19


 それから更に月日は流れ、エイルは105歳となった。

 黒かった髪は真っ白になり、一時期はスヴェイズよりも高く逞しかった体は痩せ衰えすっかり小さくなっていた。食事の量も極端に減り、ベッドの上から降りられないほど衰弱している。



 日の光が射し込む窓際のベッドの上で、エイルは最後の時を迎えようとしていた。その傍らにはスヴェイズの姿があり、彼はエイルと出会った頃と少しも変わらない。


「…………とう、さん」


 しわがれた声でエイルに呼ばれ、スヴェイズはしわくちゃの手を握る。


「なんだい、エイル」


 スヴェイズの声はどこまで穏やかで優しかった。


「……ぼく、ながいき、したよ」


「ああ、そうだね。おれの母さんよりも長く生きた」


 目を細めて笑う息子の頭を父親はゆっくりと撫でる。


「エイル、おれと出会ってくれてありがとう。一緒にいてくれてありがとう。……初めて出会った日、おれを庇ってくれてありがとう」


「ぼくも……さいごまで、とうさんといっしょにいられて……とてもとてもしあわせだったよ。ありがとう、ぼくをずっと、まもってくれて。だいすき、だよ。もう、さみしく、ないよね?」


「……ああ、寂しくはないよ。だから、安心してお休み、エイル」


 エイルはふっと口元を緩めて、まるで眠るかのように息を引き取った。スヴェイズは体を小さくふるわせ、涙を流して息子の頬にキスをする。

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