第一話『夏が終わる時』
自分を観察するには、一度「自分」から離れなければならない。
では、その瞬間に離れたのは――本当に「自分」なのか。
それとも、別の何かなのか。
青空の下、真っ直ぐに伸びた道の先に、巨大な入道雲が浮かんでいる。太陽の白く強い光に景色は溶けて、辺りには蝉の声が響いていた。
夏休みの初日、友人の家へ向かう自転車のペダルがやけに重い。タイヤの空気が抜けていた。じりじりと肌を焼く太陽と終わりの見えないアスファルトに、体力がみるみる奪われていく。
気持ちが折れかけたとき、前方に小さな橋が見えた。
道の脇に自転車を停めて、橋の下の小川へと下る。
川面は太陽の光を反射してキラキラと輝いている。両手で冷たい水をすくい、火照った顔にバシャバシャかける。ひんやりとした感触が肌に染み渡り、ようやく人心地ついた。
ピチャン、ピチャン――
頬を伝う水滴が川面に落ちて、小さな波紋を作る。波紋で歪む自分の顔を見て、少し笑う。まるで子供が描いた似顔絵だ。
ギラッ――
顔の後ろから強烈な光が差し込み、川面が光る。思わず目を閉じた。
「あっつ」
うだるような暑さに声が出る。顔を上げると、太陽が嫌味なほどまぶしく光っている。
でも日傘はささない。負けた気がするから。
ふと、誰かに呼ばれたような気がする。遠くで──いや、すぐ耳元で──声がした。辺りを見回すが誰もいない。風の音だろうか。
(急ぐか)
道に戻り、自転車のハンドルに手をかける。
「ん?」
一つの疑問が頭をよぎる。
(……あいつの名前、何だっけ……)
これから会うはずの友人の名前が思い出せない。太陽の熱に頭をやられたのか。眉間を押さえ、軽く首を振る。
(とにかく、行こう)
クーラーの効いた部屋で冷えた麦茶ぐらいは出してくれるだろう。そんなささやかな期待を抱きながら、再びペダルを踏み始めた。
通り道の傍らに神社がひとつ。木陰の中に佇んでいる。木々の葉は静かに揺れ、世界から切り離された別世界のようだ。
隣接した公園のブランコに、男の子が座っている。家の方が、よほど涼しくて快適だろうに……などと、余計な事を考えてしまう。
(オレもむかし、よく遊んでた……よな)
ここまで来たということは、目的地まであと半分といったところだ。
「麦茶、クーラー」
誰に聞かせるでもなく、欲望が口をついて出てくる。太陽と入道雲が浮かぶ青空に、いつのまにか飛行機雲が線を描いていた。
いつまでも切れることのない一本道が、時間を永遠に感じさせる。
ようやく景色が変わったと思えば、何という事だ。
登り坂である。
(知ってたけど)
「はぁ」
自転車で登るには、傾斜がきつい。自転車を降り、ハンドルに体重を乗せる。汗が背中をつたって流れた。
覚悟を決め、一歩踏み出す。
「ふぅ」
町の片隅の一軒家の前に立ち、呼吸を整える。
ピンポン――
門にあるインターホンを鳴らし、返事を待たずに戸口へと進む。家にあいつしかいないことは分かっている。
ガチャ――
扉が開いて第一声。
「いや、一回インターホン出ちゃったんだけど」
呆れたような友人の顔が目に入る。その瞬間、引っかかっていた記憶が堰を切ったように溢れ出した。
「カズキ!お前の名前はカズキだ!」
叫んでしまった。
「へ?いや、うん、そうだけど……え?何?コワいんだけど」
「いや、何でもない……」
我に返り、恥ずかしくなってごまかす。どうして今まで忘れていたのか、自分でも不思議だ。カズキは戸惑ったような表情を見せたが、僕を家に入れてくれた。
「お邪魔します。あっそうだ、後で空気入れ使わせてくんない?」
「え?自転車の空気抜けてるの?」
「うん、地獄だった」
「うわぁ~」
柱の傷を隠すペンキ。冷蔵庫の欠けたマグネット。踏むと軋む階段の上から三段目。全てが自分の家のように思い出せる。勝手知ったる他人の家だ。つい最近も来たはずなのに、妙に懐かしい。
ギィッ――
「何してんの?早く来なよ」
階段の三段目に差し掛かったカズキが僕を呼ぶ。
「あぁ、うん」
二階へ着くと、カズキの姿が消えていた。もう部屋に入ったのだろうか。ドアに手をかける。ドアノブが、真夏の太陽に熱されたかのように熱を帯びていた。
ガチャ――
扉を開いた瞬間、目の前が白く染まるほどの光に包まれた。
(――ッ!)
