第6話 夜のだんらんです
マンションに戻って来た後、藤乃さんと一緒にコンビニで買ったお菓子やジュースをリビングで飲み食いし初めたよ。
藤乃さんの住み込み就職の成功を祝って事でね……まさかこんな事になるなんて、数時間前の僕に藤乃さんが家で専属メイドになるよ~!とか言っても、絶対に信じないだろうなあ。
「色々と買ったね。藤乃さんの就職祝いにジュースで乾杯しようか。藤乃さん立ってないで向かいのソファーに座ったら?」
「……刀也様。私は風間家のメイドです。メイドはご主人様の直ぐ側に立ち、
凛として表情で
「へ~! そうなんだ。じゃあ今だけは単なる学校の同級生の藤乃さんって事にしてお祝いしようよ。今日は藤乃さんが主役の就職祝いなんだからさ」
僕はテーブルに置いていたポッキーの入ったお菓子の袋を開けて、藤乃さんの前に差し出した。
「……今だけは刀也様の……いいえ。風間君の同級生……い、頂きます。風間君」
「うん。頂いてよ、藤乃さん」
藤乃さんは恐る恐る僕が差し出した、ポッキーの袋に手を入れて1本手に取った。そして、ハムスターみたいにカリカリ可愛らしく食べ始めたんだ。
「……これは?……美味しいです。凄く凄く美味しいですね。刀也様」
ポッキーを食べ終えた藤乃さんは両頬に両手を乗せて、感動したのか目を輝かせて2つ目のポッキーに手を伸ばしたんだ。
ていか学校モードの藤乃さん口調じゃなくて、メイドモードの藤乃さん口調のままなんだね。この家の中だと。藤乃さんには藤乃さんなりの仕事の流儀でもあるのかな?
「それは良かったね。ソファーに座ってゆっくり食べよう。今日の主役は藤乃さんなんだから楽しんでよ」
「刀也様……はい。ありがとうございます」
ポッキーを食べただけで、こんな可愛らしい笑顔を向けてくれるなんてね。お菓子を買ったかいがあったよ。
「それじゃあ。藤乃さん! 就職祝いおめでとう! 乾杯!」
「は、はい。ありがとうございます……本当にありがとうございます。刀也様。乾杯です」
紙コップにジュースを入れて、僕と藤乃さんはささやかなお祝いの乾杯をした。
◇
「え? 藤乃さんってスマホを持ってないの?」
「はい。今の私の全財産は制服と明日着る為の私服。それとお父様が趣味でお母様に着せていた。私が今着ているメイド服しかありませんでした」
……なんで藤乃さんのお父さんは趣味で、自分の妻にメイド服を着させていたの凄いツッコミたいけど。今は聞く必要はないね。
「あれ? それじゃあ教科書とか、学校で使う物も借金で指し押されちゃったってこと?」
「いいえ。それは後日、刀也様の家に届く予定になっています」
「へ~! そうなんだ。後日家に届く予定なんだ……ん?」
あれ? なんか今の藤乃さんとの会話違和感なかった? なんで家に藤乃さんの学校で使う物が届く予定になってるの?
「藤乃さん。なんで……」
ブルルブルルブルルアイリサ~!ドッチモ!!
テーブルに置いてあった僕のスマホがいきなり鳴り出した。この音は電話の着信だな。
「このタイミングで電話? 誰から……て? ゆずり? なんでこんな夜に」
「……お出にならなくて宜しいのですか?」
藤乃さんはポッキーを大変気に入ったのか。カリカリとポッキーを頬張っているよ。なんだかリスみたいだね。それと冷や汗をかいてなんか焦ってる?
「………落ち着いた時に聞けばいいか」
今は急いで電話に出ないと、明日学校で何て言われるか分からないし。
ピッ!
「はい。もしもし。刀也だけど」
(もしもし? 今、電話して大丈夫だった? 刀也)
「あ、うん。全然大丈夫だよ。ゆずり」
(そうなんだ。良かったそれよりもさっきコンビニで刀也の事を見かけたんだけどさあ~!)
電話越しの向こうから元気な声で喋っているのは、僕の幼稚からの幼馴染みの
「………女性の方ですか? 刀也様を呼び捨てになさるなんて……刀也様あの……その方とはどの様なご関係なのですか?」
ゆずりの声に反応して、なぜか藤乃さんが興味津々で僕の直ぐ隣のソファーに座りながらジーッと僕方を覗き込んで来た。
(女の子声?……刀也。まさかアンタ……女の子を家に連れ込んでるわけ?)
「い、いや。そんなわけないじゃん。僕が女の子を連れ込めるわけないだろう。ゆずり」
ヤバいヤバいヤバい……ゆずりの
これは色々と不味い。このまま藤乃さんが家の中に居るのがバレたら、ゆずりは間違いなく藤乃さんが家の専属メイドになった事を僕の両親に100%バラしちゃうよ。
◇
《風間家 玄関前》
「ふ~ん! そうなんだ。じゃあ今、刀也のマンションの前に居るから会いに行くね。刀也の可愛い幼馴染みのゆずりちゃんがさぁ」
(………はい?)
こうして可愛い幼馴染みのゆずりちゃんによる、僕への尋問が始まろうとしていた。
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