閑話1.魔法の才能
時間は少々遡り、凛太郎と日々和が
ダンジョンから地上を目指していた頃。
ただでさえ広い上に階層も多いことから、
二人はそれなりに苦戦していた。
モンスターが多いこともそうだが、
特に毒の霧を吐き出して攻撃してくる
コウモリのモンスターには手を焼いた。
一匹一匹の強さは大したこともないのに、
それが複数で同時にやってくるのは
暗殺者である凛太郎には厄介だった。
「
凛太郎の手から放たれた火の弾は
見事にコウモリの一匹を捉えるが、
凛太郎の魔法のレベルでは
その爆発による一掃は難しく、
次から次へ湧いてくるモンスターを
大量撃破することができない。
結局、日々和の援護もない状況では
全てのモンスターを刃で狩り尽くすしかなく、
魔石を回収しながら息を吐いた。
「もっと魔法の実力があればな…。
そういえば、魔法は他にもあったな。」
粗方のモンスターを解体して
休憩している途中、
凛太郎は自分のステータスを思い出した。
指で空を切ってステータス画面を開き、
修得した覚えのない魔法を見る。
魔法名『
それ以外の説明は何もなく、
ただそこにあるだけ。
ダンジョンの中で目が覚めた時に
勝手にステータスに追加されていたのだ。
どのような魔法なのかイメージを
することができなかったので
これまでは忘れていたのだが、
もしこれが強力な魔法なら、
ぜひとも使ってみたい。
「魔法は特にイメージが大事よ。
体の中に流れる魔力をコントロールして
それを魔法として放出するには、
魔力を形にするイメージができないとダメ。」
自称魔法のスペシャリストの日々和の話では、
ただ己の体を使うだけの物理攻撃と違って、
魔法には様々なプロセスや
構築の流れが存在するらしい。
しかもこれが難儀な話のようで、
どれだけステータスの魔力や
魔法攻撃の数字を上げたところで、
イメージができなければ魔法は使えないし
使えたとしても威力や効果に
個人差が生じてしまうらしい。
ステータス云々の前に
『素質』や『イメージ力』があるかどうか。
これが魔法使いになれる者と
そうでない者の基準だという。
そして肝心の凛太郎だが、
「センスなしね。諦めなさい。」
ときっぱり言われてしまった。
多少は訓練すれば伸びるようだが、
生憎そんな時間はなさそうだ。
今はとにかく少しでも早く外へ
出るために進まなくてはならない。
ひとまず魔法を諦めた凛太郎だが、
一匹ずつを確実に倒す今のスタイルでは
そのうち限界がくるだろう。
10や20ならいざ知らず、
1000匹ものモンスターを一匹ずつ倒すなんて
非効率的なことやっていると、
体力が尽きた時に反撃させてしまう。
魔法が使えないのなら、
スキルか武器で広範囲への攻撃を
可能にするしかないが、
武器を買うにも外へ出るしかない。
日々和が他にも武器を持っているので
それらを見せて欲しいと言ったが、
封印を解いてくれた人に渡す物は
職種に応じた武器と装備だけと
心に決めていたらしい。
「頑張るしかないのか…。」
魔法の才能はない。武器もない。
つまり、これまでと同じように
ただひたすらに狩り続けるしかない。
せめて日々和が戦ってくれたなら
少しはマシになるのだろうが、
魔王に目をつけられている彼女は
迂闊に魔法を使う訳にいかない。
自分の才能と魔王を恨めしく思いながら、
凛太郎はエーゼコルドを振るのだった。
だが、広範囲の魔法攻撃ができなくても、
何かしらの工夫はできるだろう。
という当たり前過ぎる発想をした凛太郎は、
今の自分のステータスを改めて確認する。
――――――――――――――――――――
【木瀬凛太郎 Lv.6x 暗殺者】
攻撃 2440 魔法攻撃 1000
防御 1810 魔法防御 1810
敏捷 4200 魔力 1000
魔法 飛び鎌 遠距離への斬撃魔法
道灯り 追尾型の光魔法
糸生成 丈夫な糸を生成する魔法
神速 敏捷を一時的に強化する魔法
スキル 超体術 体術、剣術、投擲術などが強化される
罠看破 罠を見つけ、無効化できる
気配察知 周囲にいる存在の気配を知覚できる
超耐性 デバフや幻術に耐性がつく
影移動 影に潜み、移動できる
ユニークスキル
他者からの認識を阻害し、認知されない。
SP 残り1159
――――――――――――――――――――
相変わらずレベルの表記はおかしいが、
それなりにモンスターを倒したからなのか、
基礎ステータスが少しずつ伸びて
SPも少しだけ増えていた。
「魔法職だったらスキルで
魔力操作とか手に入るんだけどね。
暗殺者じゃそれもできないわ。」
SPで修得できる魔法やスキルの中には、
それぞれの職種専用の物も多い。
例えば回復魔法の上位版である再生魔法は
神官しか修得することができず、
人間以外の生物と会話できる魔法は
テイマーにしか使えない。
魔力操作とはその名前の通り、
自分の中の魔力をより精密に制御したり、
相手から飛んできた魔法に干渉して
効果を弱めることができるなど強力だが、
魔法使いや神官などの魔法職にしか扱えない。
暗殺者でしかない凛太郎では、
たとえ逆立ちをしたところで
修得できるスキルではないのだ。
「お前、魔法とかスキルを作れるんだろう?
これから冒険を共にする仲間への
ささやかな贈り物だと思って、
俺にも使える魔法を作ってくれないか。」
日々和が語った話の中には、
彼女のユニークスキルがあった。
それは自由に魔法やスキルを
創造できるというもので、
異世界から召喚された者は例外なく
彼女からの恩恵を受けている。
そのせいで彼女は魔王から
危険視させるまでに至るのだが、
今もなおそのスキルを使えるのなら、
凛太郎にも扱えるようなお手軽な
魔法を作って欲しいものだ。
「無理ね。魔法とかスキルを下手に使って
魔王に私の存在が気づかれたら
世界が破滅するかもしれないし、
それに魔法を作れるって言っても、
色々と制約があるのよ。」
いかに強力なユニークスキルと言えど、
いつでもどこでも魔法を
作れるという訳ではないらしい。
魔王の嗅覚のことを考えるだけでも
不可能な話だと分かっていたので、
凛太郎はそれ以上追求しなかった。
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