第1話  目覚めたら知らない部屋にいました!?


………んん?まだ激痛が襲ってこない。

つまり、私、まだトラックにひかれてない…ってこと?そういうことだよね?

状況から考えるに。

いや、でも、トラック、いくらなんでも、速度遅すぎない?

あの数ミリの距離だと、かかる時間は大体2秒くらいだろう。

だが、もう、1分はたっているように感じる。

え、どういうこと?

あ、そっか。もしや、トラック、なんかの原因で私をひかなくてもすんだのでは?

だから、激痛が身体をはしることもない。そういうことだ。

だって、それ以外に考えられないし、考えられたとしても信じたくない。

例えば、私が即死しちゃって、ここが死後の世界だ、とかいうのはね。

じゃあ、そろそろ、目を開けましょうか。

ずっと横断歩道に座り込んでいたくないし。

というわけで、目を開けると。

高級そうな、天蓋ベッド。

おしゃれな彫刻が施された家具たち。

つるつるに磨き上げられた床。

ふかふかなソファ。

それらがすべてつまった部屋に、私はいた。

「…………え。」

えええええええええええええっ!?

いや、ここどこよ?

あの横断歩道はどこ行った?

状況把握が全くできていない。

だってだよ?

横断歩道でトラックにひかれそうになっていた女子高校生が、目を開けたら、高級そうなセレブの部屋にいたって、ふつうなら、信じられないでしょう?

私なら、まず、信じないね。

瞬間移動できる能力が私にあるんだったら別かもしれないけど。

しかも、これって不法侵入になるのかな?なるんだったら、どうしよう。

と、隅のほうに、洗面台をみつけた。

なんで?

トイレみたいに、別部屋に置いてあるようなものだよな、これって。

今時、こんな隅にこれを置く?とか思いつつ、そこに移動してみる。

すると。

その鏡に、信じられないくらいの美青年が移っていた。


「!?」


うん、落ち着こう。

問題は、この顔が、私のタイプの顔のど真ん中をぶち抜いているってことじゃない。

一番の問題は、この顔が私の顔じゃないってことだ。

ってか、おなかの下あたりに、男性に必ずついているアレのふくらみがありましたね。

どうしよっ!

この体、私の体じゃない!

しかも性別がかわったみたいだ。

やだな~~、結構、私の体、自慢だったのに。

胸とかね。

今は、ぺったんぺったんよ。

って、いやらしい話がしたいんじゃない。

問題は、

まず知らない場所にいるということ。

あと、この体が私の体じゃないってことだ。ちなみに服も変わっている。

うん、まったくもって、信じられない状況だわ。

正直、ものすごくパニックになっている。

軽口をたたいて、何とか自分をおさえつけているけれど。

どうしよう、今にも、不安で発狂しそう。

「大丈夫ですか?急に呼び出したので、驚かれたと思いますが。」

え、私の声じゃない。

じゃあ、今の声はどこから?

そろそろと視線を移動させると、タンスの上にいた、くまのぬいぐるみがこっちに向かって、ウインクしてきた。

…………。

「ぎゃあああああああああ。」

発狂した。

仕方がない。

だって、ぬいぐるみがしゃべるなんてホラーだ。

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