現代世界にダンジョンが生成されたので世界が壊されるまでに前世の知識を持って世界の救世主となり無双する。

夢織 夏胡(ゆめおり げこ)🎬🧵

フェーズ0

第1話 NNN

人類がに屈したあの日、空が巨大な暗闇に覆われたあの日。俺は何をしていたのだろうか。


​優雅にコーヒーを飲みながら、その光景をただ見守っていたのかもしれない。あるいは、研究者という非戦闘員でありながら、最後まで必死に闇に抗っていたのかもしれない。どちらにせよ、武力を持たない俺一人が、滅びゆく世界を救えるはずはなかった。


​研究資料はもう水の泡になったのか。

​…………近くで、最期を共にするはずだったドクターが、何かを呟いた。その声に、ようやく俺の意識が引き戻された。


​目の前には、鎖に繋がれた青白い巨大な機械。まるで全く異なる世界に通じていそうな、未完成の「追放術式」ゲート。周囲から、研究所の仲間たちの悲痛な声が聞こえてくる。


​「駄目だ!それは使えない!未完成の追放技術だ。たとえ効力があっても、ただの延命にしかならない!」


​そう叫ばれ、機械の稼働は止められた。ただ一人、ドクターの賛成を除いて。

​研究所の地下施設から、最後の生存者たちがゾロゾロと移動を始めた、その時だった。ドクターが、震える声で口を開いた。


​「――稼働しよう」


​「周りの言うようにただの延命でしか無いんだ。これ以上は……」


​「いや、敵にこれを使うのではない。お前に使うんだ。希望的観測だが、コードを書き換えれば、お前だけを、過去に」


〜〜〜〜〜〜


​「過去に戻れるはずなんだ……。か、はは。まったく……まさか成功してしまうとはな」


​身体に馴染まない、白衣ではなく学ランを身にまとう。今年は十七歳の夏。

​窓の外の景色は、至って平和そのものだ。フェーズ12の世界にいたときのような、飛来する虐殺兵器もない。無臭で命を刈り取ってくるガスもない。地下深くなくとも、地面を突き破る異生体の影もない。


「今は西暦2027年。世界が滅ぶまで7年だからざっと、34年?いや、2035年か。」


「また変なモンスターをスケッチしてるじゃん。授業しっかり聞いてたのか?」


ブツブツと独り言を呟いていると、声をかけてきたのは友達のルーカスだ。記憶によれば一生の仲っていう感じ。


「最近こういうミュータント系?ハマっててさ」


「SCP財団ってやつ?そんなの中学生で卒業しろよw」


「それがなぁ!異生体への憧れはそんな簡単に捨てられないんだなぁ!」


今に見てロ。世界が奇々怪々な生物種に埋め尽くされる日がすぐに到来するからナ。

気を取り直して、現状確認。俺の名前は勇利晴彦ゆくり はるひこ(唐突)。身長は172でMBTIはINFP。ちなみにこの時は気にしていなかったが過去を振り返ってみると、高校の俺はインキャ。

そんなのどうでもいいか。

世界にダンジョンが出現、そして発見されるのが4日後の7月10日。納豆の日であると同時に、将来この日はナイトの悲劇と呼ばれる。


ダンジョンっていうのはよくあるモンスターが湧いたりアイテムを手に入れたりする所だ。大雑把に言えば、だが。

詳しく言えばモンスターはカオス・コード、ダンジョンはアノマルネクサスと呼ばれる。

そして、カオスコードも大きく4つに分類されて…。まあ、これは後に話すことになる。


とりあえず今後の方針としてアノマルネクサスが国や特定の組織に発見される前に、俺が制覇しておきたい。なにせ、が貯まると色々厄介だからな。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



高校からの帰り道〜 空は青いし、平和よ平和。

――異生体(カオス・コード)? アノマリー?

