定めない幕間譚2

 レイラが目を覚ますまで、シフキの家でお世話になることになったレイラ一行。


アズラエラとマリーが水汲みに行っている間、

万が一に備えて近衛隊のアラン、イーサン、

ウィルの3人は周囲の地形を見てまわっていた。


「なぁ、イーサン。ウィル。俺は今から大変不敬なことを言う。癇に障ったら聞き流してくれ」

「うむ」

「言ってみろ兄弟」


それを言うのによほどの勇気がいるのか、アランは深呼吸をして間を整えた。


「殿下ってさ……なんか、こう、妹みたいだよな」

「あ〜……然り」

「うむ……然り」


イーサンとウィルも深く頷いた。


「殿下は言わずもがなお美しいが、それ以上にかわいい」

「うむ」

「感情豊かで、歩幅が少し小さくて、何よりお言葉をくださるときに少し見上げられるのがグッとくる」

「うむ」

「やはり我らが幼い頃の殿下を知っているからだろう」

「殿下が5歳の頃から護衛しているからな」


ローガン率いる近衛隊ロイヤルガードは王族を守るためだけに在る精鋭部隊で、王族ならば当然生まれたての赤子から護衛対象となる。


当時入隊したてだった3人は、レイラが5歳の頃に配属されて彼女を守ってきた。


その頃のレイラは王族とはいえ物心がついたばかりの子どもで、公務で忙しい親よりも長く時間を共にする近衛たちとは、まさに兄妹のように接していた。


「知ってるか、ウィル。イーサンはなんと殿下から花冠を賜ったことがあるそうだ」

「なんだと!?それは本当か!」

「……うむ」


寡黙なイーサンが少し頬を赤くしながら肯定する。


それをからかうようにアランとウィルは両側から肘でつついた。


「羨ましいぞ、この果報者め」

「ちゃんと家宝にしているのだろうな?果報だけに」

「うむ」

「だがな、オレだって負けちゃいないぞ。なんとオレは殿下に肩車をしたことがある」

「待て、待ってくれ。肩車は反則だろう!」

「ハッハッハッ!どうだ羨ましかろう!」

「……私は殿下とお風呂に入ったけどな」


突然聞こえた衝撃発言に3人が後ろを振り返ると、水汲みに行っていたはずのマリーが腕を組んで仁王立ちしていた。


「……マリー、お前どこから聞いていた?」

「貴様が不敬にも殿下を妹みたいと宣ったあたりからだ。ええい!私もまぜろ!殿下の麗しエピソードなら私が一番知っているというのに!」


 それから日が暮れるまでレイラの話で盛り上がった近衛たちは、後に夕食の時間に遅れてコッテリ叱られた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る