第5話 おじいちゃんをモフモフ!

「zzz。」


 彼女は寝ている。


 夢の中では・・・・・・。


「夢ちゃん!」


「モフちゃん!」


「アハハハハッー! アハハハハッー! アハハハハッー!」


 夢の中で彼女は、笑顔でぬいぐるみと戯れていた。


「今日の新しいお友達は、妖精のティンちゃん!」


「妖精ティンカーベルのティンです。よろしくね。ティンティンしちゃうぞ! ティンッ!」


 注意! ティンカーベルは、パブリックドメインなので、誰でも使えます。


「こちらこそ。よろしく。」


「仲良くしようね。」


 彼女は夢の中で楽しく過ごしている。


「夢ちゃん!」


「モフちゃん!」


「ティンちゃん!」


「アハハハハッー! アハハハハッー! アハハハハッー!」


 夢の中で彼女は、笑顔でぬいぐるみと戯れていた。


ガン! ガン! ガン!


 フライパンを叩く大きな音が夢を壊す。


「夢! 起きなさい! あなたは、いつまで寝てるの!?」


 毎朝、彼女は、お母さんの夢子の雷で目を覚ます。


「ふわ~あ! いいじゃない。寝たって。私、暇なんだから。」


 彼女の名前は、希望夢。19才の無職の引きこもりである。


ピキーン!


「お母さん! 私、お友達が増えたよ!」


「げっ?」


 母親は、まさか!? っと思っている。


「妖精ティンカーベルのティンちゃん!」


 彼女は、妖精のぬいぐるみを笑顔で母親に見せる。


「い、痛い・・・・・・。」


 母は娘の言動にダメージを受ける。


「いいから、起きるのよ! まったく・・・・・・。」


 母は彼女の部屋から去っていく。


「負けるもんか! たくさんお友達を作るんだ! アハッ!」


 彼女の趣味は、手芸。専門は、ぬいぐるみ作りである。


「タッ! タッ! タッ! タアッー!」


 着替えて、顔を洗い、歯を磨く夢ちゃん。朝の準備完了。アハッ!


「おはよう!」


 彼女は、居間にやってきた。


「いいな~。お姉ちゃんは寝てばかりで。」


 夢ちゃんの弟の叶が姉を羨んでいた。


「おはよう。夢にしては早い方だ。」


 夢ちゃんの父、夢男。


「そうね。いつも寝てばかりだものね。」


 母も追い打ちをかける。


グサッ!


「ウッ!?」


 夢ちゃんは家族の心無い言葉にダメージを受ける。


「そんなことはないよ。寝る子は育つっていうからね。夢ちゃんは育っている最中なんだよ。」


 夢ちゃんのおばあちゃんのひばりが、孫をフォローする。


「おばあちゃん! 私に優しい家族は、おばあちゃんだけだよ!」


「大丈夫。おばあちゃんは、いつでも夢ちゃんの味方だよ。」

 

 夢ちゃんに、とても優しいおばあちゃん。


「わしもいるぞ!」


 夢ちゃんのおじいちゃんの裕次郎。


「ありがとう! おじいちゃん!」


 夢は、現実的で厳しい両親ではなく、温かく優しい祖父祖母によって育てられた。


「やめてください! おじいちゃんまで。そうやって甘やかすから、夢が落ちこぼれで、引きこもりで、無職のニートになったんですよ!」


 母、夢子の鋭い指摘。


「ウッ!?」


 夢ちゃんの心にはグサグサと母の言葉が刺さる。


「夢ちゃん! 散歩にいこう!」


「そうだね! おじいちゃん!」


 夢ちゃんはおじいちゃんと家を出ていく。


「あ、逃げた・・・・・・・」


 弟は姉の姿に呆れるのであった。


 外を散歩する愛らしい孫とおじいちゃん。


「いや~。夢ちゃんと一緒に散歩ができるなんて、わしはなんて幸せなんだ。アハッ!」


「私もだよ。もしも、おじいちゃんがいなかったら、今頃、お母さんに小言を言われまくっているんだよ。」


「ワッハッハー!」


 年の差はあるが、おじいちゃんの無償の愛が夢ちゃんを笑顔にする。


ドカーン!


「痛っ!」 


 その時だった。


「おじいちゃん!?」


 道を歩いていた、おじいちゃんが前から歩いてきた男に吹き飛ばされた。


「前を向いて歩け! 笑って楽しそうに歩いているんじゃねえよ! こっちはイライラしているんだ! ケッ!」


 暴言を吐いて、歩いて去ろうとする。


「ひ、酷い!? ちょっと、あな・・・・・・!?」


 食って掛かろうとする夢ちゃんをおじいちゃんが止める。


「や、やめるんだ。わしなら大丈夫。」


「おじいちゃん・・・・・・。」


 気丈にもおじいちゃんは孫に支えられながら立ちあがる。


「確かに前を向いて歩いていなかったわしも悪かったんだ。前を向いて歩いていれば、危険な人間が近づいていたら、避けることができたはずだ。」


 まず年長者らしく、冷静に自己反省。


「それに、ああいうストレスが溜まっている人間は、年寄りや子供だからって、道を避けてくれたりはしない。自分より弱そうな人間を見つけては、当たり散らしていくんだろうよ。」


