第5話 お賃金ですか?

 藤乃さんに料理を教えながら作ってたら外はもう暗くなっちゃったね。包丁とかで怪我をしなくて最後まで料理を終えられて良かった。


 ……この家にメイドさんとして暮らしていくにしても、藤乃さんが使う日用品を買え揃えないしといけないや。


 明日、学校が終わった放課後にでも雑貨屋に買い出しに行かないと。


「刀也様が作って下さったカレー、凄く凄く美味しいです」


「そう? 冷蔵庫の中にあった余り物を全部入れて作ったごった煮カレーだからね。そんなに美味しいとは思えないけど。それに藤乃さんのお家はお金持ちだった……から美味しい物は食べなれているでしょう?」


「……いえ。家もお母様が家庭料理を作るのに、こだわる方だったので、外食はあまりしなかったんです。質素倹約しっそけんやくが母の趣味でしので、お祝い事以外の普段の生活は刀也様と変わりませんよ」


「へ~、てっきり僕は、藤乃さんは毎日の様に高級お寿司とか、ステーキを食べてるのかと思ってたけど違うんだね。予想と全然違ったよ」


「フフフ。よく言われていましたね。今は一文無しの家なき状態ですが」


 ……いや。笑い事じゃないんだけどね。藤乃さん。


 しかし、あの千歳ちとせ高校のマドンナ。藤乃紫陽花ふじのあじさいと1つ屋根の下で暮らすか。


 学校のクラスメイトかなんかに知られでもしたら、僕の高校生ライフは終わるんじゃないかな?


 藤乃さんは学校では男女隔へだたりなく、困っている人を助けたり、学校行事も積極的に引き受けたりして人気者。


 かたや僕はクラスでもあまり目立たないようにしている教室のモブみたいな存在。そんな藤乃さんと僕が仲良く朝にでも登校した日には………


(風間を捕まえろ! 吊し上げろ!)

(藤乃さんはきっと風間君に弱みを握られているのよ)

(おのれ。我々のマドンナをたぶらかしやがって成敗してやる)


「……ファンの行動怖」


「ファンですか? 台所のファンでしたら、ちゃんと消えていますよ。刀也様」


「そうだね。台所のファンの吸い込み口みたいな場所に連れてかれて、カッティングされちゃうかもね。怖いファンの人達にさ」


「はい……?」


 おっと! いけないいけない。今日は色々な事が怒って頭が変になってるね。ちゃんとしなくちゃ。


 藤乃さんの生活用品の買い出しとか、藤乃さんへのお賃金ちんぎんの支払いの事とかね。


「ううん。なんでもないよ。それよりも藤乃さん。これから家に住むうえで何かりない物はある? もしも足りのならマンション近くのコンビニに買い出しに行ってくるけど」


「足りない物です?……そうですね。鞄の中には私服と制服しか入っていませんでしたので」


「制服と私服だけ? 歯ブラシや化粧品とかもかい? 嘘でしょう?」


「本当です。日用品はほとんど足りていません。お父様の手紙に入っていたお金も、タクシーに乗って移動を続けていたら全部使い果たしてしまったので」


「……それで最後には家の前に倒れていたと? なに自滅してるんだい。藤乃さん」


「お褒めの言葉、恐縮です。刀也様」


「いや。全然褒めてないよ。むしろアホの娘だと思っているよ。藤乃さんを」


「むむむ……酷いです。刀也様」


「そうだね。藤乃さんが全部悪いね。何でお金が無くなるまでタクシーで移動しているのさ。そりゃあお金も直ぐに無くなるよ」


「はい。無一文になって、刀也様にお金を貸して頂きました」


「じゃあ。そのお金で今から下のコンビニに行って、最低限の日用品を買いに行こうか。僕のを使わせるわけにはいかないからね」


いのです?……ありがとうございます。刀也様。やっぱり。刀也様はお優しいお方です」


 藤乃さんが両手を修道女の様にクロスさせて眼をキラキラさせているよ。何祈ったいるのかな?


「あ! それと。藤乃さんがこれから家で住み込みで働いてくれるだったら。お給料を払わないといけないからさ。とりあえず日給でこれくらいで良い?」


「はい?……私が刀也様からお給料を頂けるんですか? そんな住まわせて頂けるだけでもありがたいですのに。お給料まで頂けませ……刀也様。この金額は?」


「あれ? 足りなかった? なら持っと必要かな。分かったよ。藤乃さん」


「えっと……いえ。お給料の金額が……日給が凄い数字でびっくりしました」


 藤乃さんはその後、何でか知らないけど思考が停止していた。何でお給料の金額を見て驚いていたんだろう。



「ありがとうございました……何でメイドさんがこんな所に?!」


 コンビニで買い物を済まして外に出た瞬間。店員の人の驚いた声が外まで聴こえてきたよ。


 うん。そりゃあ驚くよね。コミケでもないのに、メイドさん服を来た女の子が突然現れて買い物してるんだからさ。


「沢山買っちゃいました……すみません。刀也様。いっぱいお金を使わせてしまって。ありがとうございます」


「ううん。全然気にしなくて良いよ。お金も藤乃さんが働いてお金が貯まったら返してくれたらいいからね」


「……刀也様……はい/// 感謝します」



「あれ? あれは……刀也君と知らない女の子と歩いているの……何でメイドさん?」


 

 この時の僕は藤乃さんとの生活の事で頭がいっぱいで、周囲に知り合いが居るかを気にしている余裕なんてなかったんだ。


 そのせいでまさか。幼馴染みの星宮ほしみやゆずりに藤乃さんと一緒に居るところ目撃されるとは思いもしなかったよ。



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