蝉の声が響き、強烈な太陽の光が降り注いでいる。目の前には、さっきまで必死で走ってきたはずのアスファルトの道が続いていた。
「え……?」
訳が分からず、立ち尽くす。カズキの家の二階にいたはずが、今は自分の家の前に戻されている。まるでフィルムが巻き戻されたかのように。空を見上げる。これは現実なのだろうか。
「おーい」
少し離れたところから声がする。見ると自転車に乗ったカズキがこちらに向かっていた。
キッ――
ブレーキ音を立て、カズキが玄関先に止まる。
「おはよう。もしかしてボクが来るの、見えてた?」
カズキが少し息を切らしながら言った。
「カズキ、オレさっきまで……」
「ん?」
僕の言葉は蝉の声にかき消され、カズキには届かない。夢でも見ていたのか。それともこれが夢なのか。
「えっと」
こんな訳の分からない話をしたところで、カズキに信じてもらえるだろうか。
――わからない。ただ、口にしたら何かが望まない方向に進んでしまう。そんな予感がした。
「じゃ、行こうか」
「あ、うん」
僕は反射的に返事をする。そうすることが自然だと思ったから。
夏の日差しの中、自転車でカズキの後ろを走っていた。記憶ではタイヤの空気が抜けていたはずだが、出発前の確認ではパンパンになっていた。
カズキは真っ直ぐ前を向き、目的地へ向かっているようだ。僕は時折周囲を見回しながら、後に続く。
「ねぇ、オレたち、どこに行くんだっけ」
カズキは振り返らずに、ひたすらに走り続けている。
「カズキ?聞いてる?カズキ!」
スピードを上げ、横に並ぶ。
「カズキ!」
その声でようやくカズキが止まる。
「ん?何?」
「はぁぁ、頼むよ。オレたちどこに向かってるんだっけ?」
「どこって、図書館でしょ。図書館で自由研究の課題考えようって昨日決めたじゃん」
心臓が、跳ねたような感覚がした。
(昨日……昨日って、カズキの家へ行った時のことを言ってるのか?あれは、夢じゃなかったのか?)
湧き上がる疑問を口にできない。頭の中がぐちゃぐちゃだ。
僕の動揺に気づいていない様子で、カズキは再び進み始めた。
頭の整理が付かず、無言で自転車を走らせる。道に揺れる陽炎に煽られて、視界が定まらない。
「――ちょっと水飲んでいい?」
道の途中、カズキが神社の隣の公園を指して言った。
「うん、オレも飲む」
公園入口の駐輪場に自転車を停める。
水飲み場でカズキが水を飲む間、木陰のベンチで順番を待つことにする。少し休めば頭も冷えてくるだろうか。
木陰から吹く風が、火照った肌を優しく冷やしていく。さっきまでの暑さが嘘のようだ。
「ずっとここにいたい」
「……そうだね」
蛇口を見つめたままカズキは答える。
キィ――
水飲み場の前で、僕は風に揺れるブランコを何とはなしに眺めていた。ここはお気に入りの場所だった。次第に記憶が蘇る。
「乗りたいなら、乗ればいいのに」
カズキの声に我に返る。
「いや、ちょっと見てただけ。もうガキじゃないし」
そう答える僕を見て、カズキは可笑しそうに笑った。
「ははっ、いや、ガキじゃん、全然」
「は?」
本当に乗りたかったわけじゃない。ちょっと懐かしくなって見ていただけだ。
「……いいんだよ。自由なんだ。ここでは」
カズキは、見えない何かを探すようにブランコの影を見つめている。
「どういうことだよ、それ」
「いや、だってさ、それだと、この先乗ることなくなっていくってことじゃん。乗りたい時に乗っておかないと、もったいないよ。誰もいないんだし」
確かに、僕たち二人以外に人がいる気配はない。
「まぁ、そうかもな。でも、いいよ。本当に乗りたかったわけじゃないし」
調子が狂う。これで本当に乗るのも、なかなか恥ずかしいじゃないか。
「そっか」
カズキは少し寂しそうに呟いた。
「なんだよ。自由なんだろ」
「そうだね。自由だ」
キィ――
またブランコが風で揺れた。ここには二人しかいないはずなのに、風に混じって誰かの声が聞こえた気がした。
……そんな気がしただけかもしれないけど。
「行こうか」
一瞬の沈黙の後、カズキが言った。僕は頷き歩き出す。
木陰を出た瞬間、忘れていた夏が一斉に襲いかかってきた。焼けるような光と音と匂い。あぁ、戻ってきたんだ、この世界に――。またこの道を行くのかと思うと正直気が滅入る。
「やっぱ暑いな」
漏れた言葉に、隣を歩いていたカズキが顔を向ける。
「ちょっと、もう少し涼んでく?神社とか、寄ってさ」