 正に現代はストレス社会。


「あんな人間と一緒に暮らしている家族は可哀そうだな。」


 最後におじいちゃんは同情した。


「その点、裕次郎は大丈夫だよ! なんてったって、私が側にいるもん!」


 堂々とカワイイ孫をアピールする夢ちゃん。


「ワッハッハー! そうだな。わしには夢ちゃんがいるもんね!」


 おじいちゃんは優しい孫と幸せな余生を送っていた。


「夢ちゃん、コンビニでおやつでも買って帰るか?」


「いいね! 私はアイスがいいよ!」


「ワッハッハー!」


 現実があまり関係ない夢ちゃんとおじいちゃんは仲良しであった。


 そして、その日の夜。


「私の大切なおじいちゃんを吹き飛ばすなんて許せない・・・・・・ふあ~あ・・・・・・zzz。」


 夢ちゃんは、おやすみした。


 夢の世界へ・・・・・・。


「夢ちゃん。」


 誰かが夢ちゃんを呼んでいる。


「夢ちゃん。」


「モフちゃん! おじいちゃんが大変だった!?」


 夢の中で再会する夢ちゃんとモフちゃん。


「夢ちゃん。夢ちゃんのおじいちゃんを助けにいこう!」


「モフちゃん・・・・・・ありがとう。モフちゃんは私の大切なお友達だよ!」


 彼女のぬいぐるみを愛する気持ちが、ぬいぐるみに奇跡を起こしたのである。


「よ~し! いくよ! モフちゃん!」


「おいで! 夢ちゃん!」


 彼女は、ぬいぐるみに搭乗した。


「モフちゃんの中って、暖かくて柔らかい! モフモフ! モフモフ!」


 モフモフして楽しんでいる彼女。


「さあ! 夢ちゃん! 悪者を倒しに行こう!」


「おお~!」


 彼女は、モフちゃんを操つる。


「いた! おじいちゃんを吹き飛ばした悪者!」


 夢ちゃんの夢の中でも、悪者のぬいぐるみを見つける。


「オラオラ! 俺様はイライラしているんだ! 弱い奴を吹き飛ばしてやる! ワッハッハー!」


 いじめっ子は、弱い者いじめしかしない。


「キャア!? 怖い!?」


「大丈夫だよ。何も怖くないよ。ここは夢ちゃんの夢の中なんだ。ニコッ!」


「私の、夢の中?」


 そう、ここは彼女の夢の中。


「そうだよ。夢の中では、夢ちゃんの思い通りだよ。」


「私の思い通り・・・・・・。」


ピキーン!


「モフモフしちゃうぞ!」


「モフッ!」


 ここで彼女に、覚醒スイッチが入る。


「いくよ! モフちゃん!」


「おお! 必殺技をかまそう!」


 彼女はぬいぐるみを加速させ、悪者に突撃する。


「モフモフ・パンチー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 夢の中の悪者を、夢ちゃん搭載のぬいぐるみが殴る。


「ギャアアアアアアー!」


 夢の中の悪者を一撃で倒した。


「ああ~、スッキリした! おじいちゃん! 仇は取ったわよ! アハッ!」


 彼女は夢の中だけでも、おじいちゃんを助けて気持ち良かった。


「やった! やったよ! モフちゃん! ニコッ!」


 彼女の顔に笑顔が戻った。


「おめでとう! 夢ちゃん!」


 夢ちゃんは、少しだけ前向きに、自分のことが好きになれたのかもしれない。


 そして、夢から覚めた・・・・・・。


 次の日。 


「すいませんでした!」


 夢ちゃんがおじいちゃんと散歩をしていると、昨日、おじいちゃんを吹き飛ばした悪者が謝ってきた。


「えっ!?」


(まさか!? また私、モフモフしちゃった!?)


 こうして夢ちゃんの夢が、不条理な現実を少し正します。


「実は、仕事を解雇されてイライラしていたんです。」


「大丈夫。うちの孫も無職だから。ニッ!」


「ズコー!?」


 夢ちゃんはズッコケるしかなかった。


「ニコッ!」


 笑っている彼女の姿を見て、ぬいぐるみが少し笑っているように見えた。


(ありがとう。モフちゃん。)


 夢は見るものではなく、夢は叶えるものだから。


 つづく。


 おまけ。


1話2500字で4話で1万字だった。10分アニメには最適だが、これでは、あまりにも終わらない。ということで、第5話から、1話一人ずつではなく、一度に家族の名前を決め、家族の会話シーンを加えた。それにより、1話3300字と約800字のボリュームアップに成功! これにより完結40話が33話に変更される。これでも小説としては長いので、さらに何かのシーンを追加していかなければいけないだろう。アハッ!


 つづく。

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