トラウマすぎて一切忘れたいわ。

ちなみに今宵、飛行機特別便でガノダ行きを予約後すぐに飛び立つんだ〜♫


そしてガノダのオタリオ州、ナーイアグラフォールズにお邪魔しました。うんうん滝きれい。


7月10日の早朝、観光客が押し寄せる前にナーイアグラ川の水が突如として停止し、轟音と共に巨大な馬蹄型の滝壺全体が深淵な「黒い亀裂」に置き換わる。これが、人類が最初に観測するアノマルネクサスだ。


言わずもがな、ダンジョンは日本規模でない。世界規模に発生する。一番初めのダンジョンが都合良く日本に来るはずもない。後々発生することにはなるが。


飛行機代や3日分の生活費を賄うため、ゲーミングPCを目標に貯めた金を泣く泣く手放して、ここまでやってきた。

ここで第一ダンジョン、『ファーストネクサス』が生成される。


元研究者だから出てくるカオスコード全部言えるよ。エネード、テルバーグ、ソリッド・ワーム、スワンランナー。


わかりやすく言えばスワンランナーがスライム系。テルバーグがフェアリー系だ。少し名称がややっこしく付けられるのは、そのカオスコードの特性が関係している。


俺はキャンプチェアに座り、静かに流れるナーイアグラ川を凝視した。川面は夕陽を反射して金色に輝いている。


さて、現地購入のキャンプセットで3日間を過ごす。観光地から少し離れた森の中、ナーイアグラ川の上流を見下ろす高台に身を潜めた。時刻は七月七日、夕刻。周囲の空気は湿気を帯び、森の匂いが濃い。遠くから微かに聞こえる滝の轟音が鼓膜を震わす。


早く来たのは予想外な速さでダンジョンが湧いた時に対処するためだ。本当に時間がない。もし早く湧いたのであれば速攻でアイテムを拾ってポイント加算を阻止したい。



〜〜〜〜〜〜〜〜



​「本当にハルヒコジュニアは働き者だな。研究所に五十日間も籠もるなんて。いくらなんでも、吐くに決まってるだろ」


​エリアス・ドクターは、白衣の袖をまくり上げ、冷えたブラックコーヒーを差し出した。彼女の色素の薄い青い瞳に焦りが見えるが、どこか口調が穏やかだ。


​「エリアスドクター……。というか、ジュニアって辞めてください。何か見下しているような感じがします。アシスタントで結構です」


​ハルヒコは、目の下の濃い隈を拭いながら苛立たしげに答える。この業界では彼はまだLRの若手だ。


​「はっはっは。本当に外来語というのは難しいな。グローバルといえど国固有の共通認識は俄然残る。ジュニアと言って思い浮かぶのが子供。ドクターと言ったらまず思い浮かぶのが医師だ」


​エリアスはわざとらしく肩をすくめた。彼女の落ち着き払った声が、地下研究所の冷たいコンクリートの壁に響く。この場所だけが、✗✗✗種による侵食から奇跡的に守られている。


​「エリアスドクター、そろそろ仕事に戻っても良いでしょうか?✗✗✗種への対策の暗号シールドの更新が……」


​「なあ、ハルヒコジュニア」


​エリアスはコーヒーを呷ると、シリアスな表情に切り替えた。壁に貼られたぼやけたカナダ・ナイアガラの写真が、彼女の顔に影を落とす。


​「ルーカスの現地調査団が戻ってきたことは知ってるか?」


​「はい……」


​ハルヒコの全身が、瞬間的に冷えた。ルーカス。彼にとって、高校からの親友だった男だ。

「ルーカスもLR研究機関に入った当初は誰よりもアノマルネクサスの撲滅を意気込んでいた。しかし、✗✗✗種の度重なる研究機関の襲撃、いつ来るか誰を装っているか分からない✗✗✗種の変装技術……皆、疲弊したんだ」


​「先日、同期の女性研究員に化けた奴が出ました。首がパッカリ割れて、狂ったように研究材料を叩き壊していた。化けたということは、本体の……つまり、もう彼女はこの世界に居ない人だ」


​ハルヒコの声はかすれていた。あの日、奴が登場して以降、人の心は簡単に折れるようになった。

「ルーカスも現地調査を依頼された時は顔を真っ青にして歯をギリギリしていた。何も言わなかった。何も言えなかった。そして……」


​「『終末のネクサス』で通信が途絶えました。まだ1階層も下ってなかった……」


​「なぁ、今になって国連がフェーズという概念を導入したのは知ってるか?」


​「増え続けるアノマルネクサスの根源のエネルギー。それを数値化したものがカオスポイント。そのカオスポイントの上昇により進化を遂げるカオス・コード。それを段階分けしたものですよね」


