第3のテーマ AIと表現

『今回はお便りではなく、連続して起きている事象を重視して、順番を前後させることにしたわ』

「……カクヨムで、AIの小説がランキングトップになったっていうやつ?」

『そうよ。詳細についてはよく知らないけれども、AI小説が人間の限界を超えるのではないかという恐怖が広がっているようね。更に、より事態が進展したこういう話もあったわ』


「AIシンガー」が米チャートを席巻、数億円のレコード契約の事例も(Forbes Japan)

 https://forbesjapan.com/articles/detail/84234?module=toppage_new


「凄いねぇ」

『AIそのものについていずれ触れるつもりでいたけれども、今回は先んじてAI作品について取り上げることにするわ』

「了解~」



『さて、作者は以前、ラノベというものを科挙に喩えたことがあったわ』


 ラノベと科挙の怪しい関係(「リアル中世世界に転生しました」)

 https://kakuyomu.jp/works/16817330649015292102/episodes/16817330668739954540


『奇しくも私の発言だけど、こう言っているのよ』


 科挙というのは、法則に従って、文章を美しく並べれば合格できるものなのよ。合格率はとてつもなく低いけど。一方、ラノベというのも基本的にはテンプレ法則に、文章を美しく並べれば合格できるものだわ



『これが正しいということが改めて証明されたわね』

「尚、この件に対して川野容疑者は『深い考えはなかった。何となくウケるのではないかと思った』と供述しており……」

『(無視)音楽というものも、ある程度規則性があるわ。楽器、音階、強調度合いその他諸々』

「作者は音楽が2だったから、要素をよく分かっていないんだよね」

『美術も2だったわね。保健体育に至っては教師と喧嘩して1を貰ったこともあるわ。と、作者の成績はどうでも良くて、重要なのはパターンの網羅ができるかどうかという要素ね』

「AIというから、何か凄いように聞こえけれど、AIは考えているわけではなく与えられた設定に応じて全部のパターンの中から無理矢理答えを作り出すって感じみたいだからね」


『パターン数の少ないチェスなんかは20世紀の段階で人間が負け、将棋も攻略され、囲碁も負けているわ。それがいよいよ音楽にも波及しはじめていて、小説も攻略されつつある……』

「ということは、今後は音楽も小説も、人間限定コンテストでやってもらわないとダメってことなのかな?」

『うーん、そうとも言えないと思うけどね』

「そうなの?」

『要はパターン数の問題なわけよ。AIがどれだけ発展したとしても、所詮は計算機。無限を攻略することはできないわ』

「無限ではないけれども、暗号なんかは何百桁という素数で守られているからね。機械は膨大な計算力でこれを解きにかかり、人間と違って『あ、これは無理だわ』とすぐに諦めることがないと」


『そして小説とか音楽というものは本来、無限に広がる世界のはずなのよ。売れ線という限定に目を捉われずに、これまでにない形のものを追い求めることはできるはずだわ』

「小説はそうかもしれないけれど、音楽は規則性があるって言ったじゃない?」

『これまでにない音を入れるのよ。例えばバイクの音とか入っていないでしょ? シェーンベルクとモーツァルトの融合のような、人間相手なら「こいつは狂っている」と言われそうな新しいこともAIは真面目に相手してくれるはずよ』

「ちなみに作者は音楽も美術も2だったから、ピカソの絵もシェーンベルクの曲も全く分からないらしいよ」


『……ゆえに、AIは既存の表現をチープにする代わりに、これまででは考えられなかった表現を作り出す可能性があるわけよ。そしてこの領域はAIだけでは決して到達することができないわ。私を除いて』

「しっかり自分を特別扱いするところが千瑛ちゃんらしいね。ただ、新しいものを作ってもすぐ追いつかれないかな?」

『もちろん、一旦出て成功したならば、AIが追いついてきてすぐに捕まることになるでしょう。つまり、一度の成功に安穏とするな、楽をするな、働けということよ。今の世界は莫大な金が一瞬で動くけれど、それを持続させるのは大変なのよ』

「……常に新ジャンルを創造し続けるというわけね。ベルトコンベアの上をひたすら走り続けるみたいな感じなのかな」

『そうなるわね。あとは勝ち残れる者が本当に僅かになる、というのはありそうよ』

「確かに」

『でも、AIが評価してくれるから誰にも相手してもらえないということはないはずよ』

「みんながその事態を望んでいるかは別だけどね」



「そういう点では、作者は割と新ジャンル挑戦が好きだから、もしかしたら新ジャンル開拓大当たりなんてこともあるのかな?」

『残念ながらそれはないわね』

「ないか」

『挑戦する気はあっても、AIの使い方が下手だし、AIが入力する文章を一々読むより自分で書いた方が早いと思うタイプだから』

「時代が移り変わってすぐに負け組になる頑固職人みたいなタイプだね」



 おまけ

『とはいえ、やたらとキャラの多い川野遥の作風はAIも大変でしょうね。エヌビディアの時価総額が7兆ドルになるくらいまでは頑張れるかもしれないわ』

「わざわざ真似する意味もないけどね」

『ちなみに、今回の話はAIが全面的に認められていることを前提に話をしているけれど、音楽業界への侵食などはほぼ確実に裁判沙汰になるだろうから、その行方次第によっても変わるでしょうね。アメリカの動向が決まれば、それに応じて日本やヨーロッパも動くのではないかと思うわ』

「AI関連が株を引っ張っている現状を見ると、あんまりAIに制約かけすぎるのは経済面でまずそうだけど果たしてどうなるか。世界の分岐点になるかもしれないね」

『ま、そのあたりはAIそのものをテーマにするときに話をしたいわね。あれもテーマが分かれ過ぎるから、網羅するなら5回構成くらいになるかもしれないけど』

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