二章 新たな猟犬

 少し時は遡り、森でレイラたちを逃がしてしまった反乱軍は、その後付近の町に捜索範囲を移していた。


「クソッ!ここもダメか!ヤツら、一体どうやって消えたのだ……」

「部隊を分けて捜索範囲を広げますか?」

「いや、これ以上広げては補給が心許ない。

せめて何か確信を得てからでなければ……

やはり、魔女を雇うしかないのか?」


 簒奪した王都からは既にだいぶ離れている。


これ以上離れて捜索を続ける、しかも部隊を分けて範囲を広げるとなると、補給線が伸びきる上に補給部隊までバラけてしまう。


未だ生き残って抵抗を続けている王権派にそこを狙われる危険を考えると、追手の部隊はまとまって行動せざるを得なかった。


「しかし、コーディアのように間者である可能性がある以上、迂闊に雇うことは出来ぬ……。

ふぅ、少し散歩する。伝令があれば呼びに来い」

「はっ!」


 追手の隊長は思考をまとめるために町を散策した。


人々とすれ違う中で、偶然ひとりの少女に目をとめる。


目元を包帯で覆い、ボロ布をまとった少女。


小皿を手にして、地面に座り込んでいる。


(乞食か。王都から離れているとはいえ、

このような町で少女が物乞いをしなければならないとは、やはりこの国は腐っている)


 追手隊長の足音に気付いたのか、少女は掠れた声を発した。


「アナタ、お悩みですか?銅貨5枚で解決しますよ。ロウジィの占いでお悩み解決、みんなハッピーです」

「占い……?」


そのひと言に足をとめる。


ロウジィを名乗る少女は、たしかに占いと言った。


(乞食の占い師……そうか、コイツなら!)


「おい、ロウジィとやら。占ってくれるのか」

「えぇ。銅貨5枚で、喜んで」


隊長は懐から銀貨5枚を出し、小皿に入れる。


「ほえっ!?あ、あの、この音は銀ですよね?その、多すぎます……」


銅貨と銀貨の間には、現代社会の価値に換算すると二桁以上の開きがある。


予想外の報酬に動揺して返そうとするロウジィに、隊長はそのまま銀貨を握らせる。


「いや、少ないくらいだ。悪いがあまり手持ちが無くてな。値千金の働きにはいずれ改めて報いよう」

「こんな大金……その、ロウジィはいったい何をすれば……?」

「人を探している。占えるか?」

「人探し、ですか……うーん……」


銀貨に舞い上がっていたロウジィは、依頼に対して自信がないのか徐々にうつむきながらブツブツと呟く。


そして、よし、と何かを決意して隊長に向き直った。


「はい、占えると思います」

「そうか。探してもらいたいのはこの国の──」

「あっ、いえいえ。アナタが探しているのなら、占うのはアナタのことなので。

アナタのお名前を教えてください」


レイラの名前を言おうとした隊長に割り込み、ロウジィは隊長の名を尋ねる。


「オレのこと、だと?」

「はい。ロウジィの占いは、辻占いですから」


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