外に出ると死ぬので、移動要塞【俺の家】に引きこもったまま世界無双します。~戦略級の砲撃で敵を消し炭にした直後、家族になった美少女たちと囲む温かい食卓が最高すぎる~
第18話 最終査定結果・後(英雄の誕生)
第18話 最終査定結果・後(英雄の誕生)
「ヒキール・コーモリック! 都市テファス冒険者ギルドマスター、元A級冒険者〈黄金剛腕〉ゴルドガルド・カッツェの名において!
この度のスタンピードにおける、おまえの査定結果を伝える!」
月夜の下。
身なりを整え、ギルドマスターとしての厳粛な雰囲気を取り戻したゴルドガルドが厳かに告げた。
「メイジー!」
「はぁい! ギルマスぅ! まずは、わたしからご説明しますねぇ。
シルキアさまには先ほどギルドでお伝えしましたが、査定の結果、ヒキールさまが持ち込まれたオークの魔石。計三千とんで二十一個は、すべて本日手に入れたホヤホヤの真品でしたぁ。
ヒキールさまが討伐されたことは、いまの実地査察の結果、他ならぬマスター・ゴルドガルドがお認めになりましたぁ。そこでぇ」
ついに、ようやく俺を認めたのか、"くん"から他のみんなと同じように"さま"呼びになったメイジーはそこで一度溜めてから、バッと両腕を真上に広げた。
「うち二千個の魔石をギルドに売却いただけるということでぇ!
ヒキールさまが得られる売却益は、なんとなんとの六千万G(ガドル)超えですぅ!
もうすっごいとか通り越して、一度に稼いだ額としては意味がわからない、テファスギルドの経営を一時的に間違いなく軽ぅく圧迫する数字ですぅ!
もってけドロボー、ですぅ! あ、いまのは言葉の綾ですよぅ、てへっ!」
ペロリとかわいらしく、小さく舌を出すメイジー。
……あいかわらず、つかみどころがない。
「そしてぇ、その六千万Gはぁ、すべてこのできたてホヤホヤ新品まっさらなギルドカードに振込済みですぅ!
では、こちらのもう一枚とあわせてぇ、どうぞ。ギルドマスター」
メイジーは左に青のカード、右にプリアデと同じ銀のカードを持って、恭しくゴルドガルドに差し出した。
テーブルに置かれた青のカードの方を大きな指で顔の前につまみあげると、ゴルドガルドは深々とため息を吐く。
「まったく。普通じゃねえとは思ってはいたが、まさかの仮登録カードとはな。
こんな貴族のガキ用の記念品持ちでオーク三千体討伐する冒険者なんざ、間違いなく前代未聞、最初で最後だぜ」
──仮登録カード。
俺が今朝、シルキアに【俺の家】があった最寄りの街の冒険者ギルドにお使いを頼んで手に入れたカード。
伝説級のSから駆け出しのFまで七段階ある冒険者ランク、もつけられないその名前のとおりの仮の冒険者登録カードだ。
で、なんでこんなカードをギルドが制度として作ったかというと。
──パパぁ! ボクもあのカッコいい冒険者カードつくりたいぃ! はっはっは。仕方ないなぁ。
といった、一度は英雄冒険者に憧れがちな子どもたち。
その中でも貴族や豪商の子ども向けの記念品で、それなりに値段のする、言わば冒険者ギルドのちょっとした金策の一環であり。
もう一つ。真面目な理由としては、孤児出身だったり、根なし草な冒険者同士の男女の間に生まれた市民登録されていない子どもといった、不安定な立場の人間向けの身分証作成のためといった面もある。
この場合に作られるのは、この高価な金属製の無駄にカッコいい青のカードとは違い、安価な木製のカードだが、同じ仮登録カードであることには違いはない。
共通する特徴として、本人ではなく代理人でも作成可能なこと。
(これが、いよいよ研究が大詰めで【家】から離れられなかった俺がシルキアにお使いを頼んだ理由だ)
そして、この仮登録カードを持った状態で魔物討伐を始めとする何らかの依頼達成をすれば、査定を受け、冒険者への本登録が可能なこと。
──つまり、シルキアにお使いを頼んでまで、俺がわざわざこのカードをつくったのは、しめしたかったからだ。
"冒険者になる"という俺自身の意思を。はっきりと、冒険者ギルドに。
いま、その結果が形となってしめされる。
「そしてこれも、間違いなく前代未聞の最初で最後だ」
厳かに告げたゴルドガルドが摘む二つの指の間、魔法金属製の刻印章が淡く光り。
銀色の魔法金属製のカードに押しつけられると、一際大きな輝きを放った。
「ヒキール・コーモリック! この度のスタンピードにおけるオーク三千体、並びにリーダー個体のオークキングを討伐した第一戦功を挙げた、おまえの偉大なる功績を讃え!
オーク滅絶者、オーク王討伐者の称号を与え! そして、いまこの瞬間より──A級冒険者に、認定する!」
印章が離された銀色の魔法金属製のカードの右上には、燦然と輝く黄金色のAの文字が刻まれていた。
凝視し、震える俺に、ゴルドガルドが続ける。
「B級はあくまで未来の英雄候補だが、A級ともなれば、すでに英雄。ギルドが認め、お墨つきを与えた稀有な人材ということになる。
領主はおろか国でも相応の理由がなければ、そう簡単には手が出せない。俺がテファスに戻ったら、全ギルドに通達してやるよ。
新たな英雄、A級冒険者ヒキール・コーモリックの誕生をな」
そこでゴルドガルドは、ニッと不敵な笑みを浮かべた。
「そして、てめえがもし万が一しでかしたなら、そのときは、俺が直々に行ってぶん殴ってやるよ。
このいまは鈍っちまったメッキの〈黄金剛腕〉を鍛え直して、今度はおまえご自慢の魔導機構のご自慢の障壁ごとぶち抜いてな!」
「へ、へへっ! 残念だったな! ゴルドガルドのオッサン! 俺の【家】だってまだ発展途上だ! まだまだこれからも強化し続ける!
俺の夢、未踏領域へととどかせるために! だから、あんたがどれだけ鍛え直そうが、そう簡単には、ぶち抜けさせねえよ!」
俺は立ち上がり、前へと進む。
ゴルドガルドのオッサンも、その巨躯をテーブルから立ち上げた。
「へっ、なかなか言いやがる。なら、これからも見届けさせてもらうぜ。A級冒険者ヒキール・コーモリック」
「おう! 存分に見てくれよ! 世界を自由に股にかける家族と、俺の活躍を! マスター・ゴルドガルド!」
そして、燦然とAの文字が輝く魔法金属製のカードを受け取り、俺とマスター・ゴルドガルドはがっちりと握手を交わした。
ーー握ったときの、まるで噛み合っていない、大人と子どもみたいな手の大きさの差に。
星空の下。思わずお互いにぷっ、くく、と小さく吹き出した。
しっかりと握られたそのゴツゴツとした大きな手が、
──俺のいままでのすべてを肯定し、祝福してくれているようになぜだか思えた。
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