第27話 真水竜決戦・起。炸裂する水魔法と、二つの切り札。

 ーーガシャシャシャシャ!


「稼働全砲塔、展開! 誘導弾! 魔法選択、水! 一斉射!」


 ドガガガガガガガガガガガガガガガッ!


 アレク湖中心の浮島、古代魔導文明の遺構のプール。


 【俺の家】の全方位全砲塔、その全百門あるすべてから誘導つきで放たれた水の弾と。


 バシャシャシャシャ!


 まるで意志を持ったようにーー、いや実際に攻撃の意志を持って立ち昇る数十本もの太い水の柱が衝突、霧散し水飛沫を上げる。


「「我ハ、守護者ナリ! コノ地ヲ侵スモノ、総テ! コノ我ガ排除スル!」」


 その水柱を自らの魔法で操る敵意の持ち主、進化した真水竜が何度目かの定型句を繰り返した。


 ーー初めは進化し、知性を得たのかと思ってたけど、どうやら事態はもう少し複雑なようだ。


 この遺構での真の決戦の幕が開いてから、どれくらいの時間が経ったか。

 戦況はいま、互いの水魔法の撃ち合いで膠着していた。


 復活進化した真水竜の思考パターンは、場所もあってか、先程の湖での俺たちとの初戦から大きく変化していた。

 自身はどっしりと構えて動かずに、遺構プール内に満ちた辺りの水を巧みに特殊な魔法で操り、攻防に使う。


 対する俺が操作する【俺の家】も魔法金属脚を水面下の床に固定してどっしりと構え、ほとんど全砲塔を駆使して水魔法で撃ち合う。


 水魔法を使うのは、辺りの水から魔力を吸収した際に、最も変換効率がいいから。

 そして、最も戦場に影響を与えにくいからだ。


 結果として、戦況は完全に膠着。


 だがこの拮抗状態は、長くは続かないはず。


 徐々に水竜が操る水の量、圧力が──増している。


「「我ハ、守護者ナリ! コノ地ヲ侵スモノ、総テ! コノ我ガ排除スル!」」


 バヂバヂバチッ!


 再びの攻防。


 全百門近くから放たれた水の弾を防ぎきり。


 なおも壊しきれなかった数本の柱が巨大な水の鞭となって叩きつけられ、【俺の家】を覆う全力の魔力障壁がそれを阻み、水飛沫に変える。


 いまなお真水竜は、その力を徐々に徐々に増しつづけていた。


 遺構プールとつながるアレク湖。


 そこから供給される無尽蔵に近い水を、次から次へと自らの魔力で支配下にして。


 ーー俺たちがこの状況を打開する方法は、ただ一つ。


「よし、待たせたわね。準備できたわよ。ヒキール。いつでもいけるわ」


「お待たせしました、ヒキールさま。同じく、準備完了です」


 全百門のうち、あえて真水竜への攻撃に使わなかった、砲塔四門。


 その魔力配分リソースを使い、長い長い時間をかけて編み上げ、時限式で二人に付与された二種の魔法。


 それぞれ二つずつ。


 二人同じく、その背に黒と、足元に白の輝く魔法陣を浮かび上がらせた、この状況を打開する切り札たち。その準備がいま整った。


「よっし! 引き続き正面は俺にまかせろ! だから、頼んだぜ! プリアデ! シルキア!」


「ええ! まかせなさい! もう一度魅せてやるわ! あたしの剣!」


「はい。ヒキールさまに託された使命、必ずや果たしてみせます」


「おう! よっし! 勝つぞ! みんなで!」


 確固たる決意を青と紫の瞳に漲らせる、最高に頼りになる家族(仲間)たちに向けて、


 俺はニッと笑って親指を立ててみせた。


 さあ。見てろよ、真水竜。


 ──ここからが、【俺の家】と俺たち仲間(かぞく)の反撃の時間だ!

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