第27話 てっぺんから見つける作戦
「ここから塔に登るんだ」
「ふわぁぁぁ……」
ファランさまとの久しぶりの王宮探索タイム。
今までに行ったことのないところにいこう、となって、ぼくがリクエストしたのは、このへんで一番高いところ!
ぼくの、ひみつの目的を果たすヒントは高いところにある! ……かもしれないなって。
それがこの展望塔だっていうのは、事前の入念な調査により把握済み。
ま、侍女さんに聞いただけだけど。
景色がいいところだ、一度行ってみるのもいいな。とファランさまが快く連れてきてくれたのはよかったけどぉ……。
「すっっっごく、なっがいかいだんん……」
塔の入口の一歩目で、ぼくはさっそく気持ちがしょぼしょぼになっちゃたりぃ……。
「これぇ、なんだんくらいあるんだろぉお……」
上へ上へと続く階段は、果てしなく長く続いている。とても行き着ける気がしない。
これたぶん、てっぺんにつくまでに日が暮れちゃう。いや、きっと二泊三日くらい必要。
「おべんとうとか、なくてへいきですか?」
「おべんとう?」
ファランさまが、レアなきょとん顔で目をパチパチする。ちょっと子どもみたいな感じで新鮮。
「展望塔の上で昼食を、ということか?」
「えへへ、あの――」
あわわ、それはそう! ピクニックかキャンプでもするつもりぃ?ってなるよねぇ。
「上につくまでにぃ、2日か3日くらいかかるかなーって、おもって」
ピクニックとキャンプじゃなくても、あるいみ登山ではあるのでは?
「ははは。3日がかりで登るつもりだったか」
「やまにのぼるつもりで!」
「あははは!」
おお、すごい笑ってるぅぅ。……でも、なんでぇ?
「そなたは、おもしろいことを考えるな。それに肝が座っている」
「ふぇ?」
「2日でも3日でも、登り切るつもりなのか」
「はいぃ」
途中でぇ帰るのもあれだしね?
「あはは、それはいい」
なんかぁ、ほめられたっぽい? ……でも、なんでぇ?
まぁー、ファランさまが楽しそーなのでなんでもいいかー。
「ここは防犯上の理由で、途中までは昇降機もないからな。そなたの足で登るのはあまりに大変だろう」
「ふぇ? そぉぉなんですか?」
「ああ。外から侵入した者が簡単に登れないようにな」
「ふぁぁぁ、なるほどぉぉぉ」
さすが王宮! 防犯意識もばっちし!
「だが、上層部には昇降機があるから、そこまで頑張ればすぐだ」
途中からは、すいーって行けるってことぉ? じゃあ、一泊二日くらいでだいじょぶかなぁ?
でも、やっぱりお弁当は必要かなぁ。あと、おやつも。
「じゃあ、いちどもどってぇ、おべんとうとおやつを――」
「はっはは……そなたは本当におもしろい」
ファランさまは、こらえきれないって感じで笑いながら、ちょっとからだをひねった。
ええー、なにぃ? なんかツボに入ったのぉぉ?
「さぁ」
と思ったら、すっと腕を差し出してくれる。
「ほぇ?」
あくしゅ? いいけどぉ……両手で? なんか変わったあくしゅだねぇ?
「私が抱えていこう」
「ふぁひぇっっ!?」
反射的にちょっと跳び上がった。
「ななな――」
なな、なんてことをおっしゃるぅ!?
王太子様がぁ、ぼくを? 抱えていくぅてぇぇぇ!?
と、とんでもないことをっっ!
「だだだ、ダメですううう!」
アワアワのヒヤヒヤで、すさささーっとあとずさり。
ファランさまの差し出されたお手々を置き去りにするのは……ちょっと、しのびないけども。
「なぜだ。遠慮はいらぬぞ?」
「え、や、だって……そんな――」
王太子様に、そんなこと、させたら、ぼくが、あとで、えらいひと(誰かわからないけど)に、めぇぇっちゃ怒られるでしょ!
