第28話 科挙とラノベの怪しい関係・前編
私の名前は新居千瑛。
この世界と世界の狭間を漂う幽霊よ。
一時期、女神代行をさせられていたけれど、役目を返上して元の気楽な生活に戻ったわ。
"ニャア"
あら、天界のネコね。
何かくわえてやってきたわ。資料のようだけど?
"ニャ"
私に読めと言っているようね。
どれどれ?
「こ、これは!?」
あのダ女神、相変わらず何も考えずに転生をさせているのね……。
これを看過しておくのは危険だわ。
何とかしないといけない。
ただ、さすがにこれは一人ではキツイわ。手伝いが必要ね。
……奥洲天成と鄭和は536年に向かったのね。
となると、選択肢は一つしかないわけね。
「奥洲郁子さん」
「あら、新居千瑛ではありませんこと? どうなさったのかしら?」
「厄介な事態になったわ」
「この天界は、いつもスクランブル体制ですわよ。ホーッホッホッ。しかし、ワタクシは悪女以外には興味がありませんわ」
「悪女ではないけど、中世世界の秩序に関わる事態が進行しているの?」
「ほう?」
「これを見てもらえるかしら?」
「これはダ女神の作成した転生計画書ですわね。ふむふむ、ラノベ作家を目指していた者20名を孔子の弟子にして何がどう変わるか楽しむ。むむむ、いかにも女神がやりそうなどうでも良い話ですわね。しかし、これが何か?」
「……問題は、転生航空機よ」
「転生航空機が何か?」
「機長はマレー〇ア航空を行方不明にした彼よ。副操縦士はジャ△マンウ◆ングスを墜落させていて、フェ□ックス航空を乗っ取ろうとした者が機関士になっているわ」
「それって、転生航空機が落ちるってことですの?」
「もう堕ちたのよ。明の時代に」
「……ワタクシも墜落経験がありますが、あれは嫌なものですわ。しかし、既に死んでいるのだし、転生航空機墜落と最悪の人選をした始末書をダ女神が書けば済むのでは?」
奥洲郁子は事態の深刻さを理解していないようね。
「明代と言えば、科挙よ」
「そうですわね」
「科挙というのは、法則に従って、文章を美しく並べれば合格できるものなのよ。合格率はとてつもなく低いけど」
「実学よりも、形式なところはあると聞いておりますわ」
「一方、ラノベというのも基本的にはテンプレ法則に、文章を美しく並べれば合格できるものだわ」
「あら、両者似通っていますわね」
「そこに20名も流れ着いたというのは大変なことよ。下手をすると、科挙の歴史が変わってしまうかもしれないし、味を占めたラノベ作家志願者が科挙に殺到する可能性があるわ。科挙ジャックに成功した時のうまみはラノベの比ではないのだもの」
「……むむむ、同一世界に大量の転生者が行き過ぎると、歴史のバランスが崩れて天界秩序が崩壊する可能性がありますわね」
「そうなの。あのダ女神、転生先の世界を滅ぼしただけでは飽き足らず、今度は天界自体を危機に陥れているのよ」
「恐ろしい話ですわ」
「さすがにこれは看過できないわ。手伝ってほしいのよ」
「天界と世界を救うとなると、悪女というより聖女の展開ですわね……。気が乗りませんわ……」
「20人逮捕して、一人一人を300年ずつこきつかえば良いのよ。郁子さんのための悪女話を書いてくれるわ」
「やりますわ!」
"その頃の女神"
『大谷君の行き先も決まったし、これからのシーズンはサッカーとNBAとNFLね!』
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