第三話《竜化ドラグ・エスパイア》

シュウウウウウウウウ……。

土煙が徐々に薄れ、竜化したドラグの姿が現れる。黄金に煌めく鋭い眼光がアテナとシャルロッテを見つめている。ドラグが竜化した事を二人に報告する。


ドラグ「竜化完了だよー。」


彼の声は人型の姿の時より重みを増しているが話し方は変わらずである。


アテナ「これが……《竜化》ですの?すごい綺麗なお体……漆黒の体躯に漆黒の翼、とても美しいですわ」

シャルロッテ「ええ、《変化(へんげ)》とも呼ばれてます。でもおかしいです!わずか数十秒で《変化》を完了させるなどあり得ません!私だって、早くて二分はかかります!」

ドラグ「ボクは特異体質みたいなんだ。ボクは三獣生命体ミキシリアって言う種族。君たちも知ってるでしょ?」

アテナ「知っていますわ!この世界では有名ですけど、ものすごい希少種だとか。シャル、貴女もでしょう?」


アテナはドラグに対して目を輝かせながら彼の問いに答えて、シャルロッテにも話を振る。


シャル「そうですね。アテナ様。でも、彼はもっと特別……かも知れません。(まさかターゲットの力がこれ程とは思いませんでした。今のアテナ様に暗殺は……無理ですね。流石に力の差が激し過ぎます)」


シャルロッテはアテナに問いかけに答えつつ、

内心ではアテナには無理だと判断したのだった。


ドラグ「じゃ、早く行こう!日が暮れるよー!竜化は一日三回までなんだ。体力の消費が半端ないんだ。乗って乗って!」

アテナ「えっ!?デメリットもありますの!?」

ドラグ「あるよー。色々とね」

シャル「はい、ありますね。とりあえず乗りましょう。ミキシリアの《変化》のデメリットの説明は入学試験が落ち着いてからにしましょう!それに学園でも習うでしょうし……」

アテナ「それもそうですわね!」

ドラグ「じゃー翼を台の代わりにするよー」


バサァーーー!ドラグは地べたに伏せ漆黒の翼を広げ地面に付ける。


アテナ「翼を踏むのは何か心が痛みますわね……(こんなに綺麗な翼を汚すなんて出来ませんわ)」

ドラグ「ボクは別に気にしないよー?」

シャル「アテナ様、早く乗ってください!(ドラグは何でこんなに優しいんですか!?)」

アテナ「わ、分かりました!では、失礼しますわ。ドラグ様!」


トントントン。ストン!


アテナは少し躊躇いながらドラグの翼を渡り背中に座る。そしてシャルロッテも後を続きアテナの後ろに座った。

トントントン。ストン!


ドラグ「乗ったね!じゃあ行くよー!」


ドラグの確認にアテナとシャルロッテはうんうんと頷く。そして……バサァー!ドラグは翼を広げ、バサバサと羽ばたかせ宙に浮く。


シャル「アテナ様!アテナ様!ドラグはターゲットってお忘れでは無いですか?」

アテナ「忘れてませんわ。ただ、こんなに良い人を殺すだなんて、私には……出来ませんわ」

シャル「ですよね……一般兵士たちを凌駕する程の力を持ち。それに私達に危害を加えないだなんてどう考えてもおかしいですにゃ!」


ドラグに聞かれないように小声で話す二人。

だが?


ドラグ「……(聞こえてるんだよなぁー。竜化すると全ての能力が跳ね上がるから、もちろん聴力も人型の時より上がってるんだよねー)」


そう、彼には聞こえていたのだ。二人の会話は丸聞こえなのだ。


シャル「あのドラグさん!どのくらいで着きますか?」

ドラグ「えーと、真っ直ぐ飛んで行けば一瞬だけど君達を乗せてるからあんまりスピードは出せないねー。時速五十キロから七十前後ってところかな?」

アテナ「それ以上は出せませんの?」

ドラグ「出せても八十くらいだねー。それ以上は君達の負担が大きくなるよー?」

シャル「では、時速八十キロでお願いします!アテナ様もよろしいですか?」

アテナ「構いませんわ。お願いしますわ。ドラグ様!」

ドラグ「おっけー!まかせてー!」


ドラグは二人の要望に応え、速度を上げる!

ギュオオオオオオオオオオン!


アテナ「はっ速いですわぁーーーーー!」

シャル「思った以上に速いですね。自分で出すのと乗ってる状態では感覚が全く違いますにゃ!」

ドラグ「もっと落とした方が良い?」

アテナ「いえ、大丈夫ですわ!」

シャル「私も大丈夫です!」


そうして三人はグランドロスト大森林を空を飛んで突破したのだった。しかし、次に待ち受けているのは入学試験だ。果たして"二人"は合格する事が出来るのか!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る