カズキは公園に隣接した神社を見ながら言った。
「どうせならおみくじでも引いてみる? あっちのほう、まだ日陰あるし」
「……ありだな」
なんとなく流れで頷いていた。クーラーには敵わないけど、確かに木陰のある神社なら少しはマシかもしれない。
二人で参道を歩く。蝉の声が少し遠くなっていく。木漏れ日が地面に揺れる影を作っている。
「この辺、昔から変わらないよな」
「うん。なんか、懐かしい感じがするね」
言った直後、カズキが立ち止まった。
「あれ、なんか今、声しなかった?」
「声?……いや、してない、と思うけど……怖いこと言うなよ」
カズキは一瞬周囲を見回したあと、軽く肩をすくめた。
「気のせい、かな。なんかさ、誰かが見てるような気がしてさ」
「やめろって。怖いから」
冗談まじりに返しながらも、背中に小さな冷たい感覚が残った。
境内の一角に、小さなおみくじの自販機が置かれていた。僕はそちらへ向かって歩き出す。
おみくじなんて引くのはいつ以来だろうか。思い出せない。
「あ、ちょっと待って」
カズキが僕の腕を軽く引いた。
「参拝、先にしようよ。順番っていうか……ちゃんと、お願い事してからのほうがいい気がする」
「え? ああ、そうか、なるほど。意外と律儀なんだな」
「そう?」
カズキは曖昧に笑った。
本殿の前に立ち、二人で並んで手を合わせる。
木陰に包まれた境内はひんやりとしていて、さっきまでの暑さが嘘のようだった。
――パン、パン。
柏手の音が、木漏れ日に吸い込まれていく。
目を閉じる。
(何を、祈ればいい?)
浮かべる願いが見つからない。ただ、胸のあたりにひっかかる何かを感じていた。
ふいに、風が吹いた。
それまで動かなかった空気が、意思を持ったように流れ出す。背後から吹いた風が、そっと髪をなでて通り過ぎる。
その風の中に、確かに声が混じっていた。
『……もうすぐ……です』
誰かの声を感じた。耳元ではない。風の向こう、どこか遠くで。
はっきり聞こえたわけじゃない。でも、それが「言葉」だったという確信だけが残っていた。
目を開けると、目の前にあったはずの本殿がない。木々の高さも、空の色も、違う。蝉の声がわずかに小さくなっている。
自分の足元を見ると、見覚えのある小さなスニーカー。――子どもの頃によく履いていた、青いスニーカーだ。
「こんにちは」
ふいに後ろから声がした。振り返ると、小さな男の子が立っていた。
「あの、い、いっしょに……あそばない?」
幼いカズキだった。遠くの方に、カズキを見守る両親の姿がぼんやりと見える。
(ああ、そうだ。これは――)
それは、かつての出会いの記憶だった。
そうだ。昔、引っ越す数日前にこの公園に来たことがあった。挨拶回りに付き合わされるのがイヤだったんだ。ここで遊ぶってごねたんだっけ。
夢を見ているみたいだ。遠くの蝉の声が、まるで誰かの記憶をなぞるように響いている。
「来て!」
カズキの声がして、顔を上げる。目の前に立つ彼が、僕の手をぎゅっと掴んで、引っ張った。子供の力なのに、不思議と逆らえない。導かれるように足が動いて、ブランコの方へ向かう。
まだ新しいブランコにカズキが嬉しそうに乗り込むと、勢いよく漕ぎ出した。
「見てて!」
ブランコが空に近づいたと思った次の瞬間、カズキの体がふわりと宙に浮き、前方に跳んだ。
着地は少しバランスを崩したけれど、すぐに振り返って満面の笑みで言った。
「すごいでしょ」
僕は無言で歩み寄り、カズキの足元に足で一本、線を引いた。
「ここね」
顔を上げて、にやりと笑う。
「次、オレの番!」
負けじと、僕も勢いをつけてブランコを漕ぎ始める。ぎこちないが、それでも空に近づいていく感覚があった。
少し怖かったけど、引き下がるわけにはいかない。
ぐん、と漕いだ勢いのまま足を前へ蹴り出す。
その瞬間、体が宙に浮いた――が、体勢を崩す。
世界がひっくり返るように回り出し、恐怖が全身を支配する。
(やばい――!)
目をぎゅっと閉じた。
ドンッ――
後頭部に強い衝撃が走った。
「――っつぅ!」
鈍い痛みに呻き声が漏れた。
足音が近づいてくる。
「だ、大丈夫?!」
カズキの声だ。でも、その声からはさっきまでの幼さが消えていた。
ゆっくりと目を開ける。
視界の上に、空がある。見慣れたアスファルトの一本道。
立ち上がろうと地面に手をつく。その手を見て、一瞬戸惑った。
(あれ?)