激おこのプンプンでおやつ抜き、くらいで済めばいいけど、そんなんじゃないでしょ! へたしたら処される。サクッとお手軽に処されて終了しそう! 身の程知らず不敬罪ってやつ!
こわいぃぃぃぃ……。
「……そうか。私では少々……頼りないかもな」
「そんなじゃありませんっ!」
あ、勢いでぐぐっと前のめってしまった。
「そうか? ならば、さあ」
ほんのりにこっ、なファランさまが腕をどーぞ、してくれる。
「ふぇ、はわ……」
思わず手を伸ばしてしまいそうになっちゃうぅぅ……けど、それはさすがにっ!
「ん? どうした?」
「いえ、あの、えっと……」
はわわわ。断っても受け入れても、まずい感じになりそぉぉぉ……!
どどどど、どうしよぉぉぉ!?
「王太子様、ここは私にお任せを」
「ふえっ?」
後ろからすっとでてきたのは、お部屋の騎士さんだった。部屋から出るときはだいたい着いてきてくれる。
なんでだろ? ころんだら危ないからかな?
「そなたが?」
「はっ。王太子様は塔のご案内などもされるでしょうし、サファさまのことはぜひ私が」
はわわわ。さぁすが、王宮の騎士さん!
殿下より自分のほうが力あるんで!大人だし!とか言わない。殿下にはもっと大事なお役目があるので、こっちは自分にやらせてください、みたいな感じで言うのね。じょうず!
「そうか。そうだな。そなたに任せたほうが安心だろう。では、頼むぞ」
「はっ!」
わははは。ファランさまはファランさまで、さくっと適任者を認めて任せる、冷静な判断。
すごい、大人の会話だ。
……いや、ファランさま確かぁ12才では。
さすが大国の王太子、なんかいろいろすごい。
「では、サファさま。私がお運びしてもよろしいでしょうか?」
いっぽうのぼく。おとなしく運ばれる。以上。
「あ……はいぃ。よろしくねぇ」
でもまぁ、お願いできるならそれでよいのではぁ。
だって、高いとこまで階段登るのって、ちょっとこわいしねぇぇ。
「では、失礼します」
「はぁぁい」
すっと腕を差し込まれで、ぐいっと持ち上げられる。
「おぉぉ、すごい、たかいぃぃ」
「大丈夫でしょうか? サファさま」
「うん。だいじょうぶぅ。あんていかんばっちりぃ」
まるで、専用の乗り物に乗ったみたいな安定感。
ぼく専用機、騎士さん!みたいな。さすが、鍛えてるだけあるねぇぇ。
「では、行こうか」
「はぁーい」
元気にお返事するけど、移動は騎士さん任せだ。ぼくはおとなしくしているのみ。
がしっと抱えられたまま、運搬される。
おおお、揺れもない。すごい。
抜群の安定感を保ったまま、どんどん階段を登っていく。
どんどん登って、どんどん――
……あれ?
な……なんか高くない?
すごい地面遠いんだけどぉぉ。
騎士さんの腕の隙間から、ちらっと階段の下の方を見てみる。
「……っ」
こ、声出そうになった……。
す……スリルがすごい。
高いとこまで階段登るの怖いなぁ、じゃないのよ。高いとこに抱えられて高いとこまで階段登ったら……怖さ倍増なのあたりまえじゃない?
こりずに、また後ろをちらっとのぞき見してしまう。
ひえぇぇぇ……。ダメダメ、もう見ちゃダメ!
「数百段ほど登ったら昇降機だ。サファ、大丈夫か?」
「……っ、はい!」
へ、平気なフリ、平気なフリ。なんでもない感じでお返事。
見ない見ない、こわくないこわくない!
ぎゅぅっと目をとじてればへーきっ! しっかり塔の上から脱出ルートを探さなきゃ。
だいじょぶだいじょうぶ、騎士さんはきっちしっかり安全……だからねっ!
えっ? さっき階段は何百段かあるっていった? え? それって百段の何倍かはあるってことよね? え?
「実は、この階段にはちょっとした仕掛けがあって――」
あぁぁぁ、せっかくファランさまがお話してくれてるのに、ぜんぜんはいってこないぃぃぃ……!
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