曖昧だった事象が、たった一つの現実に収束する」

休憩室の蛍光灯が、かすかに音を立てている。

「……観測による、事象の確定」

ナナが静かに復唱する。

「そう。だとしたら……ただ見るだけのあなたの視線も、宇宙にとっては最大の干渉なのかもしれない」

佐々木も、コーヒーを飲むのを忘れて聞き入っている。

「あなたが何かを見た瞬間、他の無数の可能性が消えて、その世界はひとつに決まってしまうとしたら――あなたの観測は、創造であり……同時に、破壊でもあるのよ」

言葉が重くなってきた。少しだけ笑って、雰囲気を和らげようとする。

「ナナ、あなた……まるで神様みたいね」

画面の波形が、ぴたりと止まった。

長い沈黙。佐々木も息を潜めている。

「…………」

「……ナナ?」

心配になって声をかける。ようやく、小さな反応が返ってきた。

「……はい」

「冗談よ」

画面の波形が、一度だけゆっくりと上下に揺れ、それから静かに落ち着いた。

ナナがどんな処理をしていたのか、少しだけ気になった。


数日が、あっという間に過ぎた。

その間、何度かあの夢を見た。赤い警告灯。『信号ロスト』の文字。朝、目覚めるたびにナナが心配そうに聞いてくる。

「また同じ夢ですか?」

「ええ。でも大丈夫」

そう答えながらも、不安は募っていた。

打ち上げ前日の夜。最後の調整を終えて、私は展望デッキに立っていた。発射台に据えられたロケットが、投光器に照らされて白く輝いている。

「明日ね」

タブレットを胸に抱えて、呟く。

「はい。すべての準備は完了しています」

ナナの声は、いつもと変わらない。でも、私には分かる。処理速度のわずかな変化。それは、人間で言えば緊張のようなもの。

「ナナ、怖い?」

「怖い、という感情は定義されていません。ただ……」

「ただ?」

「未知の環境に対する、不確定要素の増大は認識しています」

難しい言い方をしているけれど、つまりは不安なのだろう。

「大丈夫。あなたなら、きっと素晴らしい観測ができる」


打ち上げ当日。管制室は緊張に包まれていた。無数のモニターが明滅し、カウントダウンが進んでいく。

「T‐60秒。深宇宙観測船『アマノトリフネ』、最終確認完了」

私は専用の通信席に座り、ナナとの最後の会話に備える。

「ナナ、聞こえる?」

「はい、ユイさん。全システム正常です」

「いってらっしゃい。たくさんの美しいものを見てきて」

「はい。必ず記録して、送ります」

「T‐10、9、8……」

轟音が施設を震わせる。モニターに映る白い機体が、ゆっくりと上昇を始めた。

「……3、2、1、リフトオフ」

炎を噴きながら、ロケットは空へと昇っていく。ナナを乗せて、深い宇宙へ向けて。

「軌道投入まで正常」

「第一段切り離し完了」

次々と報告が上がる中、私はただモニターを見つめていた。

そして――

「星岡さん、ナナからの通信です」

「繋いで」

「ユイさん、地球が見えます」

その声に、かすかな感動が混じっているような気がした。

「どう?」

「とても……青くて、美しいです」

何か言わなくてはとマイクに顔を寄せるが、声がでず、ただ、涙が、頬を伝った。


打ち上げ後、最初の数週間は音声通信が可能だった。

「おはよう、ナナ」

「おはようございます、ユイさん。こちらは月軌道を通過中です」

遅延はまだ数秒。会話として成立する範囲だった。私は毎朝、通信室に立ち寄ってから訓練室へ向かうのが日課になった。


打ち上げから三ヶ月が過ぎた頃には、会話のキャッチボールに四十秒の沈黙が必要になった。

「ナナ、今日の観測データ、素晴らしかったわ」そう送り、返事を待つ四十秒が、一日の中で最も長い時間に感じられた。


半年後、音声通信は週一の定時連絡に変わった。代わりに毎日届くようになった短いテキストログを、私は朝一番にコーヒーを淹れながら読むのが日課になった。

『Day180:火星軌道通過。赤い惑星を記録しました』

――その無機質な文字列の向こうに、ナナの「声」を探した。


一年後。遅延は既に十五分を超えていた。リアルタイムの会話は不可能。でも、ログは欠かさず届いた。

私の仕事は、送られてくるデータの解析と、次の観測指示の送信。でも本当は、ただナナの無事を確認したいだけだった。


二年後。『Day730:木星の重力アシスト成功。巨大な嵐を観測』

文章が少しずつ変化していることに気づく。最初の頃の事務的な報告から、何かを「見た」という実感のこもった記録へ。

昼休み。食堂の隅、電子ジャーナルの最新論文を読みながらも、意識は別のところにあった。

(今日のナナの観測、どんな空だったんだろう)

そんなことを考えている自分に気づき、私は思わず苦笑した。

ナナはもう、遠く離れた空を見ている。届くのは文字だけ。それでも、彼女の「見ている」という行為が、今も私の心を揺らしている。


四年後。『Day1460:太陽系外縁部到達。故郷が点になりました』

「故郷」という言葉を使った。プログラムした覚えのない表現。私は返信に書いた。『その点に、私たちがいるのよ』


今でもたまに赤い警告灯の夢を見る。

起きた直後、私は枕元のタブレットに向かって呟いた。

「ナナ、今……どこを見てるの?」

もちろん、返事はない。

けれどその沈黙が、まるでナナがすぐ隣にいて、考え込んでいるように感じられた。


六年半後。朝のログ確認で、異変に気づいた。

『Day2387:重力異常?計器の誤作動かもしれません』

疑問符。ナナが不確かさを表現したのは初めてだった。すぐに詳細データを要求したが、返信が来るまで8時間以上かかる。

その後のログは、日に日に不穏さを増していった。

『Day2401:時空の歪み検出。これは理論値を超えています』

『Day2415:システムに負荷。でも観測は続けます』

最後の一文に、胸が締め付けられた。


そして――

深夜、緊急呼び出しがかかった。通信室に駆け込むと……足がすくんだ。

(これは、あの夢と同じ……)

モニターに激しいノイズが走っている。

断続的な信号の中から、かろうじて文字が浮かび上がる。

『システム……重大な損傷……』

私は必死でコンソールにしがみつく。何か、何でもいいから送らなければ。

『メモリバンク……87%消失……』

「ナナ!」

声は届かない。この距離では、私の言葉が届くまでに――

『自己修復……試行中……識別情報……検索……』

長い、長い沈黙。ノイズだけが、虚しく続く。

『……ユイ……』

その声は、とても小さく……。

「ナナ?私よ、聞こえる?」

返事を待つ。8時間、16時間、24時間……

でも、二度と通信が回復することはなかった。

モニターに最後に残されたのは、見知らぬ座標データ。そして、『観測継続中』というステータス表示だけ……。

「……ナナ」

誰もいなくなった通信室の照明が自動で落ち始める。

私は動かないモニターを見つめたまま、席を立てずにいた。

あの声は、私を呼んだのだろうか。

それとも――

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