さっきまで小さかった自分の手が、元の大きさに戻っている。
すぐそばには、自転車が倒れていた。
自分の自転車を放り出し、カズキが駆け寄ってくる。その顔には、心配とも、焦りともつかない表情が浮かんでいた。
「ケガは?」
思いのほか深刻な顔を向けられて少し焦る。後頭部に手をやるが血の感触はない。立ち上がってみるが、痛みもそこまでひどくない。
「ケガは……してない、と思う」
「そう」
カズキはホッとしたように見えた。でも、顔はどこか不安げだった。
「オレ、今、何して――さっきまで公園に……いや、神社か……?」
そう言ってカズキの方を見るが、カズキは深刻そうな顔で一人何かを呟いている。
混乱が収まらない。
長い夢を見ているのだろうか。記憶がバラバラで、繋がっていない、そんな夢を。
僕は少し黙った後、ぽつりと口を開いた。
「……今から変なこと言うかもしれないけど、いい?」
カズキの眉がわずかに動く。でも、すぐに真剣な顔で頷いた。
「オレ……なんか変じゃないか? いや、オレっていうか、この場所……?」
「……」
「何か、時間も場所もバラバラ……みたいな」
「そう、思う?」
カズキの声は、まるで風に消え入りそうだった。
「あのさ、何か行きたいところとか、ない?」
思いついたようにカズキが聞いてきた。
「え?」
突然の問いに戸惑う。
「やりたいことでもいい。……なんでもいいから」
カズキの目はまっすぐだった。冗談ではなく、本気の目だった。
「……もう、時間がないのかもしれない」
「時間?」
「今のうちかもしれないってことだよ。楽しいこと、思い出して、やっておきたいなって」
カズキの言葉に、心が少しざわめいた。よく知っているはずの夏の日が、まるで一度きりの儚い幻のように思えてくる。
「あるよ。たくさん、ある」
声が、自然と出ていた。分からないことだらけだけど、なんとなくカズキの気持ちだけは伝わってくる。
そんな感じがした。
「ところでさ、オレ達ってどこへ向かうつもりだったんだっけ?」
「図書……」
言いかけたところで、カズキは小さく笑った。
「いや、ここで、この町で遊ぶってこと以外は決めてないよ。だから今から決めよう」
「そっか」
僕は空を見上げる。相変わらず日差しは強く、アスファルトが白く照り返している。
「じゃあ、とりあえず冷たいものでも飲みたいかな。今は」
カズキは笑ってうなずいた。
「そうだね、じゃあ、駄菓子屋でも行く?」
「駄菓子屋?まだあるんだっけ」
「あるよ。覚えてるでしょ?」
カズキが当たり前のような顔をして言ってくる。
「そうだな。そういえばそうだ」
覚えている。鮮明に。
倒れていた自転車を起こし、二人で並んでペダルを漕ぐ。遠くで蝉が鳴いている。風が服の中を通り抜ける感覚が気持ち良い。
(カズキと一緒にいるのは楽しい。それは間違いないのに……)
でも、どこかで、同じ道をぐるぐると回っているような、そんな感覚が抜けなかった。
昔ながらの駄菓子屋にたどり着く。
「あった」
「あるよ。そりゃ」
カズキはなぜか得意げだ。
屋根には色あせた赤いテントが取り付けてあり、軒先には古びたガチャガチャが並んでいる。中に入ると、冷蔵ケースのモーター音がかすかに聞こえてきた。
「いらっしゃい」
店の奥から声がする。
「ボク、これにする」
カズキが手に取ったのは、瓶のラムネだった。ビー玉越しに夏の光が揺れる。
「じゃあオレも」
「おごるよ」
「まじ?ごちそうさまです!」
深々とわざとらしくお辞儀をしてみせた。
それを見て少し笑ったカズキは店の奥へ歩いて行った。
「ラムネ2本ください!」
「はい、200万円」
駄菓子屋特有の局地的な物価高だ。
カズキと店のおばあさんとのやり取りを聞きながらラムネを取り出す。よく冷えていて長く持つと手が痛くなりそうだ。
取り出したラムネを手に、二人で店先の縁台に腰かける。ポンッ、ビー玉を落とし、口をつける。
「冷たっ!」
思わず声が出た。けれど、その感触すら、どこか懐かしく思える。
「あれ、こんな味だったっけ」
「うん。でも、前より甘く感じるね」
カズキが言ったその言葉に、僕はふと胸が詰まる。前がいつのことかは思い出せない。でも、確かに今まで飲んだどのラムネより甘く感じた。