​「今はフェーズ10らしい。進化の曲線によれば運よく耐えても残り2フェーズ。もうチェックメイトの状態に近い」


​エリアスが静かに告げた数字は、重い鉛のようにハルヒコの胸にのしかかった。


​「………アノマルネクサスを経済として組み込もうと世界が腹黒い渦を巻き起こしていた、あの頃が、まるで楽園のように懐かしいです」


​あの頃に、誰か一人でもカオスポイントをフェーズ1から一生貯めなければよかったなぁ。カオス・コードを無視して平和に暮らしていれば」


​「無理ですよ、エリアスドクター。人間は世界の滅亡に関係なく、自分の利益を追求する。そして、ポイントを急増させる。というか、何をしなくとも自動的に✗✗✗種の侵食だけで上昇するんです」


​ハルヒコは口を尖らせた。しかし、その表情を見たエリアスはケタケタと笑い出した。手に持っているコーヒーが跳ねてピタピタと血塗れの白衣にかかる。


​「急に悲観的になったなあ、ハルヒコジュニア君。だからジュニアって呼ぶんだよ♫」


​今の状況をも全く気にしていないような眩しい笑顔を浮かべる。

「エリアスドクターこそ能天気すぎますよ!」


​ハルヒコは声を荒げる。彼女の楽天的な態度にイラっときた。


​「あーそれ、外来語でオプティミストっていうんだぜ☆」


​「知識披露うざーです! さっさと仕事に戻ります!」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「あー懐かしい夢を見た」


​俺は全身を包む寝袋から抜け出し、大きく伸びをした。昨夜は、もう二度と戻れないはずの研究所の光景と、エリアス・ドクターを見ていた。


​ついに今日は七月十日!納豆の日!そして、世界が滅亡へと踏み出す最初の一歩の、記念すべき日だこの野郎!


​ナイアガラの森は深い静寂に包まれている。鳥のさえずりが、この後の厄災を全く感じさせない。嵐の前の静けさってやつか?


​俺は現地購入した安っぽいラジオをつけ、流れる元気な声と音楽に合わせて、体をくねくねと動かし、常時戦闘態勢へと切り替える。関節を鳴らし、全身の筋肉を緩める。

いつ、あの轟音が止み、ナーイアグラの滝が黒い亀裂に変わるのか?

​ドキドキした焦燥感と共に待機すること八時間……陽が高く昇り、森の木漏れ日が強くなっても、滝は一向に動かない。


​「どうした、まさか場所が違ったのか?いや、そんなはずは……」


​その時、キャンプチェアの横に置いていたスマホが、地鳴りのように腹立たしい音で震えた。ブーッ、ブーッ!


​ルーカスからだ。

​メッセージを開いた瞬間、俺の全身の血液が冷たくなった。

​送られてきたのは、一枚の画像。そこには、東京・渋谷のスクランブル交差点付近に開いた、直径十メートル近くに及ぶ、黒い深淵な大穴が写っていた。周囲には、まだ何の規制も入らず、混乱した野次馬やパトカーが集まっているのが見える。


​『おいおい、渋谷に大きな穴があいたってよ!』


​添えられたルーカスの軽いメッセージが、まるでフェーズ12の世界の死刑宣告のように重く響く。


​「……間違いない。アノマルネクサスだ」


​俺は画像に写る漆黒の亀裂を凝視し、奥歯を噛み締めた。その衝撃は、頭を鈍器で殴られたような痛みだった。

​歴史……どうして変わっちまったんだよ……!

​まさか、日本に最初のファーストネクサスが誕生するなんて――これは最悪だ。


アイテムとか回収できないし……いやそれより、


​アノマリーの進化過程において、日本というのは、随分と「戦犯」する国なのだ。

某国連機関が国ごとにカオスポイントを貯めたのを数値化した、戦犯国ランキング。その上位「三国」といえば、忠国、日本、そしてブリタニア王国の三つ。

理由は色々あるが説明している暇はない。


​最悪のパターンだ。

​このままでは、世界の滅亡が八年どころか、五年に短縮される可能性すらある。

​俺は即座にキャンプセットを崩し始めた。ナーイアグラにいる時間はもうない。









〜〜〜作者より〜〜〜

適当に更新進めていきます。誤字訂正の指摘おね。

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