八王子城を訪ねて。

秋野 公一

小田原にて

 僕は八王子城に行った。よく見ている動画で城が紹介されており、大学卒業までの暇つぶしとしていってみることにした。

 北条氏康の三男、氏照公が築城し、小田原征伐の際には横地監物を筆頭とし同地にて奮戦した。

 なお八王子城は陥落し、それと前後して小田原城も落城した。北条氏照は兄と共に斬首され、横地は逃げる最中で切腹をしたという。

 私は小田原城が好きで、よく足を運んでいた。

 それもあってか、小高い山中にある八王子城跡は見応えがあった。

 城そのものは現存しておらず、本丸跡と小宮曲輪跡がひっそりと佇んでいた。

 かつての氏照公や横地が見た景色は、こんな感じだったのだろうなと僕は思った。

 その麓には氏照公の館があり、なんとなくの広さを知ることができた。

 近くに流れる河の流れと耳を澄まし、自然豊かな八王子の歴史を肌で感じることができた。

 そして僕は登山する前に、氏照公のお墓に挨拶しなければならなかった。

 かつての領主に挨拶せずに城跡や館の跡地を見る無礼者がいるだろうか。いやいない。

 僕ははじめての八王子ということもあって、氏照公のお墓をすぐ見つけることができなかった。 

 狼狽える僕が視線を少し落とすと、一匹の猫が僕をじっと見つめていた。

 僕は、なんとなく猫の跡をついていくと、その猫は氏照公の墓前まで連れて行ってくれた。

 猫にお礼を行って、氏照公とその家臣の墓に手を合わせた。

 木々の擦れる音と少し遠くに聞こえるバイクの音が心地よく、目を開けると猫はもういなかった。

 僕は、あの猫こそ氏照公なのではないだろうかと思う。

 愚かな領民を見かねて案内してくれたに違いない。

 僕は、北条氏照公の案内に感謝を示すため、この文を綴ることにした。

 関東地域を治め、善政を敷いていた上様に改めてこの場を借りて御礼申し上げたい。

 ご案内、ありがとうございました。

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