「でさ、この後どうしよっか」
空を見上げたままカズキが聞いてくる。
「うーん、遊ぶといっても……こう暑いと、学校のプールでも使えたらな」
冗談半分で言ってみたつもりだった。
「使えるよ。行こうか」
カズキはすぐにそう言った。
「え、マジで?」
「うん。行こう」
言い切るカズキの横顔が、なぜかやけに頼もしく見えた。
夏の陽がまだ強く照りつける中、僕たちはまた自転車を走らせた。風を切って坂を下り、知っているはずの道をいくつも通り過ぎる。
やがて見慣れた校門が見えてきた。
――あれ、鍵、開いてる。
「先生とかいないのかな」
当直の先生ぐらいはいてもよさそうだが、見当たらない。扉も鍵も、まるで僕たちが来ることを知っていたかのように、すべて開いていた。
人気のない校舎の廊下を抜けて、プールへ向かう。扉の向こうから、わずかに塩素の匂いがした。
ガチャリ。扉を開いた瞬間、鮮やかな水の青が視界を満たした。
水が張ってあった。静かで、穏やかで、空の色を溶かしたようなプールだった。
「ほんとに、使えるんだな」
「でしょ?」
僕は水面を眺めながら、ふと気づく。
「あ」
「ん?どうしたの?」
「水着、持ってない」
ここまで来てなんとも間抜けな話だ。
「そっか」
カズキは一度だけ笑い、そして軽く僕の背中を押した。
「って、うわっ!」
服のまま水に落ちた。
「なにすんだよ!」
「これで、解決でしょ?」
プールサイドのカズキが笑いながら飛び込む。水しぶきが青空に弧を描いた。
二人でばしゃばしゃと水をかけ合っては笑い、誰もいないことを良いことに好き勝手に楽しんだ。
「よし、競争しよう」
唐突に言い出した僕に、カズキは目を輝かせる。
「いいよ。端から端まで、ね」
「ちょっと待って」
シャツを脱ぎ、少し構える。カズキもならって、表情を引き締めた。
「合図よろしく」
カズキの言葉に頷く。
「よーい、ドン!」
水面が跳ねて割れた。腕と脚が水を掻き、耳の中を水が満たす。横を気にしている余裕はない。本気の勝負だ。ただひたすらに前へと前へと水を搔き分けて進んでいく。
ゴール間近、カズキの影が隣に並ぶ。タッチした瞬間、二人とも水から顔を出す。
「オレのほうが速かったよな?」
「いやいや、ボクでしょ。今のは」
「えー、審判欲しいわ。ここ自由なんでしょ? だったらオレの勝ちでよくない?」
「どういう理屈だよ!」
水の中で騒ぎながら、二人で笑った。
やがて遊び疲れ、プールサイドの日陰に腰を下ろす。タオルもないまま、びしょ濡れの服が肌に張り付く。
ごろんと横になると、コンクリートの感触がじわりと背中に伝わってくる。
「すこし、寝るかも……」
「うん」
「……疲れた……」
目を閉じると、風の音と遠くの蝉の声だけが耳に残った。コンクリートの硬い感触が背中から消えていく。
風の音の奥から、また誰かが囁いているような、そんな気がした。
その囁きが合図だったかのように、意識が心地よいまどろみへと沈んでいく。
――音が聞こえる。はじめは遠かった喧騒と太鼓の音が、ぐっと耳元に近づいてくる。まぶたの裏で、赤や黄色の光が明滅するのを感じた。目を開けると、世界は光と音と色の渦に変わっていた。目の前に広がっていたのは、夏祭りの風景だった。
「は?」
あまりの急な変化に言葉が出ない。
さっきまで濡れていたはずの服もすっかり乾いている。
(さすがにこれは、「夢」で決まりだろ)
「はぁ」
何度目かの現象にため息が出る。場所と時間が飛ぶたびに夢の中でまた別の夢を見ている感覚になる。
でも、隣にはカズキがいた。楽しそうに祭りの喧騒に目を向けている。
「もう、わかんないけどさ」
(わかんないけど……、これだけはわかる)
「楽しめってこと、だよな?」
「うん!」
その返事には、少しだけ弾んだ力強さがあった。
屋台が並ぶ道を、人の波の隙間を縫って歩く。すべてが夢の中の光景のようだった。
「ここ、変わってないなあ」
カズキが懐かしそうに屋台を見渡しながら言う。
「たこ焼き、食べたいかも」
「今度はオレが奢るよ」
「そう?じゃあ、遠慮なく」
屋台に並び、鉄板の前まで来る。
たこ焼き器の上でクルクルとテンポよくたこ焼きが回っている。
「すいません、たこ焼き二人前ください」
「あいよ」
(あれ?)
目の前にいるはずの店員の顔が、どうにもはっきりしない。
見ているのに、目が滑る。焦点が合わないというか、何というか──まるで、そこに人のカタチをした空間だけが、ぼやけているような不思議な感覚がした。
「ありがとうございました〜」
手渡されたたこ焼きのパックを受け取りながら、僕はお金を払う。
でもその声の主の顔も、姿も、すぐに記憶からこぼれ落ちていった。
(その他大勢なのはお互い様か)
他人の顔なんて、いちいち注意深く見ることの方が少ない。違和感はあったけど、なぜかそれを深追いしようとは思わなかった。
「わたあめもいく?」
「いや、まずたこ焼き食べ終わってから考えようよ」
「お母さんみたいなこと言うじゃん」
「言うこと聞きなさい!」
笑いながら、ふたりで夜の光の中を歩く。人の波に押され、カズキと少しだけはぐれそうになる。
その時、ふいに背中にぞくりとした感覚が走った。
あれだけやかましかった焼きそばを焼く音や子供のはしゃぎ声が、一瞬だけすうっと遠のき、代わりに静かな風が吹き抜けるような音が耳元をかすめた。
(……今の……)
神社で感じた、あの気配に似ている。
はっとして振り返るが、そこには楽しげな人々の流れがあるだけだ。
「どうしたの?急に立ち止まって」
カズキが不思議そうに僕の顔を覗き込む。
「いや、誰かに、見られてるような気がして」
「へぇ?この人混みで?」
カズキは冗談めかして笑うが、その目は笑っていなかった。まるで何かを知っているかのように、一瞬だけ遠くを見つめていた。
「もうそろそろかな。花火」
カズキが呟いた。
「田んぼの向こうで上がるんだっけ」
「そうだね。特等席覚えてる?」
「特等席?あぁ、あったな。そういえば」
「行こうか」
屋台の灯りがカズキの顔を照らし、期待感が高まっていく。
僕たちは、人混みを避けるように一本脇道に逸れた。
薄暗い農道の先に、田んぼが広がっている。
その向こうには川の土手。さらに歩けば、僕たちだけが知っている高台へとたどり着く。
「こっちで合ってんの?」
「ボクの記憶を信じなよ」
「まぁ、今まで間違えてたことはないかも。そう言えば……」
「でしょ?」
カズキが少し自慢げに言う。
ふたりで足元の石を避けながら、背丈ほどの稲を縫うように進む。
風に揺れる葉の音が心地よく、縁日の喧騒が徐々に遠のいていった。
やがて川沿いの土手に出た。ここまで来れば、あと少し。
高台は、その先の緩やかな丘の上にある。小さな祠がひっそりと建ち、町全体が見下ろせる場所。
草を踏む音だけが、ふたりの間に響く。
「うわ」
登り切った瞬間、カズキが声を漏らした。
町の灯りが、眼下にきらめいている。
遠くの空で、ドンッと音が響いた。そして、夜空に一輪の花が咲く。
――ひゅるるる、ドンッ
次々に打ち上がる花火。赤、青、金、銀。尾を引く光とともに、町を照らし出す。
そのたびに、人の波や屋台の光が、一瞬だけくっきりと浮かび上がる。
僕とカズキは、ふたり並んで腰を下ろした。
風が吹いて、背中の汗を冷やす。
「覚えてる? ここで花火見たの」
「うん。ずっと前」
「ここまでの道は忘れてたみたいだけどね」
意地悪くカズキが言った。
「うるせ」
どのくらい前かも思い出せないぐらいだ。
(覚えてる方がおかしいぐらいだよ)
「ずっと忘れてた。でも……思い出した」
「忘れるのは、仕方ないって思ってたけどさ」
カズキが、空に消えていく火の粉を見上げながら呟いた。
絶え間なく上がる花火を見ながらカズキに問いかける。
「もしさ」
「ん?」
「もし、これが夢だとして、起きたら……この夢が覚めたら、また忘れるのかな……」
自分でも、おかしなことを聞いたと思う。
ただ、
「さぁ、どうだろうね」
そう答えたカズキの声はどこか優しかった。
ひゅるるる、ドン。
音と光の反復に、頭がぼうっとしていく。
しばらくして、最後の花火が夜空に弾けた。大輪の金色が空いっぱいに広がり、音が重く響いた。
しん……
花火が終わった。
耳鳴りのような静けさが降りてくる。
煙が流れ去った後の夜空を見上げていると――
星が、一瞬だけ、おかしな動きをした。
いくつかの星が、まるで水に落とした墨のように、渦を巻いて中心に吸い込まれるような……
「おい、今の見たか?」
カズキに声をかける。
「星が、なんか変な……」
「え?何が?」
カズキは不思議そうに空を見上げる
「いや、今、星が渦を巻いたような……」
もう一度空を見るが、いつも通りの星空が広がっているだけだ。
「気のせいかな」
ふと視線を下ろすと、そこには誰もいなかった。
「え……?」
町並みは変わらずあるのに、人の姿が消えていた。あれだけいた屋台も、灯りも、音も、すべてが跡形もなく消えている。
「なぁ、やっぱりこれ夢……」
戸惑って隣を見ると、カズキは静かにこちらを見ていた。
「あのさ」
僕の声を遮るようにカズキ口を開いた。
「ボクたちが最初に会った時のこと、覚えてる?」
「最初って……ブランコに乗ったやつ?」
「うん。それで、跳んで、勝負して……あの時の勝負、まだ終わってないよね」
「え?いや、まぁ、そうだけど。別に、どうでもいいじゃん。あんなの」
カズキは何も言わず、少しだけ笑って立ち上がる。
「行こう」
それだけ言って、坂道を下り始めた。
一瞬、ほんの一瞬見えたカズキの横顔が、公園の木陰で見せたあの悲しげな顔と重なった。
僕は呆然としながら、でもその背中を追いかける。
何か大切なことが、もう一度始まるような気がして。
夜の町を抜けて、神社の前まで戻ってきた。
ついさっきまで、あんなに賑わっていたはずなのに、誰もいない。蝉の声すら止んでいる。
隣の公園に足早に入っていくカズキの後ろを少し早歩きになってついていく。
公園へ入ると、風が木々をわずかに揺らし、ブランコが軋むような音を立てた。
カズキは何も言わずにブランコの前に立つと、ゆっくりと地面に足で線を引いた。月明かりと街灯に照らされた土の上に、一本の線が走る。
「ほんとに、その位置かよ?よく覚えてんな」
苦笑が漏れる。
あのときより、自分は確実に成長している。脚力も身長も、違う。
(余裕だな)
でもそれでも、胸の奥がほんの少しざわついた。
カズキが線の脇に移動して、振り返らずに言った。
「じゃあ、どうぞ」
「はいはい、ガキの時の記録なんて余裕ですけどね」
僕はブランコに腰を下ろし、ゆっくりと漕ぎ出した。
ギィ、ギィ、という音とともに、空に近づいていく。体が宙を切る感覚。少し怖い。
でも、負けるわけにはいかない。タイミングを見計らって、思い切り足を前に蹴り出す。
――ふわりと、体が宙に浮いた。
暗い空の中で、一瞬だけ世界が止まったような感覚。
そして地面に足をつける。衝撃はそれほどなかった。
カズキの引いた線はわずかに僕の後ろにある。
(意外と危なかったな)
「よし、俺の勝ち……だ」
振り返る。カズキが立っていたはずの場所。
誰もいない。
「……え?」
辺りを見渡す。ブランコの横も、公園のベンチも、神社の境内も。人の気配はなく、風だけが通り過ぎていく。
「カズキ?」
声に反応はない。
急に心臓の音だけが大きく響いている気がした。
(さっきまで、確かにいた)
僕は駆け出す。神社の中を覗き込む。参道、灯籠の影、本殿の脇。
「カズキ!」
返事はない。
町の方へ出てみる。一本道、土手の方、高台へ戻ってみる。
でも、どこにもいない。
「冗談やめろって!」
叫び声が夜の闇に吸い込まれた、その時。
風の中に、誰かの「声」が混じっていた。言葉ではない、けれど確かに僕を呼ぶ気配。
(こっちか?)
足が自然に動いていた。いつからか道が変わっている。地図にないような、小道。
(こんな道あったか?全然覚えてない)
曲がりくねった先に、波音が聞こえる。
そして――道が開けた。
目の前に広がる海。
夜の海は穏やかで、波が静かに打ち寄せている。月明かりが水面に反射して、銀色の帯のようになっている。
その光の帯の先。砂浜に、ひとりの人影が立っていた。
「カズキ!」
叫ぶと、カズキがこちらを振り返る。
その表情には、驚きと、少しだけ、安堵が浮かんでいた。
僕は駆け寄り、息を整えながら、ようやく口を開く。
「なんで、こんなとこに!探したんだぞ!」
カズキは笑わなかった。
そして海を見つめながら、ぽつりと呟いた。
「……ねぇ、気づいてる?」
「何を?」
「ボクたちのこと。この世界のこと……もう、終わるんだよ。この時間は」
「時間って」
「そうなんでしょ?」
カズキは、僕ではなく――「僕の後ろ」に向かってそう言った。
「え?」
不意に、背中に風が吹いた。
僕は、ゆっくりと振り返った。
そこに――少女がいた。白い服を着た少女。
長い髪が風に揺れ、月明かりの中、静かに立っている。光が逆光になって、その顔ははっきりとは見えなかった。
でも、どこか懐かしい気がした。懐かしいというより……知っていたような、そんな感覚。
「君が、オレをここに?」
『はい』
聞き覚えのある声だった。
「もしかして、神社で……」
彼女は、微笑んでいた。
(気のせいじゃなかったんだ)
あの時、神社でお祈りをした時に聞こえた声……。
僕の胸の奥に、何かが触れる。とても静かで、あたたかくて、それでいて、寂しそうな……。
『ずっと見ていました。それが私の役目なので』
「君は」
僕がそう言いかけたとき、後ろから声がした。
「ねぇ」
振り向くと、そこにカズキがいた。
まただ、カズキのこの顔。もう何度目だろう。このまま、すべてが終わってしまうような、そんな顔。
「さっきも言ったけど、もう……」
「なんだよ」
僕は、カズキの言葉を遮るように応えた。その続きを聞きたくなかった。どうしようもない気持ちが溢れそうになる。
「もう、終わるんだ、この時間は」
(イヤだ)
わからない。わかりたくない。
(お前は……お前はそれでいいのかよ)
「楽しかったね」
カズキは今にも泣き出しそうな笑顔で言った。
(なんで、そんな顔してんだよ。そんな顔されたら……)
「……うん、楽しかった」
そう返事をすることしか、僕には出来なかった。
でも、これは「夢」……だろう?
この夢が覚めれば、また元通りの世界に戻るだけだ。
そう思った時だった。
(――元の世界って、何だ?)
思い出せない。僕がいたはずの日常が、何だったのか。
その瞬間、忘れていた記憶の奔流が胸の奥で堰を切った。
抜けたタイヤの重さ。川の水の冷たさ。神社の静けさ。ラムネの甘さ。プールの塩素の匂い。花火の音と火薬の香り。今日一日体験したすべてが、カズキとの思い出であると同時に、他の誰でもない「僕」自身の、失われたはずの夏の記憶だった。
心拍数が上がる。風の音も、波の音も、もう聞こえない。
ただ、心臓の音だけが静かに響いている。
「そうか、オレたち……」
言いかけて、言葉を飲み込む。
違う、認めたくない。
(オレ……僕は……)
思い出す。あの日のこと、あの瞬間のこと。繰り返される夏の音、笑顔、そしてあの言葉。
全部、僕の中にあったんだ。
真実が、喉の奥まで上がってきている。でも、それを口にしたら――
全部、終わってしまう。
「僕は、カズキ……君だったんだな」
言葉にした瞬間、抵抗していた何かが、静かに崩れた。
カズキは、何も言わなかった。
ただ、少しだけ笑った。
ずっと、そばにいてくれたんだ。
ずっと、忘れたくなかったから。
カズキは僕だ。
僕の、僕自身の、記憶のカタチ。かけがえのない夏の思い出。
でももう――この奇跡のような時間も終わりを告げようとしている。
「ありがとう」
口にした言葉は、カズキに言ったのか、それともこの時間をくれた誰かへ宛てたものなのか、自分にもわからない。
でも、きっと届いたと思う。
カズキは一歩、僕に近づいた。その輪郭が、月光を反射してきらめく光の粒へと変わっていく。
「またね」
夏の夜の風に溶けるような、優しい声だった。
僕は頷くことしかできなかった。「ありがとう」ともう一度言いたかったけれど、声にならなかった。
光の粒子が舞い上がり、僕の周りを一度だけ巡って、夜の闇へと静かに消えていった。
『行きましょう』
後ろから、声がした。
先ほどの少女が、僕に手を差し出していた。
「君は、いったい……」
言いながら彼女の手をとる。その手は、温かくも冷たくもなかった。
ただ、確かに、ここにある「終わり」を示すものだった。
『私は……名前はユイ』
ユイの瞳を見た瞬間、僕は不思議な感覚に包まれた。そこには今日という一日だけでなく、過去と未来のすべての夏が溶け合っているような深さがあった。
「……ユイ、僕はこれからどこへ行くの?……少し、コワいな」
『ここまで来られたなら、もう大丈夫です。忘れたくなかったことは、あなたの中に、ちゃんと残りました』
その言葉が静かに僕の中へ入ってくる。
もう、この夏は終わる。終わらせなくちゃいけない。
でも、忘れたくはない。だからきっと、この感触だけは、どこかに残る。
僕は、彼女の手を取った。その瞬間、世界の色が、静かにほどけていった。
――そして。
夏の日差しが照りつける、町の片隅の小さな公園。
遊具の周りに作業員が集まり、トラックの荷台が傾いている。
「これ、いつの時代のだろうな。だいぶ古いっすよ」
「俺がガキの頃からあるからな。もう限界だよ」
二人の男が、手際よくブランコの支柱にロープを巻きつける。
ボルトを外す音が静かに響き、錆びた鉄骨がゆっくりと持ち上がる。
ブランコがあった地面には、草がまばらに生えはじめていた。
やがてトラックが発進し、埃を巻き上げて去っていく。
青空の下、真っ直ぐに伸びた道の先に、巨大な入道雲が浮かんでいる。太陽の白く強い光に景色は溶けて、辺りには蝉の声が響いていた。
ただ、アスファルトを揺らす陽炎を風が優しく消していった。
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